街を歩くとき、どこを見ているんですか?

「街を歩くとき、どこを見ているんですか?」
「街歩きでどういうところに注目しているんですか?」

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これらは私がよく分からない街にたくさん訪れていることを知っている人にはよく頂く質問だ。質問としては至極真っ当だし、おそらく私も自分にこの趣味がなく知り合いに街を訪問しまくる類の人物がいれば同じ質問をいつかは投げている気がしてならない。が、正直なところ私はこの質問に対するちゃんとした答えをいまだに用意できていない。だいたいはふわっとした回答、すなわち「街の全てをなんとなく見てる」だとか「特に1箇所を見るというよりも全体感をばーっと眺めてる」だとかそういう答えをして、すると相手はそれに対して納得してるんだかしてないんだかわからない表情を投げてくれる。それを見る度に、なぜ私はありとあらゆる街に行きたがっているんだ、そして街に行ったら何を感じながら何を見るんだ、という点をちゃんと言語化しなきゃなあ、という念に苛まれたり苛まれなかったりする。

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自分の街歩きを思い出してみる。知らない街に行く時、まずは訪れる前に現地の地図を確認し、駅と市街地の位置関係・大型商業施設や役所など街のシンボルとなるもの・目抜き通りのルートぐらいは頭に入れておく。到着までにどこをどのようなルートで巡るか考えておく。商業地区・業務地区・歓楽街・官庁街を効率よく一筆書きで巡れると理想。大型の商業施設や公共施設は一通り寄りたいのでこれもピックアップ。街に着いたら、考えてたルートに従って、写真を撮りながら歩く。歩く。歩く。写真は記録、それも街並みの記録のためなので、何か気になったスポットや面白そうなお店があったら…と言うよりは、ひたすら街並みを撮る。数十メートル歩いたら撮る、街並みが変わったら撮る、街の顔になりそうなアングルがあったら撮る、みたいなイメージ。歩いてる際は、沿道の店を見るようで見ない。この辺は昭和から続いてる古そうな商店が多い、この辺りは銀行の支店が多い、この通りはお洒落なカフェが多い、そんなざっくりした把握。一つの街の中で、どういう街並みがどのあたりにあって、どういう人(年齢層など)が多いのか、みたいな、地図をひたすら眺めるだけではわかりにくかったりわからなかったりすることを実地で確かめる意識。なので通行人の量、車の量、道ゆく人の雰囲気、なんかも凝視はしないけど常に気にしながら歩く。一通り歩けたら街中は終わり。街が大きい場合、車を借りて中心部と郊外を行ったり来たりもする。

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一つ思うのは、空想地図作家としての視点の存在である。常に頭の中----中心とは言わずどちらかと言うと隅っこの方----には空想地図の存在があり、それの参考にするために実際の街を回っている自分がいる。事前に街の成り立ちを軽く調査して、実際に歩く際は街の全体像に目を配る。一つの都市の地図を描写する以上、その範囲は街の中心部だけではなく、郊外やそれより外側の周辺部も描く必要があり、現実っぽい街を描くためには現実の街の諸相を知る必要がある。日本どころか世界に一つとして同じ街が無いことからもわかるように、地形、気候、人口、歴史、様々なファクターは複雑に作用し、その街の姿を決める。

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そして「地図」という一つの図に起こす際にかなり考えるのにエネルギーが要るのが、街の諸要素がどのぐらいの広さで、どんな位置関係にあるのかということ。例えば都市圏の人口〇〇人ぐらいの街の場合、中心市街地はどのぐらい広く、郊外の住宅街はどこにどのぐらいの面積で発生するのか。街の中心から外れに至るには「ビル街(建物が密集、事務所や商店がメイン)➡︎住宅街(密集)➡︎住宅街(疎、田畑や空き地など混ざる)➡︎田畑/山(人が殆どor全く住まない)」みたいな景色の移り変わりがあろうが、中心→郊外と見た場合にその変化のスピードはいかほどなのか。車で5分も走れば"はずれ"に行けるのか、30分ぐらい走っても家並みが続いているのか。しかも、その変化のグラデーションは、街の真ん中から素直に同心円状に広がる訳でもない。あるいはもう少しミクロに見れば、例えば「オフィスビルが中心のエリア」「官庁街」「商業施設や商店街」「歓楽街」は街のどこにどのように広がるのか。さらに拡大すれば、街中でいま人通りが多そうなところと少なそうなところでは何が違うのか、或いは歓楽街でも大衆居酒屋が多いエリアと風俗店が多いエリアはどこに棲み分けられるのか。

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いずれにせよ、さまざまなスケールにおいて、どのような要素の広がりがどこにどのぐらいあるのか。そういう"肌感覚"みたいなものを、実地を沢山見て、歴史的な経緯(街の移り変わりなど)を調べながら、原因として存在する街を取り囲む要素(環境)と、その産物である結果(街の形)のパターンを頭に叩き込んでいく。このように、街の姿をまずはありのままに、かつ平面の脳内マップに落とし込むような形の実地調査、みたいな意識で街を歩いている、というのは一つ言えることだろう。

話は最初に戻るのだが、いずれにしてもこの実地調査みたいな街歩きを、いかに人に形容するか、手短に言語化していかないとなあ という念が、ある。


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