仮面ライダーを知らない人にこそ知ってほしい今年のライダー映画のヤバさ
皆さんがこの記事を読んでいるのは2019年8月だと思いますが。
今は平成ですか?令和ですか?
答えはこうです『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』を見た人は令和、そうでない人はまだ平成である。
何を言ってるのかと思うかもしれないが劇場版仮面ライダージオウとはそういう映画だ、今から君たちにはこの映画のことを説明するし見たら映画館に生きたくなると思う。
今この文章を読んでいる人は「仮面ライダーの映画?どうせ映画限定の悪いやつが出てきて 色々あってライダーキックで終わりだろ?」と思ってるかもしれない。まずそのような認識は一切通用しないと言っていいだろう。
映画そのものの話に行く前に仮面ライダーに興味ない人に向けて説明しているので『仮面ライダージオウ』という仮面ライダーについて説明しないといけない。
平成仮面ライダーは今年で20周年を迎える
その記念すべき20作目として制作されたのが仮面ライダージオウだ
「将来の夢は人を幸せにする王様」と語る変わった高校生・主人公常磐ソウゴはある日
2068年の未来からタイムスリップしてきたと名乗る未来人に命を狙われる
彼らいわく「2068年の未来は常磐ソウゴが悪の魔王 仮面ライダーオーマジオウとなって暗黒の世界になっている」というのだ、彼が魔王になってしまう条件は単純で「すべての仮面ライダーの力を手に入れる」こと。
だが他にも「別の仮面ライダーを魔王にする」という目的で暗躍する未来人たちが2018年に集まっており、生み出された偽の仮面ライダーたちが人々を襲いはじめる。
「俺は絶対将来魔王になんかならない!」目の前の人々を救うため
「未来の魔王の家臣」を名乗る謎の男 ウォズから変身ベルトを受け取り
常磐ソウゴは仮面ライダージオウとして「自分が将来魔王にならないための戦い」を始めるのだった…。
というのが「毎週日曜日の朝に放送されている仮面ライダージオウ」のお話だ、タイムマシンを使って歴代仮面ライダーの時代にいって少しずつ歴代仮面ライダーの力を受け継いだり、時には「やはり本当に未来で魔王になるのではないか?」と仲間から疑われたりを繰り返してもうすぐ最終回を迎えようとしている。
で、問題の「劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer」だこれはすごい映画だ、はっきりいってこれは日本にしか作れない映画だろう。
別に「日本すごい!国外は駄目!」という話がしたいのではない
「平成」とか「昭和」とか「令和」という元号で「遊ぶ」映画はこいつらしかいないからである。
簡単なあらすじを説明すると
「時間の管理者」を名乗る謎の組織「クォーツァー」たちが「平成を抹消する」と言って襲ってくるのである。
もうこの時点でいろいろおかしい
歴史の管理者を名乗る組織が時間を修正しようとする物語は古今東西枚挙にいとまがないであろうが「平成」だけをピンポイントに狙ってくるやつはこいつらしかいないだろう。
そんな彼らの攻撃で「仮面ライダードライブ」の歴史が消えそうになってしまうため、彼らは戦国時代にタイムスリップ「魔王」と呼ばれた織田信長に会うことになる。
だが実際の織田信長はひょうきんな人物で歴史上のイメージとは全然違った、主人公は『その時代に生きてる人と後世に伝わってることは違うよ』と勝手に納得する。正直しょうもないギャグシーンなのだが。仮面ライダージオウという番組は「未来では主人公が魔王になっている」と伝えられて始まった番組である、そして今視聴者も仲間たちも「この主人公が魔王には見えない」と思っているということにかけた一つのテーマの提示だった
敵の妨害を乗り越えライダーの歴史を一つ救ったジオウたちだったが
主人公が仮面ライダーに選ばれた理由にまつわる衝撃の事実が明かされると共に(それは映画館で見てくれ)平成抹消が始まる
そして彼らクォーツァーの言う『平成』という単語は実際の年号の平成ではない
「平成仮面ライダー」という番組を示すメタファーである
「設定も時系列もバラバラで同じ仮面ライダーなのに作品間に繋がりがない」そんな凸凹した仮面ライダーの歴史を綺麗にしたいというのだ。
確かに平成仮面ライダーを知らない人に平成仮面ライダーを説明するのはめんどくさい、何せ一年に一回新しい番組に変わり、そのたびに設定も世界も悪の組織も怪人もまったく違うものになるし何だったら現代の話じゃなかったりする。
「どの順番で見ていいかわからない」ではなく「どの順番で見ても繋がってない」のだ、そして10周年記念ライダーだったディケイドに至っては「繋がってないので異世界に渡る感覚で他所のライダーの世界(番組)に割り込む仮面ライダー」というメタすぎる特殊なライダーとなった
そんな新規にわかりづらい仮面ライダーの歴史を一本化して、綺麗で設定も整ったものにしたい!というのが悪役の目的である「世界征服」なんてものを目標にするのはもう古いのだ「自分が出てるシリーズの設定がバラバラなこと」にキレて襲ってくるのである。
しかも恐ろしいことにこの悪役も昔の仮面ライダーの力を使う
「平成に放送されたけど平成仮面ライダーシリーズに含まれて無い仮面ライダーの力」で襲ってくるのだ
メタにメタを重ねてとにかく「物語の中で起こった出来事」ではなく、TVの前の人々の持ってる「歴史」の中で起こった仮面ライダーという”番組”が物事の争点なのである。
そして仮面ライダージオウは破れ…歴代仮面ライダーの力(歴代仮面ライダーの歴史)を奪われてしまう…
牢獄に閉じ込められ、処刑を待つのみとなった主人公に驚くべき人物が声をかける
「ぶっとばすぞぅ!!」
こ、こいつは?!
木梨猛(演:木梨憲武)?!
80年代終盤(つまるところ平成元年)から90年代前半の人気お笑い番組「とんねるずの皆さんのおかげです」の”コント”である「仮面ノリダー」の主人公木梨猛じゃないか!!
確かに仮面ライダージオウは歴代仮面ライダーの力を使うヒーローだけどお前は仮面ライダーですら無いだろ?!!!?ていうか仮面ライダーに無許可でやってたせいでコーナー打ち切られたじゃねえか?!なんで?!
混乱する視聴者を他所に「自分は力を奪われた偽物だ…」と落ち込む主人公に仮面ノリダーは言う「キミは認められた本物の仮面ライダーだ 俺は改造人間として戦ってきたけど仮面ライダーとは認めてもらえなかったのでこうやって牢屋にいれられてるんだ!」
普通にとんでもないセリフである
仮面ライダー公式に無許可でやってたのでどんなにクォリティが高くても「偽物」として放送を打ち切られたヒーローが「お前は何があっても仮面ライダー公式が仮面ライダーだと認めているんだから本物だ!」という権利上の本物という概念を持ち出して応援するのである!
そんなメタフィクション許されるのか?!?!?
「あの人気コントのキャラクターが登場」というサプライズにも関わらず「俺はコントの偽物だけどキミは本物じゃないか」と「本物のヒーロー」論にも重ねたヒーロー論で笑いながらも目頭が熱くなる。
そして救出にきた仲間たちとともに駆け出し戦いが始まる、だが歴代仮面ライダーの力を結集した仮面ライダージオウの最強フォームのちからでもクォーツァーたちを倒すことができない…苦戦している間にも刻一刻と平成消滅作戦が進行し平成生まれの人々が襲われていく(なんだこの作戦)
そんな時、不思議な出来事が起こる、人々の持っているタブレットから本からチラシから、新しい仮面ライダーたちが飛び出してくるのだ
SMAPの特番コントから生まれたジャニーズの仮面ライダー!仮面ライダーG
ネット配信限定ドラマ代表仮面戦隊ゴライダー!
元号が令和になった瞬間配信して令和ライダーを名乗ろうとしたネット配信スピンオフ!仮面ライダーブレン!
月刊ヒーローズで連載中!「漫画版」仮面ライダークウガ!
今や仮面ライダーは舞台演劇にもなっている!舞台演劇出身!仮面ライダー斬月カチドキアームズ!!!
「お前たちがどんなに抑え込もうとしても平成ライダーは溢れ出してくる」
もはや平成仮面ライダーというコンテンツは「TVで放送したライダー」の歴史を消したとしても、これだけ広い媒体に広がりきっており。すべてを消すことなど不可能なのだ…
主人公も叫ぶ「平成が凸凹の道なのはみんながその瞬間瞬間を必死に生きた今だからだ!」と
その通りだ、今でこそ平成仮面ライダーのTVシリーズはネット配信で簡単に全話見れる「これが名作だよ!」とTwitterでおすすめされ、アマゾンプライムビデオなどであっさり見ることができる。
でもそうではない「今でこそこうして名作扱いでおすすめされるけど、放送当時はボロクソに視聴者が荒れて」みたいな醜い出来事もあった
「後世の歴史に書かれていることと、実際にその人が生きた”今”」は違うんだという織田信長から得たメッセージの答えがここで炸裂する。
そんな「瞬間瞬間を必死に生きた結果」が「20年間途絶えることなく放送されてきた仮面ライダーの歴史」なのだ 「海外の超大作みたいに10数年様々な作品を伏線や時系列を完璧に重ねながらエンドゲームする作品も素晴らしいかもしれない… でも俺達が必死に生きてきてめちゃくちゃになったこの20年こそが仮面ライダーなんだ!」と「歴史のキレイなとこだけ集めて仮面ライダーを”売れる”ようにしたがる外の意見」にライダーキックをカマしていく そんな中で主人公もまた「20年分の仮面ライダーの力を使える仮面ライダー」ではなく「20周年記念に生まれた20人目の一人の仮面ライダー」として独り立ちすることで新たな力を得る!
歴代仮面ライダーを集合させながらも「歴代仮面ライダーの力を使う」ことが特徴だったライダーをその能力から卒業させ「個性」を付与するのだ
一人の仮面ライダーの物語をやりつつ歴代ライダーの歴史の肯定も同時に(しかも視聴者視点で)やりはじめる あまりにもめちゃくちゃ!あまりにもめちゃくちゃなのだ!!
仮面ライダーは素晴らしい作品だとか、仮面ライダーは愛と正義を教えてくれる教育にいい作品だとか、世間様にアピールするチャンスをかなぐり捨て。
めちゃくちゃやらかしてきた仮面ライダーの歴史を「これが仮面ライダーじゃい!!!!」と真正面からぶつけてくるこんな映画があっていいのか!俺は好きだけど!!
そして最後は巨大化した悪役にライダーキック だが普通のライダーキックじゃない!すべての仮面ライダーが「それぞれのライダーのロゴ」に変形してアタックしていくのだ!そしてライダーキックを防ごうと構えたバリアーに穴が空き 漢字が浮かび上がる「平成」
奇しくも昭和の終わり新元号を発表した小渕恵三が色紙を持ったのと同じポーズで悪は爆散した。
そう「平成」と書かれた板を持った悪役が爆発四散することで
「平成が終わり 新たな令和の時代が始まる」ということを示すのである
仮面ライダーというコンテンツはいったい元号をなんだと思ってるんだ???
皆さんはこの文章読んで映画の内容を理解できましたか?
少なくとも「ショッカーが出てきてライダーキックで倒す」という内容でないことは理解できたと思う
ただひたすらにTVの前の視聴者に「平成仮面ライダー」という番組についてのメタフィクションをぶちまけ続けながら「20周年という看板を背負ったライダーを一人の仮面ライダーに一本立ちさせる」というシナリオを両立させる意味不明な妙技の数々。
5月の時点でとっくに令和になってるのに「今平成が終わる!!」みたいな映画を7月末に公開する根性!とにかく平成仮面ライダーという「コンテンツ」が持つ物を全て注ぎ込み
「今年は元号が平成から令和になった年だから」こそ見る価値の映画
『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』いいからお前ら映画館に今すぐ見に行け!!!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?