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野球ものの名文・名セリフ(18)

 大和路の静寂の中で子規は天井を見つめながら半生を辿り続ける。
 その時、耳の奥で何かの音がした。
 乾いた音である。ひどく懐かしい音であった。青空が見えた。その空に向かって弧を描いて飛ぶものがある。
 ボールだった。べーすぼーるのボールが青空を飛翔していた。

伊集院静『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』

 日本人にとっての俳句、俳句にとっての子規、子規にとっての野球。

 日本人とその文学性の間に介在する野球という存在の大きさを思う。


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