幼馴染の死

私がまだ10代の頃。
もう何年も前の話になる。
私には幼馴染が2人いた。
いつも3人で遊んでた。
夏休みと冬休みには決まってお泊まりをしていた。学校はバラバラだったけど、物心つく頃には月に2回のペースで会っていた。
いつでも3人でいると楽しかった。
幼馴染の1人からこんな言葉を言われたことがある。
「ねぇ、私たち死んでもずっと仲良しだよね?私たち絶対一人にはならないよね?」
真剣な眼差しで聞いてきたその子に私はこう答えた。
「当たり前。𓏸𓏸が死んだら私は生きていけない。ずっと一緒だったのに𓏸𓏸のいない世界なんて私には考えられない。ずっと仲良しだし、𓏸𓏸と離れることはない。」と。

私たちは切っても切れない縁で結ばれてると思っていた。ずっと一緒にいれると思ってた。

そんな中、幼馴染の1人が自殺した。
原因はいじめだった。
2人で参列したお通夜とお葬式はまるで全く別の世界に迷い込んだようだった。
「𓏸𓏸が死んだなんて嘘だよね?」ずっと隣でもう1人の幼馴染が呟いてた。
私より3つ下のその子の心にはどんな風にその景色が映っていたのだろう。
亡くなった子の家族が見てる中、隣にいた幼馴染は棺に向かって「バカ!なんで死ぬの!なんで頼ってくれなかったの!バカ!」って叫んでた。
私は現実と思えないその場所でただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

帰りは2人とも無言で歩いてた。
その時の彼女が何を考えてたのかは何も分からない。

ぽっかり空いた心の穴をうめるかのように2人でずっと電話したり、お泊まりしたり、遊んだりしていた。

そんな日が続いたある日私は入院することになった。精神科で携帯は使用禁止だった。
入院期間は2週間。
ちょうど春休みにかかってしまった。
お泊まりが決まってたのに行けなかった。

退院前に知り合いの方がお見舞いに来てくれた。
「𓏸𓏸ちゃんずっとあなたの話してたよ。会いたいって。寂しいって。話したいこといっぱいあるって。早く退院して会ってあげてね。楽しみにしてるみたいよ?」と教えてくれた。

3日後に退院が出来た私はすぐその子にLINEした。
「お泊まり行けなくてごめんね。会いたかった…」と。

その子からの返事は
「話したいことあるんだけど絶対嫌われるから言えない。でも会おうね!絶対会おうね!大好きだよ!」だった。

話したいことってなんだろう……と考えながらその日は寝て、次の日は学校だったので朝早く起きて準備してた。

その時のことは鮮明に覚えてる。
いきなり電話がきて、「あの…昨日の夕方、𓏸𓏸が亡くなりました。」と言われた。

ちょうど1人の幼馴染が自殺してから半年後だった。「え?え、ちょっとまって、嘘でしょ?ねぇ、冗談でしょ?死ぬなんてない。絶対死んでない。嘘だ!なんでそんな嘘つくの!」私はただそう叫びまくってた。

信じたくなかった。いなくなったことを信じたくなかった。会えないまま終わるのは嫌だった。
友達に支えながら参列したお葬式では気持ちよさそうに眠る彼女の姿があった。
首には傷の跡を隠すためのスカーフが巻かれていた。

彼女のお母さんからは
「来てくれてありがとう。あの子の1番の存在でいてくれてありがとう。あの子ずっと𓏸𓏸ちゃんに会いたがってたのよ。話しかけてあげて?」と言われた。

私は「ひとりにしないで。私をひとりにしないで。どうして一人で行っちゃうの。どうしておいていくのよ。ひとりはいやだよ。ねぇ、ずっとずっと一緒にいるって言ったじゃん。」そう話していた。

彼女のお母さんから渡された手紙には
「𓏸𓏸ごめん。私、生きてる価値ないの。ごめんね。私がこんなこと言える立場じゃないけど、私が死んでもずっと親友でいてくれる?幼馴染とかそんな言葉じゃなく姉妹みたいに思ってもらえる?死んでも嫌いにならないで。私𓏸𓏸と出会えて幸せだったよ。ごめんね。先にあっちの世界で暮らすね。𓏸𓏸が来た時に居心地がいい場所を用意しとくから。ね、でもこれで死ぬのに失敗してたら笑っちゃうよね!もしこのまま生きてたら思いっきり抱きしめてね!そしてずっと一緒に遊んでね!だいすきだよ。死んでも友達。生きてても友達。」と書いてあった。

あれから約10年経つのにまだ心にはぽっかり穴が空いたまま。
新しい友達に出会う度、またいなくなるのではないかと不安になる。

今でも正直会いたくなる。
どうにかしてあの世界にいく方法はないかと探してしまう。

ただ彼女たちに会いたい。2人に会いたくてたまらないのだ。

精神科の主治医は気にかけてくれてる。
多くを口には出してこないけど、何度も命を投げ出しかけてる私をこの世界に繋ぎ止めておこうとしてくれてる。
幼馴染2人の自殺があった過去を話してから一緒に泣いてくれた。辛かったねと抱きしめてくれた。
先生は私の隣を歩いてくれる。無理に背中を押そうともしない。先にどんどん歩いて行ったりもしない。
ただ私が話せるまで見守ってくれる。

命を投げ出そうとする時は叱ってくれる。本気で怒ってくれる。

そんな先生の元で治療して、完治させてしまいたい。乗り越えたい。友達の死を乗り越えていきたい。

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