The Great Battle of students

富津城。

中川真奈は酒を飲んでいる。

富津を落としてから、それなりに時が過ぎたが、玲穣への大々的な侵攻は行っていない。

命令違反になるからだ。

松田からの言葉。

たった一言。

「足並みを揃えろ。」

これだけで中川と寺仲には十分だった。

松田達が板橋城へ進軍する事は聞いていた。

そしてそこに玲穣の主力が来ることも。

板橋城で玲穣の主力を倒し、それに呼応するように我らが北上する。

松田達はおそらく猛華の奴らに足止めを喰らうだろうが、私達を止めるには智鶴で前線を張っている強軍を連れ戻さねばならないだろう。

もし、そうなった場合、上律の玲穣攻略は不可能となるが、それを黙って見てるほど智鶴は馬鹿じゃない。

ここぞとばかり玲穣の領地を刈り取りに来るはずだ。

「今回の一連の戦いは、猛華を餌にした玲穣の徹底的な弱体化を目的とする。」

松田は談合でそう言っていた。

奴は猛華の侵攻に玲穣が一枚噛んでる事と読み、尾上と鈴山、そして猛華をも利用して、玲穣を標的にした。

上律が後手に回っていると思われていたが、実は違う。

途中から全て松田の手の平で各国の将が踊っていただけに過ぎない。

私達は横並びの将。

外国語学部はそう決められている。

だが、やはり松田は違う。

アイツは平凡そうに見えて、何もかも見透かしている。

味方の私から見ても本当に恐ろしい男だ。

そして、アイツしかいない。

この六大学の均衡をぶち壊すことができるのは。


寺仲が来た。

コイツは槍使い。松田にも一太刀お見舞いできる(かも)の実力。そして現場での頭もキレる。臨機応変タイプだ。

身長は170cmほど。性格は柔和。物腰が低く、誰にもまずは下手に出る。私はその性格をあまり好んではないが。

「真奈〜、また深酒かい。」

私にはもう下手に出ない。れっきとした同級生として接してくる。同じ同級生の尾上には下手に出るくせに。

「いや、もうやめるよ。明日が本番。板橋城の3日目だからね。」

「まぁ、そうか。明日で決まるもんな。で、どう思う。俺たちは勝てると思うかい。」

「勝てる勝てないじゃないよ。私達は。例え、松田達が玲穣の領地を刈り取ってもそこは陸の孤島。猛華と玲穣に挟まれてすぐ奪い返される。そして私達も一緒。私達がどんだけ占領を広げても陸繋ぎで援護がないとやっぱり厳しい。私達は撤退ありきで戦ってる。そういう意味ではすでに負け戦だよね。」

「だが、智鶴が出てきたらその考え方も変わるわけだ。智鶴は現在、上律が手を出せる位置にはない。猛華と玲穣を通らないといけないからな。だから、俺たちが優先すべきは猛華と玲穣。そのうちの1つ、玲穣の領地を智鶴が奪い取り、なおかつ上律が今回の戦で玲穣の軍を散々に敗れば、徹底的な弱体化が図れる。上律は領土を奪う事は出来ないものの、将来的な攻略の優位性を確保できるわけだ。無論、智鶴に力をつけさせてしまうわけだけど。」

「そうだね。まぁでも智鶴のことは松田もわかってる。放っておいたりはしないでしょ。」

「でー、明日の目標は?どこまで攻め入るよ。」

「あまり深く入りすぎると私達が戻れなくなる。派手な戦いをして敵の注視を向けられるだけでいい。」

「なるほどー、つまり二手に分かれると。」

「お前、松田みたいな読みをするな。当たってるけど。」

「ハハハッ、まぁ明日も頑張ろう。明日頑張ったら久しぶりにみんなで集まって酒でも飲もうか。」

「いいね、それを目標にして頑張ろうかな。」


寺仲はじゃあな、と言い残すと寝床に入った。

明日は早い。こちらも早朝から進軍し、派手にやる。

早く寝て、力を疲れを溜めない事が先決。

寝ますかね。私も。



中川も寺仲の隣の部屋にある寝床に入った。

彼女、ウェーブのかかった赤い長い髪を持ち、切長の目、高い鼻と、特徴的な外見をしている。
身長も170cmほど、寺仲とあまり変わらず。
何よりスタイルが良く、胸も側から見ても目立つほど。
そして、戦闘スタイルは過激そのもの。
彼女も頭は冴える。しかし、策はあまり使わない。
双剣を使う彼女があまりにも強すぎるため、策が必要ない事がほとんどなのだ。現に寺仲も中川に一騎討ちで勝てたことはない。
松田が絶大な信頼を置く、この女将軍。
中川真奈こそ、松田瑞貴に次ぐ、上律大学第二将の大将軍であった。



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