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偽装貧困のススメ

1. はじめに

 世の中には多くの偽装●●(偽装請負・食品偽装など)が存在します。偽装と言うとマイナスのイメージを持ちますが、本稿では発想の逆転で富裕層が貧困層のふりをする利点について検討します。 

 富裕層が貧困層のように振る舞うことを本稿では「偽装貧困」と表現します。なぜ富裕層に偽装貧困の発想が必要なのかを社会制度・税制を軸に考えます。 

2. 偽装貧困の期待効果

 なぜ富裕層が貧困層のように振る舞うのかですが、その方が社会制度・税制的に優遇されるからに尽きます。

 国民は基本的な権利において平等です。(選挙権や公共サービスの利用など)しかしながら税金・社会保障は不平等の塊です。権利と義務の天秤が釣り合っていないのが現代日本の社会制度です。

 どの国も必ず優遇される層と冷遇される層が生じるのは避けることが出来ません。しかしながら日本は両者の差が著しく、成長の活力を削ぐようなマイナス効果が発生しています。 

 ネットには「働いたら負け」というパワーワードが存在しますが、一面では日本の現状を端的に示しています。このような社会制度を是正しない限り、社会全体の底上げは不可能でしょう。 

偽装貧困の基本戦略は以下の通りです。

  • 所得を出来る限り低くコントロールする

  • 所得を分散する(自身・親族・法人など)

  • 損益通算を活用する

  • 分離課税の有価証券を多く保有する(不労所得)

  • 控除を可能な限り利用する

  • 住民税非課税世帯を検討する

 日本は労働によって得た収益に対して累進課税が適用される国家です。よって如何に課税所得を圧縮するかが全体の鍵となります。

 勤労所得は一般に時間・肉体的負荷とのトレードオフであり、多くの給与を得る場合には長時間労働や専門知識・技術が必要となります。 

 一方で金融資産から生じる不労所得の場合、時間・肉体的負荷のトレードオフは生じません。よって人生の最適化を目指す際には「時間」に着目し、勤労所得から資産所得へのシフトを計画的に進める必要があります。 

 金融所得は分離課税であり、給与所得とは別に処理され税率も一定です。従って給与所得の目安は所得税+住民税の合算が金融所得の税率である20%を超えない範囲or住民税非課税世帯に該当する範囲のどちらかが良いです。 

 住民税非課税世帯の場合、必然的に所得税も非課税となるので最低限の社会保険料だけで済みます。(国民年金or厚生年金、健康保険)日本は住民税を支払っていなくても公共サービスの利用が可能なので費用対効果を考えると課税所得ゼロ(所得ゼロではない)が一番コスパが良いという結果になります。  

3. 偽装貧困の実践方法

 前章では偽装貧困の方針を示しました。本章では実践編を考えます。 

 まず重要な概念として「所得」と「資産」の違いがあります。普段は所得と資産を意識していない方が多いかもしれませんが、所得はフロー、資産はストックです。富裕層を目指す投資家が重視するのはストックです。 

 フローはストックを形成する過程において不可欠ですが、日本の社会制度・税制的に高所得は懲罰的な課税対象となるため一定のストックが形成出来たらフロー収入を縮小し、ストック収益を軸とした生活に切り替えることが重要です。 

 フローは小さく・ストックは大きくが基本であり、これを実践すると世間一般では「低所得」という扱いになります。他人からの見え方が気にならない方はあえて低所得を選択しては如何でしょうか? 

 合法的に所得をコントロールする方法は個人と法人を切り分けること、親族を役員にすること、損益を通算すること、控除の活用など様々な方法が検討可能です。課税所得の圧縮を優先しつつ、法人経費をフル活用します。 (グレーなラインを攻める必要はなく合法的に認められた手法を活用するだけでも十分に効果を発揮します)

 法人のお勧めは資産管理会社です。やることは個人投資家の延長で資産運用に必要な物品やオフィス関連費を経費に計上出来ます。家賃は社宅制度を活用します。トレードに必要なPCやデスク等の機器はもちろん書籍・セミナー代なども全て経費となります。不動産管理なども業務に含めれば、物件の視察で全国各地への出張の名目も立ちます。 

 資産管理会社からの自身と親族の給与、会社の経費は株や投信の配当・分配金から捻出します。仮に2億円の資金を資産管理会社で運用し、毎年3%の配当金を得ると仮定します。法人の経費を年間400万円とします。200万を自身と親族でそれぞれ100万円の役員報酬とします。 

 この場合、給与所得控除と基礎控除の枠で100万の所得が相殺でき、課税所得がゼロで所得税・住民税が発生しません。200万円の所得を非課税で取得できます。(社会保険料は別)加えて表面上の所得が低いので各種の優遇をフルに受けることが可能です。 

 2020年のコロナ危機でも明らかになりましたが政府・自治体が経済支援の判断基準としているのが「住民税非課税世帯」です。よって住民税非課税世帯に該当する場合、以下の代表的な優遇措置に加えて現金給付等のメリットを享受することが出来ます。 

  • 高額医療費負担の軽減

  • 介護保険料負担の軽減

  • 2歳未満の保育無償化

  • 大学など高等教育を受ける支援

  • 国民年金や国民健康保険料負担の軽減

  日本の社会制度がバグっていると言われる所以でもありますが、住民税非課税世帯の判断基準は「所得」です。資産ではなく所得であるため、極端な例ですが10億円の有価証券を保有していても該当する場合があります。

 高齢者で退職して給与所得は無く年金だけで億単位の運用をしながら住民税非課税世帯、という状況が発生します。一般的な感覚からするとそのような「低所得の資産家」には支援は必要ないように見えますが、日本の社会制度の判断基準がフローベースとなっているため歪みが生じています。

 「悪法もまた法なり」ではありませんが制度設計の問題は政府・自治体が解決すべき問題であり、国民は利用できる制度はトコトン利用すべきです。よって元々の所得がそれほど大きくない方は所得の分散・分割、経費の活用などを通じて課税所得を発生させない戦略が有効です。

 元々の所得が大きくどのような工夫をしても圧縮が困難な場合は個人と法人の所得税率を活用し、利益分配の最適化を狙います。資産管理会社の活用は過去の記事で紹介しているので参考ください。

 私は近い将来、日本の社会制度の欠陥が公になり、サラリーマンの半数が自身の資産管理会社を設立し合法的に節税に励む社会が訪れるのではないかと想像しています。

 そのすると制度に寄生する人の割合が増え制度の維持が困難になります。結果として歪んだ制度が持続可能な形に是正されるようになります。(例えば住民税非課税世帯の基準見直しなど) 

 逆説的ですが歪んだ日本の社会制度を正すためには、バグを看過することが出来ない程に制度を使い倒して、これ以上利用されたら制度が崩壊してしまう、という状況まで追い込む必要があると考えます。

 必要に迫られた結果、本当に必要な人に限定される新基準が制定され制度の公平性・実効性が担保されると考えます。「悪法もまた法なり」であることから制度が変更されたらそれに合わせてライフプランを見直せばよいだけです。

 より便利に生活しやすい社会制度であれば問題ありませんし、自身に都合が悪い形に改悪された場合は別のハックが可能かを検討します。難しい場合は最終手段として海外移住を検討します。日本には年に数か月だけ非居住者としてバカンスで遊びに来る感覚です。 

 判断基準は様々ですが「時間・税率・負担率」がポイントとなります。所得を得るのに必要な労働時間、所得にかかる税率、所得にかかる税率以外の社会負担率の総和が国家サービスの対価と釣り合っているかを個々人が判断します。 

日本人の納税者の8割は所得税10%以下となります。

https://www.mof.go.jp/tax_information/images/image16.pdf

 これは財務省の資料に示されているデータであり、諸外国と比較しても日本の特異性が際立っています。

 日本ではたったの4%の所得税率20%以上の層が所得税を支えています。

 よって所得税が20%以上の方は制度からメリットを受ける側ではなく、制度維持に負担を強いられている側であると認識する必要があります。 

「権利と義務」の関係は「負担と給付」の関係と似ています。本来は右辺と左辺は=で結ばれるべきですが、日本では≠です。必ず得をする人と損をする人が生じます。

 社会制度の欠陥でありどうしようもないので、受け入れつつ上手に活用するのが賢い投資家ではないかと考えます。釣り合いが欠けた制度はいつか崩壊します。とはいえ、そのいつかは予測できません。

 であれば利用できる範囲において利用しきるに限ります。現状、日本の社会制度において一番不利な立場は会社から源泉徴収を受けるサラリーマンです。逆に自由度が高く制度を有利に活用できるのが一人社長です。

 中小企業の社長などは制度の隙間を上手く利用している方が多い気がします。日本は政策的に中小企業を潰さない方針なので合理性に欠ける補助金や制度が多数あり、それらを活用することで法人と言う箱がいつまでも延命できる仕組みが構築されています。 

 昨今話題のColaboではありませんが、公金をチューチューする仕組みが至る所で構築されており利権として関係者の懐を潤しています。大変愚かだとは思いますが、個人がおかしいと訴えても現実には何も変わらないでしょう。それよりも今使えるものを使い最大限のリターンを得る方が個人としては重要です。 

 このような案に懸念を示される方がいるのは重々承知していますが、社会制度を上手に活用し個人の利益を追求するためには、法的に認められている制度欠陥を利用することも立派な戦略です。制度欠陥を利用する人が増えすぎると穴は塞がれるのでそのような形で制度の正常化に辿り着くことになると考えます。 

4. 偽装貧困のライフスタイル

 偽装貧困は偽装であって本当の貧困ではありませんので、特に生活が苦しいわけではありません。とはいえ、偽装貧困を選択する方の金銭感覚はシビアである場合が多いことから無駄遣いや豪華な生活を控え、慎ましい生活を過ごしているのではないかと考えます。 

 資金には余力があるので教育費には制限を設けない、といったようなメリハリのある消費が可能です。不労所得がメインの偽装貧困生活の場合は時間的な余裕があることから趣味に時間を割くことが可能です。

 趣味を法人化しても構いませんし、コミュニティを形成し楽しむのもいいでしょう。無職が体裁が悪いのであればマイクロ法人を設立し社長を名乗れば良いだけです。 

 ただ完全に世間と隔絶してしまうと情報が取得できなくなったり、人的資本が急速に枯渇したりデメリットも存在することから、好きな分野で週に2~3日程度働くのが良いのではないかと思います。 

 収入は金融商品から不労所得を得られる仕組みが構築出来ていれば労働条件に固執せず、興味で仕事を選択できるようになります。経験値を蓄え、人生の幅を広げるという視点でもそのような働き方も面白いと考えます。 

 明治時代の頃に用いられた言葉に「高等遊民」という言葉があります。Wikiには以下のようにあります。 

高等遊民(こうとうゆうみん)とは、日本で明治時代から昭和初期の近代戦前期にかけて多く使われた言葉であり、大学等の高等教育機関で教育を受け卒業しながらも、経済的に不自由が無いため、官吏や会社員などになって労働に従事することなく、読書などをして過ごしている人のこと。

wikipediaから抜粋

 投資家として高度な知識やノウハウを持ちつつも、現代社会をハックし個人の利益を追求することで「時間・税率・負担率」を最適化し自身にとってベストな生活を送る投資家は現代の高等遊民と呼べるかもしれません。 

 能力を発揮し社会に貢献することは重要で尊い行為ですが、物事はバランスが重要です。現代日本は多額の納税をすれば権利が拡大するわけでも優遇されるわけでもありません。尊敬もされませんし、もっと税金を納めろ!というプレッシャーを受けることもしばしばあります。

 等価交換が成立しない社会において社会的な成功者は搾取の対象となります。この現実を認識しつつ、自身の貴重な時間と資産をどのように配分するかを考える必要があります。

 一方でそのような損得を超越した起業家や科学者の努力によって社会や技術が進歩を遂げるのもまた事実であり、そのような偉人には格別の敬意を払うべきでしょう。 

 投資家は資産運用だけではなく、人生における最適なアロケーションの追求と実践が求められます。人生のアロケーションには誰にでも当てはまる正解はありません。個々人によって状況・立場が異なり、人生の優先順位が異なります。よって選択肢と回答は無数に存在します。

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