欧州で野球が流行らない理由
については諸説あるが、「日本とアメリカに勝てない競技に欧州は力を入れないだろう」というのが私の意見だった。
それが1983年という大昔に出版された本で語られており、我が意を得たりという感じがしたので紹介したい。
クリケットが野球のルーツかのような表現が気にはなるが、この頃すでに本質を言い尽くしていた人がいたのに驚く。文化としてあまりに偉大である、という背景。それもわからずに「世界でマイナー」としか言えない、日本の野球を取り巻くメディア、ファン...。
こうした無数の創作の存在は野球が「偉大な文化」である事を裏付けるに十分であり、今ではたぶん入手困難な本書も「流行ってないからマイナーだ」という野球ファンのシンプルな脳みそには良く効く筈だ。
特に最後のエピソード『閃くスパイク』が素晴らしい。ある田舎町の野球チームと、元プロの集まりだがすでに引退した年配者のチームが試合をする。田舎町の若いチームは相手を年寄りと思って甘く見るが苦戦する。主人公で19才、ショートを守る「ぼく」は、攻守交代のたび、相手の二塁手から的確なアドバイスを受ける。しかし後に彼が「ブラックソックス事件」に関わった一人である事が判明。球場全体が彼を敵視する中、「ぼく」は彼に対するリスペクトを止めない...。
12編に共通しているのは、厳しさや皮肉の効いたユーモア、その他書き手の個性がそれぞれ違いながら根底に「優しさ」が根付いている事だと思う。本書のタイトル「12人」は12編の意味であり、同タイトルのエピソードがあるわけではない。