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13【あ〜死ぬのかなぁ、からの、、】

5月2日、千葉大に初診にいく、朝 

実はこの朝のことはあんまり覚えていない

1番、大切な瞬間だったのに

人の記憶
ある一定の線を越えると
多分、留まらないようにできてる

ルウも一緒に先生の話を聞きたい

怖いけど、
一緒に聞きたい


と言ってくれたんだと思う

わかった

いいの?
ほんとに大丈夫?

じゃぁ
ここまでのことを言うね

と伝え

やっぱり、何か言われてたのね

となって

うん、実はね、、、、、

そこまで、漏れ出ないように
努めて、普通を装って
誤魔化していたいろんなものを
全部吐き出した

たった、1週間なのに

こんなにも
ルウに伝えていないことがある


たった、1週間なのに
こんなにもルウを遠くに押しやっていたなんて

表面的な感情は微動だにしないのに
深くで、きっと、暴れ狂ってる

大丈夫じゃなかった こんなにも
近づきたかったんだ こんなにも
知って欲しかったんだ  こんなにも

人はいや、
ムウは一人では生きれない

そうして
ルウは泣いた
泣いて、泣いて、泣いた

ずっと、ずっと泣いた

その横で
なんだか ムウは

あー死ぬのかなと思った


泣かしてしまったことの
後ろめたさと申し訳なさ

なんでムウは泣けないんだろう

ポツンと一人、田舎のバス停で
こないバスをずっと待つような
焦りと呼んでいいのかわからない感情

そして、
あームウは
逝ってしまうのかな

この人を残して、、、。

だけど
しばらく時がすぎて
深い深い、底の底に
二人で辿り着いた時

一人じゃなく
二人でたどり着いた時

じんわりとした
えもいわれぬ、安堵が広がる

大丈夫
泣かないで

大丈夫

大丈夫だから

という声が聞こえた気がした

大きな大きな
深いところからの
大丈夫が

そうしてムウはガブちゃんと向き合い
ルウはそれをそばで支えることになった

子供たちを産んで以来
ルウはずっと
病気と上手に付き合って
ムウはそばでそれを見ていた
支えると言うほどのことは何もしていない

それが急にまさかのサカサマになった
そんな役割交代が告げられようとは

人はいつか必ず、死ぬ
早いか遅いか、誰にもわからない

そのわからなさの中で
死ぬことなんか忘れて生きてる

だけど
その日が近いのかもしれない

と思ったその時に
いったい、何をするんだろう

その時、ムウはどう動くんだろう

そんなことをこの1週間考え続けた

いなくなった世界を想像し
その世界が滞りなく進むように
できる限りの整理をし手紙を書く

だけど
それも
あっという間に終わってしまって

それ以上、
何かやるべきがある気がするけど
何をどうしていいのかわからない

時が止まって
終わりに向かうようでいて
実は、時は粛々と流れてる

生きてる時間として粛々と

何にも変わらない
そうね

なんにも、変わらない


朝、目が覚めて
生きていることを確認し、
お腹が減ってご飯を食べて

登った太陽に
暑いなぁと思い
それが沈んで
寒いなぁと感じ

またお腹が減ってご飯を食べ
眠くなって眠りにつく

その繰り返し

今までも今もこれからも

それ以上のことは何も起きない

明日、死ぬことがわかっても
腹は減り、目は覚めて、そして眠る

慌てても
狼狽えても
考えても
日々の暮らしは変わらない

この変わらないことこそが
大切な大切な
何より大切なことなんだ

実感として
それが“生きている“ということなんだ

それが“死んでいく“ということなんだ

今、金毘羅に朝日が登った
山の間からポーンと登った

森鴎外や与謝野晶子が
見たであろうこの景色に
時の流れとその変わらなさに

あ〜
ちゃんと生きよう


あ〜
ちゃんと生きてることを感じよう

と思ったのです

次からはいよいよ第2章
医療とのあれこれが始まるよ

教訓:記憶というものは不確かなものである
  :泣いて泣いて泣いたその先に普通の時間が流れてる
  :泣けないからって感じてないわけじゃないさ
  :実感を伴って生きることはごきげんの秘訣だな

ルウ’S コメント

とうとう この日が 来てしまった。

千葉大に紹介状書かれるという事は 
何かがあるからで 

娘達と一番最悪な想像をしてしまい 
どうか どうか 想像するような事ではありませんように 

と1週間祈り 

怖さの余り 何も聴けず 
モヤモヤしたまま 
当日を迎え 1人で千葉大に行くのは ありえないから 
ついていくのは当たり前のことで 

 それをあの人らしくない
 1人で行って来るよ なんて 

もう尋常ではない

覚悟しなきゃいけない日が来てしまった

あの人の口から 
一番 最悪な想像通りの言葉が出てきて 
泣いてしまった

何かが音を立てて 崩れていくような感覚

怖いけど 大丈夫

きっと 大丈夫

絶対 大丈夫

こんな気持ちで検査結果が出るまでの1ヶ月 長かった


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