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38【ムウ家の儀式】


6月17日
グズグズとひたすらに
向き合ってきたガブちゃんを
ひととき忘れて

高知で暮らす3女ノンに会いに行く


何度も何度も
反対されたけど
治療が始まる前に
絶対絶対会いにいくと
ムウは決めてた

たとえ多少
治療のはじまりを
遅らせてでも
絶対会いに行く

なにがあるかわからない
ムウの未来
だからどうしても
遠く離れた
ムウのBABYに
会いに行くんだ

17年前の父の日に
この世に生まれた奇跡の娘ノン


4月のムウの誕生日から
はじまったこの日々が
昨日でやっと一つの方向性が
決まって生きる覚悟を決めた

その翌日から
計らずも3泊4日の旅を
準備していたなんて
なんて素敵な偶然だろうか

それはすでに起こった未来
ムウたちはもうすべてを
しっていてそれをなぞって
生きてるんだと改めて思う

ムウとルウと母で
12時45分発
成田ー高知行きの飛行機に乗る

ここまでの日々は
ひたすらに身体を整え、鍛え
おかゆとやさいと少しのチキンと
味気のないものだけで頑張ってきた

だけどこの旅では
一旦、

すべてを忘れて
好きなように時間を過ごしてみよう


昨日、U先生にも言われた

あなたのプロフィール
改めて全部読んだけど

そこまでストイックに
いろいろ制限して
がんばったりしないでも

好きなものを好きなように

お肉でもうなぎでもなんでも
せいのつくものを食べたらいいと
思いますよ

ただ、いつもより何倍も
ゆっくり食べることだけ
それだけ意識すればね

そっちのほうが
気持ちも身体も元気になるでしょ

と言ってもらった

がんばりすぎるくせを
直せと言うことだと思う

ビビリだから
怖がりだから
心配性がすぎるから
すんごい頑張りすぎる癖を


久しぶりの空の旅は
ひたすらに嬉しかった

雲の上に飛び乗って
ホップステップジャンプするように
ムウの心は踊ってた

高知空港に降り立ち
レンタカーを借りて
いざ、吉野川のほとりの
嶺北地区へ!

あー
こういうの大事
ほんとにこういうの大事

病気のことばっかりに
向き合ってたらもう
そればっかりになっちゃうから

そして今日はなんと言っても
ノンに初めてできた

彼氏


ノンに紹介されて

一緒にごはんを食べる日


ウキウキとドキドキが
止まらない

空港から1時間ほどで嶺北地区につく

ちょうど、ノンが
学校から寮に帰っているところに
後ろから車で追いついて

のーーーん!!!


と叫んだ。

満面の笑顔で振り向いたあのん

あー会えてよかった
ほんとに会えてよかった

ノンの頭をくしゃくしゃ撫でて
生のノンをいっぱい感じる


車に乗り込んだノンは

あーよかった
この日のためだけに
ノンもがんばってきたからさ


とつぶやいた

15歳で一人、親元を離れて
田舎の公立高校の寮に入ることを
決めるなんて大したもんだね

心から誇りに思うよ
色んな嫌なこともいっぱいあるだろうに
がんばって偉いねと

彼女はこのとき

ムウのガブちゃんのことは
なんにもしらない

病院で検査をしたこともなんにも

この旅のどこかで
手術をすることは
伝えようと思ってきたから

一旦、彼女を寮に送り届け
ムウたちはモンベルの
貸切ロッジにチェックインする

気持ちの良い宿で
おおきく息を吸い込んだ

お風呂に行ったり
荷物をほどいたりしながら
ゆったりと過ごしていると

やってきた!

ノンとノンの彼氏
Rくん

ヤッホー!


とムウ

あ、はじめまして
Rです
よろしくおねがいします


的な挨拶を交わしたように
おもうけどあんまり記憶にない

でも電話で話していた通りの
やさしそうな感じのいい子だった

彼は中学生のころから
一人でこの町に暮らしてる
一つ上の先輩

モンベルの部屋を
物珍しそうに覗き込むから

入っていいよー!

というと

いいですかーー!

とテンションをあげて
二人で入ってきた

かわいい

うわぁうわぁと
ひとしきり部屋をみて

モンベルがやっている
レストランに向かう

夕暮れ時の吉野川を望む
気持ちのいいテラス席で
ムウたちはゆっくりと
イタリアンを食べた

久しぶりの
ちゃんとした夕食


ビーフシチュー
トマトハンバーグ
アヒージョ
シーザーサラダ
ワラ焼きカツオのタタキピザ
スモークチキンのピザ
他色々

もりもり
とっても美味しそうに
食べる食べる食べる


二人のことや
寮のことや
嶺北のことや
他愛のないことを話しながら

至福のひととき
これぞ人生の味わい

あの、ちっちゃかったノンが
大好きな人をみつけて
こうして笑ってる

そしてノンのことを
大切に思ってくれる人が
こうしてそばにいてくれる

なんたる幸せ

ノンのどこが好き?


というお決まりの質問にも

照れながら一生懸命答える


この旅が決まった時から
ずっとこの質問がくることを
想定して考えてたらしい

かわいい

ノンはどこが好きなの?


ノンも照れながら
答える

滝川家では恒例のこの儀式

大切な人ができたら
まず、この儀式が行われる


そしてみんなでニヤニヤし
大きな意味での家族になれたことを
喜び合う

あー幸せ

もう食べれないというぐらい
たっぷりゆっくりと食事をして
部屋にもどりデザートのスイカを食べた

これがなんとも
めちゃくちゃ美味しくて
みんなで笑いながら食べた

夜もふけて
次の日は彼女たちの文化祭なので
帰路についた

こうしてノンも少しずつ
大人になり、ムウたちの元から
巣立っていく

ノンがつくる
彼女の世界に
ムウたちはこうして
時々、お邪魔させてもらって
幸せを分けてもらう

あーあ
ありがたいなぁ

ほんとに今日は1日
まったくガブちゃんを意識しなかった
というかとっても仲良くできた

この日常の味わいの深み


与えてくれたことに
心から感謝できたような気もする

幸せな気分のまま
ムウとルウは久しぶりに
シングルベットで二人、眠った


教訓
:旅をするのはやっぱりいいね
:大好きな人の幸せをみるのは最高です
:田舎のスーパーのスイカは絶品!


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