浜松新野球場 県民に開かれた議論を
「概算事業費は370億円と巨額で賛否の声がある」とサラリと書いてあるが、いったい誰が賛成しているのだろう。別にドームがダメだと頭ごなしに言うわけではないが、ずっと物議を醸しているこの問題、なぜドームが良いのか、未だにちゃんとした理由を聞いた(見た)事がない。
砂から守るとか、本文にあるようなウミガメの産卵への影響、というのは、遠州灘海浜公園というおよそ野球場に相応しくない海辺が前提故の消極的な理由であって、場所はともかくまず「ドームが欲しい」という前向きな理由が伝わってこない。傍から見て、造った後の事をイメージしているようにはあまり思えない。
静岡に草薙球場があるのに、という事ならまだ理解できるが、それだと「浜松球場じゃだめなの?」という話になる。単なる「野球場問題」なら浜松球場を大改修(何ならドームにでも)すればいいじゃんで終わる話だが、やっぱり「遠州灘海浜公園」でないといけない政治的な理由がありそうだ。
そんな不可解な計画に「さまざまな関係者の協議参加」をさせて果たして誰がどんな建設的な意見を言うのだろうか。是非続報を待ちたい。
場所の事は度外視してこの新球場問題を単に「新しい野球場を造りたい話」として少し前向きに考えてみたい。
370億円かけてドーム球場を造るという考えが共感を得られないのは、造る根拠に乏しいからだ。「入居者」を失った札幌ドームがどうなっているか、知らないわけではあるまいに。
昔、草薙球場で「パ・リーグ東西対抗試合」を観ていた時に、後ろの人が話していた。「マスターズリーグでも良いから地元にチーム欲しいよな」と。
これが県民の総意というわけではないだろうが、球団がない地域の人々の普遍的な欲求には違いない。
主(入居者)がいないけど器だけ造ろう、という話だと何か空虚で現実味がなくて力が入らないが、「球団を設立しよう」という話とワンセットになれば文字通り「実を伴う」議論になる筈なのだ。
新潟とくふうハヤテがNPBに参入した時、NPB側の当事者が「エクスパンションを見据えた話ではない」とわざわざ断りを入れていたが、それはあくまでNPBの立場であって、「地元に球団が欲しい」人たちがそれに無条件に追従する必要があるわけではない。
もし庵原球場でのくふうハヤテベンチャーズ戦のスタンドを常時地元の熱心なファンで埋める事ができたら、中央のメディアが放っておかない。それでもNPBは「エクスパンションはしない」と言うだろうが、世論が動く。その上ベンチャーズの当事者がNPB正式加盟希望を表明すれば説得力が増し、勢いが出る。
球場を造りたい側は新球団に無関心。新球団を応援する人たちや県民は野球場話に無関心。しかし、もしこの2つの「つながらない話」が有機的につながったら、新球場話はモチベーションというか根拠を得る事になり、そこではじめて具体的に動くような気がする。
今のところ、少なくとも普通の球場はともかく「ドーム構想」がポジティブに語られるシナリオが他に思い浮かばない。
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