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「春荒襖絡繰」2022.5.20日記


  小説新潮6月号、本日発売です。私が書いた短編『春荒襖絡繰(はるあれふすまからくり)』が載っています。双子の姉弟が次々と切り替わる襖絡繰の世界に迷い込むホラーファンタジーです。

 この話、書くのに結構苦労した。そもそものプロットがなかなか思いつかず、「編集者さんが子供の頃好きだった絵本を教えてくれれば面白い話を思いつくかもしれない」とダル絡みするところから始めた。

 翌日編集者さんから数冊分の絵本のタイトルと内容説明、それに伴う思い出話が長文メールで送られてきたので、編集者って大変な仕事だなあと思った。

 その編集者さんが少女だった頃の思い出がとても素敵だったので、私は自分が子供だった時の思い出を物語にすることにした。

 襖絡繰は私の地元、徳島の伝統芸能みたいなものだ。とはいえ割と山奥に踏み入らないと観られないので、大抵の徳島県民は知らないはず。「襖絡繰の話書くよ」って地元の友達に言ってもだいたい皆知らなかったし。大きな襖絵に様々な仕掛けがあって、次々に絵が切り替わっていって中々面白いんだけどね。


 この神山町の農村舞台に中学生の時連れて行かれて、めっちゃダルイな、帰ってゲームしたいなあと思った時のことを書いた。実際見ると綺麗だったけどね、襖絡繰。だからこそ印象に残っていて小説にしたわけだし。虎がえらい可愛いかったんだよな。なんか猫っぽくて。

 今まで書いた話と違って、私の思い出を多分に含むものなので扱いが難しかった。過去を晒すちょっとした恥ずかしさみたいなのもあるし。

 主人公が小学生だから流血シーンは控えめにした方がいいだろうか? 三人称視点とはいえ、少し語彙を小学生に合わせた方がいいのでは?

 そんなことを編集者さんと話しあいながらお洒落なパフェを食べたりした(インスタに写真載せた)。



「もっとカッコいいのにしましょうよ!」って言いながらタイトル候補をたくさん紙に書いて一緒に考えたりしてとても楽しかった。こういう時に感覚が同じだと嬉しいですね。同い年で話しやすいし。

 そんなこんなで完成した『春荒襖絡繰』、ぜひ読んで頂きたいです。挿絵もべらぼうに可愛いのでね。mashuさんというイラストレーターさんに描いて頂きました。双子の姉弟の周りを兎が跳ねる幻想的な絵で非常に愛らしいです。

 私が書いた話にしてはかなり健全な仕上がりになったので、これなら親戚のちびっ子どもにも読んでもらえるかな。ちょっと怖いかもしれないけど。

前回小説すばる4月号に載せてもらった『Niraya』は子供にお見せするのが躊躇われる内容だったしね。地獄モチーフで頑張った結果だからしょうがないけど。

 新人座談会にも参加したので、新人作家同士全員初対面で緊張しながら二時間話したあれこれも記事になってます。お互いに質問しあう形式だったので、プロットの書き方や税金関係の対処、サインの仕方などそれぞれのお悩み相談みたいになってます。最後にノせられて大望を語ってきたので、そちらも楽しんでください。

 一つ大事な仕事が片付いたから、そろそろ次の話を考えたいな。短編か長編か。思いつかないから最近毎日こうやって日記書いて暇を潰してるみたいなところはあるんだけど。なんにしろ、また近いうちにどこかでお会いできたらいいですね。でも今はとりあえず読んでね。小説新潮6月号。

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