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AIがクリエイターを食い殺すかもしれない件について。


 今に始まった事ではないが、相変わらずAIの進化が凄まじい。新聞を読む中で週に2,3回はAIに関する記事を目にするが、近い将来、AIはクリエイティブの分野も手中に収めるのではないだろうかと考えることがある。「杞憂だ」「AIに仕事を奪われることはない」「AIにクリエイティブはマネできない」等の声もあり、筆者はそのような意見を否定する立場ではない。しかし、最近、AIの創造性に対して、少し危機感を感じる体験をした。それは、先日何となくApp Storeで「Uni Dream」という生成AIアプリをダウンロード、そして使用した事にある。

 Uni Dreamは、どうやら個人の韓国出身デベロッパーによりリリースされているようで(ネットの情報のためあまり信憑性は低い)、テキストや画像からイラストを生成できるアプリだ。そして、このアプリを使用した筆者は、高レベルなグラッフィックに驚いてしまった。(諸事情あって掲載はしないが)iPhoneで撮影した自撮り画像並びに上半身のみの写真をアプリに読み込み、それをベースに「アニメ調のイラスト」をAIに生成してもらった。それが以下である。


【A】


【B】

 結論から言うと、「一見すれば」もうプロのそれと大差ないレベルだと思う。もしこれらがインスタ、Twitter、pixivに投稿されてても違和感を感じる人は少ないはずだ。どちらとも寒色及び暖色の色調にまとめ上げている他、髪、肌の透明感、光沢、グラデーションはかなり精密に表現されている。

 ただし、完璧ではない。まず、【A】は性転換している(筆者は正真正銘の20代男性である)上に、左手がイソギンチャクと化している。また、腕の関節の位置がやや狂っているなどデッサンの精度が甘い。

 【B】は衣服のふわふわした襟元のデッサンに違和感がある上、首周りのデザインがやや中途半端だ。加えて、生成する際にプロンプト(簡単に言うとAIに与える指示内容だ)に「茶髪」と入力したが、それが反映されていない。ただ、プロンプトの入力には英語を推奨しており、筆者は日本語で指示を与えたため、言語的な部分で適切な画像を生成できなかった可能性もある。

 以上、細部の描写が稚拙であったり、使用者の指示を反映できないといった状況であり、当アプリの改善の余地はまだまだ残っている。しかし、数年前まで「AIにクリエイティブ領域だけは真似できない」とさえ言われていたにも関わらず、この有様である。そして、そうした主張をしていた人々は、それでも「しかし、それでもAIにクリエイティブな『センス』は真似できない」等と言うかもしれない。

 しかし、上記の通りAIのポテンシャルは未知数で、驚異的だ。もしかすると、レオナルド・ダ・ヴィンチ、サルバドール・ダリ、葛飾北斎、岡本太郎等の有名画家に加え、あらゆるグラフィックデザイナー、イラストレーター等の色彩表現や構図等を細部まで学習して、「センスの法則」的なものを理解してしまうかもしれない。つまり、描画や彩色等の技術的な分野に限らず、独特の感性すらも学習してしまうと筆者は考えているのだ。そして、もし生成AIがセンスすら体現出来てしまえば、多くのクリエイターはAIに淘汰されてしまうのではなかろうか。このように、Uni Dreamの使用体験を通して漠然とした危機感を感じたのである。

 生成AIは画像分野に限らず、テキスト生成を応用して、プログラミングや対話の技術も模索・実装されつつある。イラスト、ロゴ、写真などビジュアルデザインを手掛ける人間に限らず、あらゆるクリエイターを超える日が来るのだと筆者は考える。

©︎2023らのもん

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