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12【アウトサイダー】

スウェットロッジで
文字通り生まれ変わったムウ

もしかして
ほんまに、昨日、祈りの力で
ガブちゃん、天に帰ったかもしれない

あれだけ 生きる!と
叫びまくったムウの
命がそう簡単に尽きるわけない

そしてこのことを
知っていてくれる人が
うちの他に13人できたということ

そのことで
この世界のかもしだす
匂いが変わった

色合いが変わった

これで少しだけ
前に進める気がした

夜の9時、
家になんとか辿り着いた

翌日は千葉大の初診だった

この時点ではまだ
ルウにいうか言わないか決めかねていた


ムウとルウが出会ったのは
1991年10月5日雨の降る朝10時半ごろ
そこで二人の物語は始まり
10月26日にパートナーになった

そして、一年が経った記念日に、
ムウは彼女にプロポーズをすることに決めていた

ただ、その日、彼女は父親が入院する病院に
家族として呼ばれていた

そして、衝撃の宣告をされる

お父さんは血液のガブちゃんで
治る見込みは少なく、おそらく余命6ヶ月です、と

(当時は本人には伝えないのが通常だったので
 長女であるルウに伝えられたのだった)

ルウは父が大好きだった
父もルウが大好きだった

本当に優しく素敵なお父さんだった

ルウにとって
もう生きて行けないと思うほどの
宣告だった

ムウがいる
ムウがいるよ
大丈夫 大丈夫だから と伝えた

そして
強く強く天に誓った
強く強くお父さんに誓った

この先、何があっても
ムウがルウと生きると

もちろん、プロポーズをするつもりで
いたけれど、より深く、より激しく
ルウと歩くこれからにコミットした

あれから30年
もちろん、こんなムウやから
寄り道も逃げ道も迷い道もあった

だけどルウと生きる
という一点だけは揺らがなかった

そんなムウが

そんなムウが
もしかして
もしかすると

明日、ガブちゃんのことで
あと、残された命はこれぐらいですと
言われるかもしれない

それをルウに隣りで聞かせるのは
あまりに辛すぎる

ムウの命をかけた約束が
果たせなくなって、また
ルウのそばから大事な人がいなくなる

それだけはダメ
それだけは絶対ダメだよ

そんな十字架を背負わせられない

怖い
怖いよ
ムウとルウの歩いていく道が
ガラガラと崩れていくことが

そうしてムウは

診察室には一人で入ろう
と決めていた

一人で、ガブちゃんを克服してみせる と

それがムウのその時の精一杯だった
それだけがムウのその時の逃げ道だった

そしてその夜

病院には一緒にきてほしいけど
診察室には入らず外で待ってくれたらいいから

と伝えた

明日、一緒に聞かなくていいよ 

怖いこと言われるの?

とルウはもちろん狼狽えた

だけど

大丈夫、ムウは受け止められるから
ルウは外にいてくれるだけで安心だから

アウトサイダーに 押しやった
一心同体で全部一緒に乗り越え生きてきたのに
こうしてムウは
ルウをアウトサイダーに押しやった

ルウはお腹が痛くなり、その場を離れた

ムウは、ここ数日の疲れがピークに達し
深い眠りの中に落ちた

そしてこれが最後の深い眠りの夜になった

つづく

教訓
:約束は大事、だけど。。。。。。
:そんなに簡単に人は死なないよ
:一人でできるなんて過信してはいけない
:人に助けを求められるようになろう


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