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金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」を読んで その3

 今回は国民の老後の生活、金融環境に対する意識についての項目の要約とそこから考えられることをまとめていきたいと思います。

 まず国民の老後の生活に対する意識について、内閣府が実施した世論調査によると「老後の生活設計について考えたことがある」と回答した人は全体で67.8%となっています。とりわけ30〜60代では軒並み半数が考えたことがある、と回答しています。また考えたことがある、と回答した人の理由として「老後の生活が不安だから」という回答が多数を占めていました。つまり、老後の生活への不安を多くの人が抱えている現状があると思います。

そして老後の生活の不安要因として”メットライフ生命の「老後を変える」全国47都道府県大調査”によると20〜50代で軒並み、その要因の1番手として「お金」を挙げています。そしてお金の不安に対してどのように対処していくか、については”日本FP協会「くらしとお金に関する調査」”によると「現役で働く期間を延ばす」、「生活費の節約」が多く回答されていましたが、約3割の回答者は「若年期からの資産形成に取り組む」という回答をしていました。他方、”内閣府の「老後生活設計と公的年金に関する世論調査」”によると「老後に向け準備したい(した)公的年金以外の資産」という質問に対して証券投資を挙げたものは2割以下に留まり大多数は預貯金、退職金を挙げています。これらから国民の大多数が老後の不安を持っている、その要因として多くの人がお金を挙げている、そのために資産形成の必要性も意識している、しかし行動化に至っている人の割合は少ない、つまり意識と行動に乖離が見られていることが考えられます。

では、その乖離の原因ですが、”金融庁の「国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査2016年2月」”によると理由の上位を占めているのが「まとまった資金がない」、「投資に関する知識がない」、「どのように有価証券を購入したら良いのかわからない」という回答が上位を占めていました。iDeCo、積立NISAの現状の認知度については”投資信託協会の「投資信託に関するアンケート調査報告書-2020年(令和2年)NISA,iDeCo等制度編」”によるとiDeCoに対する認知率は59.9%、積み立てNISAに対する認知率は64.6%となっています。iDeCoの認知率59.9%を詳細に見ていくと、「名前も制度内容も知っている」が18.3%、「名前は知っているが、制度内容はよく分からない」が41.6%となっており同じく、積み立てNISAでは、それぞれ23.2%、41.4%となっています。つまり、年々iDeCo、積み立てNISAに対する認知率は上がってきているものの(主に若年層)、制度内容の理解までは未だ浸透しておらず制度の認知とともに内容の理解も同時に進めていく必要があると思います。そのためには制度を主導している国民年金基金連合会や金融庁といった関係機関の周知活動も大切ですが、一番は自身できちんとそれぞれの制度について調べてみる、ということが重要だと思います。

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