向かう席

「国語の長文は全部読み切ってから問題を解くんじゃなくて、傍線が出てきたら、その都度問題文を読んだほうがいいよ」

「んー----。」

「どうしたのよ」

「文章全部読み終わる前に眠くなっちゃう」

「頑張るしかない」

「文字ずっと見てると眠くなっちゃうんだもん」

「本とか読まないか」

「読むわけないじゃん」

「面白いのに」

「登場人物覚えられないもん」

「よくわからないな」

「先生、本読みそうだね」

「1週間に2冊くらいのペースで読んでるよ」

「うへぇ、きもーい」

「なにがだぁ!」

「本の牛じゃん」

「本の虫ね」

「牛も虫もかわらない」

「いや、変わるだろ…、フォルムが全然違うぞ…」

「細かいなぁ。モテないよ」

「牛と虫でモテてたまるか」

「本読む人も真奈、苦手」

「なんで?」

「頭よさそうだから」

「褒めてる?」

「そんなわけないじゃん」

「じゃあ何よ」

「頭いい人って、人のこと見下してそう」

「いやいやいや、そんなことない」

「先生のこと頭いいって言ってないよ」

「うわお、辛辣」

「頭いい人って何考えてるかわからないし」

「真奈ちゃんが推察力をつければいいんじゃない」

「はぁ?」

「その人が何考えてるのかなーって考える力をつければいいんじゃないかな」

「別に知りたくないもん」

「もう…、わけわかんない」

「この人は何でこう思ったのか、とかわかんない」

「お、国語の話ね」

「うん。その人の気持ちとか作者しかわかんないじゃん」

「そうだね。正解は作者しかわかんない」

「じゃあ何で解く必要があるの」

「なんでだろう。問題だから?」

「作者しかわかんないものを問題にしちゃダメじゃん」

「ごもっともです」

「そこを説明してくれないと国語はやりたくない」

「ええええええ。そりゃ難問だな」

「真奈も難問解いてるもん」

「これ中一用」

「うるさぁい。先生が勝手に持ってきたんでしょ」

「でもさ、その人の気持ちを知るヒントは文章中にあるんだよ」

「知ってる」

「じゃあ探せば見つかるはずだ」

「探してるもん」

「見つからない?」

「全部読んでもピンとくるものがない」

「でも、それはさ…」

「普段から本読んでないから、ちゃんと読めてないからとか言うんでしょ」

「んー、まぁね」

「学校の先生と同じこと言わないでよ。真奈だって読もうと思うけど、読めないんだよ。先生たちみたいに本を楽しめる人じゃない」

「うん」

「先生たちのレベルで話されても困る。真奈は真奈だもん。できないものはできないし、無理なものは無理」

「でも、それじゃあ受験は厳しんじゃないの」

「そこは先生なんだからなんとかしてよ」

「丸投げかーい」

「真奈はやりたくありません。私のやる気を引き出して、受験を成功出させてください」

「こりゃ大仕事だね」

「やりがいがあるでしょ」

「それは俺が言うセリフだね。じゃあわかんないものは適当に埋めちゃって」

「上から、ア エ オ ア ア」

「4問正解…。何で読んでないのに当たるんだよ…」

「すごくない!?真奈、やっぱ直感鋭いかも!」

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