The Great Battle of students


板橋城、第一広間。

そこに狭山香織は連れてこられた。


先日の戦いで尾上軍に強襲をかけた際、城から出てきた松田に返り討ちにあい、狭山自身も捕まった。

本来なら、強襲をかけた際、すぐさま森に消え、別ルートで堀北と合流する予定だったが、将の存在を意味する旗が見えたことで、功に焦ってしまった。

しかし、あながち悪い選択ではなかったと狭山は思っていた。
理由は松田だった。
あの男の強さ。あれは危険すぎる。もし私が留まっていなかったら、あれが晃一に向かっていたことになる。
それを避けられただけでも十分だった。


私はこれからどうなるのだろう。
拷問?凌辱?
もしかして、すぐに殺される?
まぁでも、何されてもいいわ。
捕まった時点で覚悟はできてるし。

狭山の前に立っているのは4人の人間。

狭山が認識できたのはそのうちの1人。
嫌でも忘れられない、自分を捕らえた男。
松田。

この男、私を殺せる力がありながら、わざわざ捕まえてきた。
利用価値があると思ったのだろうか。
もしくは単なる性欲解消のためにか。

他の3人はわからない。

ショートヘアで160cmくらいの女。
華奢で180cmくらいある男。
そして、飛び抜けて小さく目が大きい女。

まぁよくわかんないけど、私の運命はこの4人にこれから決められる。




口火を切ったのは160cmほどのショートヘアの女だった。

「この人がまっつんが捕まえた女ねぇー、綺麗な人だなぁ」

なんとも緊張感のない声だ。
張りはあるものの、人を真剣にさせる声ではない。

「まっつん、もしかして自分のために捕まえてきたんでしょ!」

この女、松田のことをまっつんと呼んでいる。
それなりの関係にはあるということか。

「いや、違うな。本人の前で言うのもなんだが、個人的な興味はない。趣味ではないな」

いや、ほんとだよ。本人の前で言うんじゃないよ。
松田、お前強いけど性格は終わってんのか?

「この女を連れてきたのは利用価値があると踏んだからだ。尾上の軍を攻めている時点で堀北の軍であることには間違いない。加えて、宏樹から堀北と戦っている最中に女の腹心がいるという報告も受けていた。だから、石松杏果を救い出す時にもしや、と思って捕らえたわけだ」

宏樹、あの時戦った弓隊の隊長か。
そうか、こいつはあの時の。
こいつあんな遠くで弓を打っていながら私の存在に気付いていたのか。

「俺は元から目がいいんだわ。堀北の横にべったりだったから、それなりの立場だって事は予想がついたよ」

「ほぉー、さすが宏樹。お手柄だね!」

「そっちもね。咲良が言ってた御代川君は流石だったよ。咲良が見込んだだけはあった」

「いやぁー、それほどでもぉ」

なんだこいつら。
私達はこんなヘラヘラした奴らに負けたのか。

ようやく一番小さい女が口を開いた。

「おい、松田。本題に入るぞ。この人をどうするつもり?情報を聞き出すの?さっさと解放すんの?」

松田が狭山の方を向いて話出す。

「情報を聞き出す、ねぇ……。あくまで予想だが、あんた、もうすでに意思が固まってるんだろう?だから俺らが今、ここでお前の服を脱がし、男を呼んで好き勝手やらせても何も話さないだろう。拷問とて同じ。何やってもあんたは口を割らないように見える。違うかい?」

私は吐き出すように返す。

「わかってるじゃないか。私を辱めたいなら何人でも男を呼んでこい。相手してやるよ。ただそんなんじゃあ私は吐かないよ。そっちの方向で私を喋らせたいなら日本中の男全員呼んできな。それに痛みで攻めたって同じ。死ぬまで私は喋るつもりはないよ!」

私、こんな事言えたんだ。自分でも驚いた。

すると、咲良という女が口を開いた。

「へぇ!凄い人だね。強そうに見える!でも、実際は強くないんだよねぇ。私たちに負けちゃってるしー。」

「さっちゃん、どうしたの?何かあったの??」

尾上が聞いた。

「いやいや!別にないよ!でもさ、確かに私達はこの人を牢に入れてたけど、この人が実は短剣を隠し持ってるってことを知ってて入れたんだよ。んでさ、もし今の言葉から予想してさ、覚悟が決まってるんならさ、牢で自害しない?生きてても明るい未来はないんだから。それでも生きてるって事はーー。あなた、何か未練があるから死ねないんだよね、そうだよね。そこまでしても生きたい理由があるんだよね。だから、さっきまっつんが言ったことは間違ってると思う。この人、まだ覚悟決まってないよ」

狭山は言葉が出ない。
血の気が引いていた。

「なるほどな。咲良の言うことも一理ある。ここは女性の勘を信じよう。俺も短剣を持っていながら自分で死を選ばなかった事は疑問に思っていた。あれだけの特攻をみせる人間が、今更死を恐れるのかってね。まぁそれと同時に拷問・凌辱に意味はないと思っていたわけだが」

「松田、さっちゃん。いろいろ話してる所悪いけどさ、結局どうするの?」

尾上が核心に迫る質問を。
待って、まだ私の心の準備が。

「そうだな。もったいぶっても仕方ない。狭山香織。お前を明日の午後、解放する。馬を出してやるから1人で帰れ。その代わりに伝えて欲しいことがある。」

え…?
解放しちゃうの?何もせず??いいの??
あぁ…!いかんいかん。
動揺を顔に出すな。平常心だ。
まずは普通に返すんだ。


「なんだ。」


狭山は松田を睨み、聞いた。
気丈に振る舞っている。無理をして。


「ふん、そう睨むなよ。お前に伝えて欲しい相手は冨樫と堀北。そして、その内容は」


「近いうちに猛華を滅ぼす、ということだ」


狭山は目が点になる。

「それを伝えるためだけに私を捕らえたのかい?」

「悪いな。だが、捕らえられたお前には何も文句は言えないだろう。本当だったら情報とか聞き出したかったんだけどな。どうやらお前の利用価値はそれくらいしかないようだ」

「私がちゃんと伝えるという保証でもあるのか」

尾上がそりゃそうだという顔で見ている。

「伝えないのなら、それでいい。お前の胸の内に秘めておけ。それでお前が満足するならな」

「私を利用せず、後悔しても知らんぞ」

「明日の午後まで男の相手、するかい?俺は止めたぞ」

「ふんっ、確かにアンタは強いんだろうな。でも、ウチの晃一の方が強いよ」

「それはそれは、楽しみだね」


なんだこいつは。
捕らえておいて、何もせず伝言を頼むだと。
舐めてるにも程がある。


数秒の沈黙の後、

広間の扉が開いた。

入る時と同じ兵士が私の肩を掴んだ。

狭山が板橋城で松田の顔を見るのはこれが最後になった。


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