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「トークン化」という幻想を乗り越える

トークン化米国債の需要が急増

 コインデスクで以下の記事が気になりました。

 2017年頃から「トークン化」という「錬金術」が流行っています。このような記事を書いている私も2014年~2018年頃まではその可能性に賭けていたビジネスマンの一人でした。 

 私は比較的早いタイミングで仮想通貨・ブロックチェーンビジネスの世界に足を踏みいれました。2014年のタイミングから所属組織において事業化の可能性を模索していたこともあり、比較的古株に分類されます。 

 10年弱の間、業界を眺めてきましたが「トークン化」という単語は改めて危険だなと感じます。きちんと定義されずに様々なメディアでトークン化という単語が利用されています。トークン化されるとバリューが高まるように錯覚させるミスリーディングな記事も存在します。 

 トークン化を私なりの言葉で表現すると以下となります。

 トークン化とは「原資産をトークンと呼ばれる電子データの形式で表象したと発行主体(プログラムを含む)が宣言したもの」に過ぎません。これ以上でもこれ以下でもありません。誤解されやすい点として、何か権利が付与されているように見えるトークンがありますが、まやかしであることが多いです。 

 トークンと呼ばれるデータ自体に権利は付与されておらず、別の手段を用いて紐付けされている場合が殆どです。記事ではトークン化米国債についての説明がありましたが、これは以前の投稿で示した「車輪の再発明」に過ぎません。

 トークン化が様々な分野に拡大するという見解を有している方は本質を理解していない可能性が高いです。愚か者によって様々なトークン化の事例が生まれる可能性はありますが、本質的に価値あるプロダクトかどうかは別問題です。 

 クリプトの世界で国債やMMFを表現するには現実の世界で国債やMMFを扱うよりもプロセスが煩雑になります。余計な仲介業者を挟むことにもなります。規制・利用者保護の観点からもリスクが生じます。言ってしまうとメリットが存在しません。 

 仮に同一条件の国債とトークン化された国債の利回りが異なり、トークン化された国債の方が利回りが高かったら疑ってかかる必要があります。本来、原資産以上の利回りが期待できることはありません。価格形成に歪みが生じているか、隠れたリスクが存在するか、何らかの要因が存在します。 

 合理的に考えるとトークン化された国債は原資産と比較すると若干利回り(期待値)が下がるはずです。このような本質理解があれば表面的に新しいサービスに見える何かが登場した際に冷静に評価することが出来ます。 

 この手のプロダクトを見て思うことは当事者は本当に価値あるサービスだと認識しているのか、それとも最初から騙す目的で適当なことを並べているのか、どちらだろう?という点です。 

 投資の神様として有名なバフェットと盟友であるマンガーは仮想通貨に対しては非常にネガティブです。賢明なる投資家は危うきに近づかずなのかもしれません。

 

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