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SECによるステーキング判断の影響

 本マガジンは時事ネタ(主に経済)をトピックに呟く分量の短いシリーズです。考察も含まれますが感想メインです。 

1. 取引所ステーキングサービスの見直し

 先日のコインデスクで以下の記事が気になりました。

 本件の概要は以下の通りです。 

SEC(米証券取引委員会)は2月9日、暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)の米顧客向けステーキングサービスが無登録の証券提供にあたると発表。当時、クラーケンは同サービスの提供を直ちに停止し、和解金として3000万ドル(約39億円)を支払うと発表した。

※コインデスク記事から抜粋

 本件から推測できる点があります。一番分かりやすい点として、取引所で利回りを謳っているステーキングサービスを停止せざるを得ないということ。次に名称が何であれ証券投資のスキーム(Howey test)に該当する場合、同様の規制を受ける可能性が高いこと。 

注意点としてPoS自体を規制しているのではなく、取引所経由で利回りだけを得るサービスを規制対象に加えようとしている点です。インフラ維持行為としてのPoSという設計思想自体を規制対象にしているわけではありません。

 ここが本件理解の重要ポイントです。 

 少し詳しく見てみると取引所経由のステーキングの場合、ユーザーは秘密鍵を預けた状態になります。(第三者が管理する状態)当然ながらステーキングは収益を期待した取引であり、ユーザーの収益は第三者の努力に依拠しております。

 これらはHowey 基準の要件を満たす可能性が高いことから今回のSECの判断に至ったと推察します。Howey 基準に関しては過去にICOがブームになった際にも判断基準として注目を集めましたが、今回のステーキングサービスにも同基準が援用されています。 

 SECによるステーキングの証券投資認定によってどのような影響が生じるかを整理します。まず取引所によるステーキングサービスの提供が順次停止されます。次にステーキングによって価格が下支えされていたコインの価格が下落します。(特に時価総額・流動性が低く投機性が高いアルトコイン) 

 サービスの取扱い停止と価格の下落によって取引所の収益が低下します。ステーキングを収益の柱としているビジネスの場合は維持が困難になります。既存の取引所は売買収益が主軸なのでマイナス影響はそこまでではないかと思います。ここまでが短期的な影響です。 

 次に長期の影響を整理します。まず仮想通貨取引所の証券業ライセンス取得の方向性が考えられます。今回の趣旨は無登録の証券提供に該当するというものであり、証券業のライセンスがあれば問題ありません。よって、ステーキングサービスの継続を狙う事業者は証券業の取得が必要となります。 

 取引所の多くは証券業の規制を避けると思われるので、証券業を取得しステーキングを合法的に提供する事業者はユーザー獲得のチャンスとなるかもしれません。尚、本アプローチは仮想通貨のステーキング自体に意味があるのか、仮想通貨自体に価値はあるのかという根本的な問いに対しる回答にはなりません。 

 また一部の需要はDeFiに流れることが予測されます。DeFiにも今後何らかの規制が適用される可能性はありますが、”明示的な運営者が存在せずプログラムが金融機能を提供しているだけ”という建付けのDeFiであればSECの規制と関係なくサービスを受けられます。しかしながらDeFiの場合は取引所以上に自己責任が求められることからリスク管理がより重要となります。 

 より本質的な課題は先日の記事でも触れた「本質価値」の定義です。

 仮想通貨は見る人によってその価値を様々に変化させます。現時点では誰のレンズを通して見えた価値が正解か分かりません。10年後・20年後に歴史が証明してくれることになります。仮想通貨は一見すると「価値尺度機能、交換機能、価値貯蔵機能」を満たしているように見えますが実際のところ機能しておりません。

 現状は価格(値段)が付いている電子データに過ぎません。今後も投機の期待値を維持し価格を保つ可能性も考えられますが、それには期待値が保たれている間に実需を伴い、マス層に受け入れられることが必要です。 

 仮想通貨は良くも悪くも注目度は高く一般層も認知はしております。しかしながら実用性・利便性(アクセス性)の観点から積極的に日常生活で利用する意義を見出せておりません。

 業界関係者以外の一般層が日常生活の中で自然と触れるようなサービスが開発出来ればキラーアプリとして一気に実需を伴い広がることでしょう。業界関係者は投機を煽るようなサービスではなく、実需の創造に貢献するサービスを期待します。

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