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もっと「大人の野球教室」を

 2008年に西武が次のような企画をぶち上げた。

 メタボ気味の中年男性に朗報だ。西武が西武ドームでのナイター終了後に「大人の野球教室」を開催する。「サラリーマンナイト」と題し、10日のロッテ戦後を皮切りに、西武ドームで公式戦が開催される木曜日に限り全8回を予定。男性のみならずOLも気軽に参加できるのが魅力の一つだ。

 グラウンドでは高木大成事業部課長(マーケティンググループ=34)が直接指導に当たる。高木課長は抜群の打撃センスで97、98年のリーグ連覇に貢献。野球の実力だけではなく甘いマスクにも定評があり、ファンなら誰もが知っている存在だ。「今まで子供のイベントはあるけど、大人だけのイベントはなかった。僕もサラリーマン代表として一緒に汗を流せれば」と意気込む。

 9月28日オリックスとのデーゲーム終了後には「ライオンズ杯」の開催も計画中。これまでの練習の成果をトーナメント形式で楽しく競い合う。高木課長は「きょうはノック、きょうはキャッチボール、きょうはティー打撃と“ライオンズ杯”に向けた野球教室にしていきたい」と長期的視野に立ったイベントに発展させたいと強調した。

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 なかなか画期的な企画だったが、今はDeNAや日本ハムもやっているようだ。西武では今の「ライオンズベースボールアカデミー」に引き継がれているようだが、どれだけ「草野球の大人」を相手にしてくれているのかはわからない。とにかくプロ球団が企画した新しいサービスの中では決して多くはないヒットだったように思う。

「大人の野球教室」というと、以前『野球小僧』が特集した事があった。
 内容はごく真っ当な技術論だったが、ユニークというか共感したのはその思想だった。

 つまり「大人だって野球が上手くなりたい」のだ。
 確かに野球教室というのは大概、子供のためにある。野球の上手い子供なら甲子園に行くとか、将来プロ野球の選手になれるかもしれないし、そうでなくとも子供にモノを教える事は社会全体の役目だ。
 それに対して、大人に野球を教えても何にもならない(笑)。親御さんにも、社会全体にとっても大してメリットがない。

 しかし、大人だって野球をやっているなら、やっている以上は上手くなりたいのだ。
 そして日本の草野球人口を考えれば、「大人の野球教室」はひとつのビジネスチャンスと言っても良いのではないか。

「野球上手くなってどうするの」と言う人もいるかもしれない。しかし、それを言ったら例えば釣りをやっている大人が釣りの技術を向上させたいのも否定されてしまうだろう。やっている以上上手くなりたいのは当然の欲求なのだ。

 スポーツ関係には生真面目な人が多いのか、「子供のため」を金科玉条のごとく唱える傾向がある。別にそれは間違っていないが、子供というのは常に新しもの好きで、結構移り気だ。小学生の頃に夢中になっていたものから、高校生くらいになると意識的に離れたくなったりする。よくある子供のバイオリズムである。

 その点、大人は裏切らない。自分を楽しませてくれると思ったモノには末永く付き合ってくれるし、お金を使うだけでなく、市場を成熟させ、育ててくれたりもする。
 プロスポーツに携わる人にはそういうセンスがないのか、あるいは大人を相手にする自信がないのか、子供の方ばかりを向く。

 草野球をやっている大人のほとんどは、プロ野球ファンである。元プロや現役のプロ野球選手から野球を教われるとしたら、どんなに嬉しいか。子供を相手にした地域密着策は、気の長い地道な事業だが、大人を相手にしたそれには、もう少し即効性がある。

 これに関しては12球団すべてに事業として定着させて欲しいくらいだ。シーズン中は無理でも、オフに1日でも現役の選手から(OBならもっと頻繁に)教わる機会があればと思う。教える方も教わる方も大人。余計な事に気を遣わなくても良い。

「大人の~」と言うと、何か卑猥な響きがあるが、「大人の野球教室」は、なかなか広がりを感じる言葉だと思う。

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