雨音④

娘がはじめて幼稚園に行った日。
わたしは家の中にぽつんと、ひとりになってしまった。
あんなにひとりになりたくて、静けさがほしくてたまらなかったのに
いざひとりになってしまったら、涙がでてきた。
けれどずっと泣いているのは嫌だったし、あんなにひとりになりたくて
イライラしていた時のことを思い出すと、今流している涙がうそっぽく
感じてきて、すぐに泣き止んで家事にとりかかった。
ーーひさしぶり~!--
「……もう来るなって言ったのに…」
食器洗いでぬれた両手をおもいきり振りながら言った。
ーーさっきなんで泣いたの?--
「…なんであんたにいちいち説明しなきゃなんないの?」
ーーちょっとはマシになったかと思ってさ。ーー
タオルでふいた手はがさがさしていた。
「いざひとりになったらさみしくなった。こどもがいる生活って、想像以上にさわがしいのね。静かなのが変に感じる」
ーーすなお!--
「…………。」
ーーあたしが登場…。--
「……は?」
ーーさみしいんでしょ?--
「わたし別にさみしくないけど。だって子どもも産まれたし家族もいるし」
ーーでもさみしくて泣いたんでしょ?--
「それは一時的なものっていうか」
ーーところで今日は何つくってるの?--
「ホットケーキ」
ーー食べたい!--

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