The Great Battle of students

南門の前に2人は集う。


「これより我々は南門を攻める。狙うは鈴山。ただ1人。
討ち取った後は速やかに城門から立ち去るよう。」

堀北に冨樫は言った。


「はい。わかりました。それで、作戦は?」


「作戦というほどでもない。ただ黒い甲冑の兵士を狙う。それが鈴山の私兵だ。そいつらがいなくなれば、軍の統率は自ずと失われる。」

「わかりました。では、そのように。」

「南門を制した後のことは後々考える。そも鈴山を消すだけで充分な戦果。無理に戦い続けることもないからな。」

「お任せします。」


堀北が離れようとしたその時だった。
1人の兵が馬を走らせ駆け寄ってくる。
我が軍の兵ではない。
なぜ我が軍の包囲の中をかいくぐり、ここまで来れたのか。
その理由は、当の兵士が話す伝言にあった。


「冨樫さんですね。玲穣、菊池軍の者です。伝令を申し上げたく。」


息が上がっている。

「言え。」

冨樫はその兵を見ず応えた。


「ありがとうございます。我が菊池軍ですが、現在、板橋城に向けて進軍中。明日には到着いたします。それまではくれぐれも善戦されたし。そして……、菊池の方から、勝手な行動で申し訳ない、と。」


冨樫の目は城に向いたまま動かない。
ただ俺にはわかる。明らかに戸惑っている。


「承知した。進軍には気をつけろ、と伝えろ。」

「はい、ありがとうございます。では、これで。」




「冨樫さん、菊池とは確か昔からの馴染みでしたね。」


「あぁ、あいつに話をしたのが間違っていた。まさか、こんなにも情が働いているとはな。少なくとも、これで我々はかつての敵対大学と手を組んだことが明るみに出る。勝たなければ、非難の目に晒されるだろうな。」

「えぇ、間違いなく。」


「すまないな、俺が菊池に話したばかりに。」


「ほんとですよ。」


「作戦を変更しよう。今日、南門を叩いた後、明日以降は玲穣と共にさらに総攻撃をかける。もはや隠す必要もない。徹底的にやってやろう。」


「やけくそ、ですね。」


「なんとでも言え。」



「敵は玲穣を見て、動きを変えるでしょうか。」


「さあな。少なくとも、城から打って出る事はしないだろう。自殺行為になり得る。それに我々が唯一恐れていた敵の援軍も玲穣の到来によって相殺できる。敵に今のところ、戦局を変えうる決定打はない。」


「我々の損害も相対的に減りますね。」


「玲穣の援軍は体裁的にはよろしくないが、戦局を見るならばこの上ないわけだ。」








「そろそろいきますか。」

「あぁ、そうだな。やろうか。」

「ご武運を。」

「お前もな。」


進撃の銅鑼が鳴り響く。








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