The Great Battle of students


「んんんんーーー!」

激戦の翌日、石松杏果は12時間の睡眠の末、目覚めた。

現在、午前11時。
部屋に日が差している。


「いててっ……」

手、肩、足、全てが痛い。

連日の激戦による筋緊張。
それが昨日の松田との邂逅によって解かれ、痛みが一気に襲ってきた。
昨日、ぶっ倒れたのはそれと同時に気を失ったから。
松田君に担がれたらしい。


「はぁ……。もう最悪」

最高のタイミングで出会ったのに、何にもいえなかった。
しかもよりにもよって、彼の前で白目剥いて倒れ、持たれたのだ。
こんな事ならダイエットしとけばよかった。
でも、彼は私のどこを持ったのだろう。
え、やだ。
もしかしてお腹じゃないよね?


石松はため息をつきながらボチボチと身支度を始める。

今日、12時半から会議があるからだ。

一応、私は負傷者として参加自由となっているが、松田君も来るというし、何よりお礼も言えてないから、行く。
雅弓にも鈴山君にもみんなにも。
言わなきゃいけない事をまだ言えてないから。


さて、そんなこんなで準備完了。

って言っても、多少のお化粧と軽い昼食。
必要なものはないって言ってたし、こんなもんでいいでしょう。
なんやかんやで11時45分。

さぁ行きますか。


場所は第一広間。
入ると、この会議の前に捕虜の処遇について話し合っていた、松田・小田・白石、そして雅弓が座っていた。

私は三つの長机がある中、雅弓の隣に素早く移動し、その場で声を張り上げた。

「松田君、助けてくれてありがとう。おかげで命拾いしました!」
「咲良ちゃん、白石君、来てくれてありがとう。来てくれなかったら私達はやられてた!」
「最後に雅弓。最後、遅れてごめんなさい。足を引っ張ってごめんなさい。助けて、なんて言ってごめんなさい!」

言い切った。
怒涛の三連単。
私の魂の叫びよ。

顔は赤面状態。
頭を下げたまま、上げる事ができない。
恥ずかしすぎる。

すると、私の横からすすり声が聞こえてきた。

「きょぉーかぁぁ!私こそごめんなさぁい!私が前に出過ぎたからぁぁあ!きょぉーかが狙われたのぉ!本当に周りが見えなくてぇ!ごめんねぇぇぇ!!」

声の主は尾上雅弓。
可愛い顔が台無しってくらい泣いている。
声はとっても可愛い。


「可愛いなぁ!2人とも!ほんと、無事で何よりだよ!」

小田咲良が声を上げる。
ニヤニヤしながら私と雅弓を見つめている。
こちらも顔面のレベルが高い。
敵わない。
一方、白石君は腕を組んだまま、目を瞑ってる。
相変わらずくーるびゅーてぃ。

「きょーかぁ、体は大丈夫??痛くない??」

「うん、大丈夫だよ」

「うあぁぁーん、よかったぁぁぁあ!」

声大きいな。相変わらず。
泣きすぎて何言ってるかわかんないし。
でも。
またこの声が聞けて良かった。


ガタッ。

小田と白石に挟まれて座る男が座り直した音。
そして、声が聞こえてきた。

「石松。よくあの攻撃の中、生きていた。さすがは尾上の副長だけはあるよ」


……………。

松田君。
松田君が私に向けて話してる。

推しが私に。
あぁ……。

本当は色々と話したいのに。
謝りたいのに。

言葉が出ない。
目の前にいるだけで尊いんだもん。


「あ、いや……。ありがとうごさいます。。。」

「俺とあんたは同級生だぞ。敬語はやめろ」


いやぁぁぁぁぁぁあ!
ついに石松やり遂げました!
会話です。
会話を遂行完了致しました!

しかも、タメ口認定も頂きました!
これはあれですよ!
あれがそれでこれなんですよ!

頭が爆発しそうです!
テポドン!

「どうしたの?きょーか。顔がひきつってるよ?」


あぁ!いかんいかん!
雅弓にこの恍惚顔がバレる所だった。
それだけはいかんのだ。

「ううん、大丈夫。ちょっと顔の筋肉が動いただけ。」

「えぇ……、きょーか。。意味がわからないよ……」

「いや、つまりその……。」


ギィッ……。


私が釈明の言葉を並べようとしたその時、扉が開いた。


立っていたのは2人の男性。

鈴山君と御代川君。

2人に私たちの視線は集中する。

2人とも同じ洋服を着てる。
横並びに立ってるから兄弟みたい。
顔は全然似てないけど。


にしても、鈴山君の顔。
心ここに在らずって感じがする。

やっぱり、3日目の事、彼なりに思う所があるんだ。


「この度はご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

鈴山君が扉の前で頭を下げた。
御代川君もそれに続く。
彼らはしばらく頭を上げなかった。


そして、それに応えたのは雅弓だった。

「ううん、気にする事ないよ。本当に厳しい戦いだったもん。思う部分があって動いたんなら仕方ないよ。それに結果は勝ったんだし、今は……」

「おい。そこまでにしておけ。尾上。鈴山、御代川。お前らも早く席につけ。お前らの話は後だ。いいな」

うぁ……。
さっき私と話した時とは全然違う声……。
低くて感情がない。
雅弓の声もそりゃあかき消されちゃうよなぁ…。


「よし。とりあえず全員揃ったな。では始めようか」


時間は12時5分でした。





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