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天神祭①

大阪は20日に梅雨明け、土用にも入りました。夏本番というところでしょうか。暑さはとっくに真夏並みですが・・・。

大阪で有名な夏祭りといえば大阪天満宮の天神祭。日本三大祭りの一つとも、大阪三大夏祭りの一つとも言われます。7月24日宵宮、25日本宮が盛り上がって有名ですが、6月下旬の吉日から諸行事が行われています。大川での船渡御や篝火・提灯灯り、花火などの盛大さから火と水の祭典とも言われます。

大阪天満宮の社伝によると創祀翌々年の天暦五(951)年の6月1日、あるいは晦日に鉾流神事(ほこながししんじ)が始まったとのこと。社頭の浜から大川に神鉾を流し、その年の神霊渡御地を卜定する神事で、今は7月24日の朝に行われます。この鉾流神事は本来「夏越の祓」であったから、6月晦日だった可能性が高いのではないかと考えられます。

天神祭の名で史料に出てくるのは室町時代に書かれた「康富記」。宝徳元(1449)年7月7日に「川崎之鎮守(大阪天満宮のこと)天神之祭也」の記載があります。今年の七夕の項では主に中国の伝説のことで話が終わりましたが、後の時代、日本での七夕は、穢れを形代に託して水に流す穢れ払いの行事へと変遷していきます。祓いの行事つながりで、天神祭と呼ばれるようになる頃には7月7日に行われるようになっていたということですね。

その次に見られる史料「言経卿記」では天神祭と思しき記録は天正十五(1587)年の6月25日の日程に変わっていて、この1499年から1587年の間に菅原道真の神徳を崇める要素が強くなったことなどから、道真の誕生日である6月25日に祭りの日が変更されていったのではないかと考えられるようです。更に明治五(1872)年の太陽暦採用に伴い、祭日が7月25日に変更され、現在に至っています。そう、↑の天歴五年からの日にちは全て旧暦でのものです。

日程の変遷だけで長くなってしまいました・・・。

大阪にいても、京都の祇園祭の情報に圧倒されそうな昨今ですが、お茶を通じて己を知るということも一つの方針としており、大阪でお茶をしている身としては、少しずつ大阪天満宮の天神祭のことを書いていきたいと思います。新型コロナウイルスの流行で2020年から諸行事が中止になっていましたが、今年久々に従来の形式で開催されることもあり、9月3日まで大阪くらしの今昔館で「天神祭と都市の彩り」という企画展が開催されています。近辺にお住まいで、ご興味のある方はぜひお運びください。

今日の菓銘は「篝火」。
大阪のお菓子屋さんで天神祭に想を得たものをほとんど見ません。この時期、京都では生菓子・干菓子問わず祇園祭を題材にしたもので溢れかえっているというのに。残念なことです。これをお読みくださっている方も、地元のお祭りに心を寄せてみてはいかがでしょうか。面白いことに出会えるかもしれません。

この週末は着物の虫干し予定です。ますます暑くなっていくでしょうが、適度に発汗しつつ、体調を崩さないようお気をつけください。

参考文献:「天神祭 火と水の都市祭礼」(思文閣出版)



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