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愛犬を見送った話

15年一緒にいた愛犬が亡くなった。
ミニチュアダックスフンド、16歳の女の子だ。
私は妹のような気持ちで接していた。  
寂しさで泣き崩れたが、まだやる事があった。

お見送りだ。

この愛犬、我が家にとって始めてのペットだったので、お見送り方法がわからなかった。

結果としては、亡くなった翌日の夜に火葬を行ったがそれまでの流れについて書きたいと思う。

16歳と高齢で、夏にはかなり弱っていた。最期は肺炎で入院し、入院から2日後、病院から電話を受けたが仕事で気付けず、こちらから折り返した時には亡くなった報告だった。

「迎えに来て下さい」

私は歯を食いしばりながら「はい」と応えた。

年齢的にもう一緒にいれる時間が長くない事は覚悟してたが、なんとなく自分の中では勝手に寝てると思ったら起きなくて、といった感じでお家で最期を迎えるイメージだったので、病院で、というのは申し訳ない気持ちだった。

病院で冷たくなった愛犬と再開し、先生から治療や最期の様子の説明を受けた。先生に「何か聞きたい事はありますか?」と聞かれて私は「慣れてる人の方が少ないとは思うんですが、お見送りってどうするんですか?」と聞いた。

先生は「一番多いのは火葬です」と教えてくれた。
その後、会計を済まして受付のスタッフにも聞いてみた。

「葬儀場ってどこがいいんですか?」

いくら、高齢だったとはいえ、生きているうちに亡くなった時の事を考えている人は少ないだろう。私も何も考えていなかった。ペット用の葬儀場なんてこれまで1度も足を踏み入れた事が無い。

受付のスタッフに教えてもらった葬儀場は病院と提携ではないが、病院から近く、個人的に利用して良かった、との話だった。そういえば、看板は見たことあるな、と思った。

火葬か、人間と一緒だな。

そんな事をぼんやりと考えたり、声を上げて泣いたりしながら帰宅した。

無言の帰宅となった愛犬をいつも寝ていたマットの上に寝かせ、家族と会議を行った。

調べると、住んでいる地域のクリーンセンターでも引き受けているようだが流石に味気ないというか寂しいので、教えてもらった葬儀場のホームページを見てみた。

お見送り方法にも種類があった。しっかりとお別れのセレモニーを行うプランなどもあったが、感染症対策で家族3人までしか入れない中で行うには仰々しい気がして、比較的シンプルなプランでお願いした。

予約はネットから行えたので、気が楽だった。1時間単位で予約が取れて、私が選んたプランでは2時間程度かかるようだ。

翌日、午前中は予約が開いていなかったので、予約は夜にした。予約の入力はスマホから2分くらいで完了した。

また、遺骨をどうするか? という問題もあった。その葬儀場では、納骨堂や合同墓地もあったが、周りの犬と接し方がわからずビクビクしていた愛犬を思い出すと納骨堂や合同墓地も違うかな? と思い、自宅に持ち帰る事にした。

ホームページにはペット用仏壇や遺骨カプセル、位牌なども紹介されていた。現物を見てから、と思いつつ、家族と遺骨カプセルとクリスタルの位牌は検討しよう。という話になっていた。

翌日、切ないながらも冷たくなった愛犬の頭を撫でて「おはよう」と挨拶をした。この姿に「おはよう」を言うのがこれが最後だ。

遺体が傷まないよう、愛用のマットと包んでいたタオルの間にアイスノンを敷いて仕事へ向かった。

その日、上司や同僚に事情を説明し少し早く仕事を上がらせてもらう事にしていた。外出の予定もなく、デスクワークだが手に力が入らない。キーワードですら重く感じる。頭も働かない。休みにすれば良かった。

夕方、仕事を切り上げ、帰宅した。

人数制限上お見送りに参加できない、姉と姉の子供たちが最期の挨拶の為に家にやってきた。

姉が結婚前に飼い始めたし、しょちゅう実家に来ていたので姉も可愛がってくれていたし、子供たちより犬の方が先輩だった。突然現れた不思議な生き物に犬も最初は驚いていたが、仲良くしてくれていた。小学生になる上の子は「どうするの?」「焼いて骨にするんだよ」と伝えると寂しそうにしていた。下の子は気づくとお菓子を食べていたので、子供とはいえ薄情では? と思っていたが、帰り際に「最後になでなでしてバイバイするね」と自分から言ってきたので、これが最後のお別れだという事は子供なりにわかっていたようだ。

お見送りに参加できない、家族に見送られ、葬儀場へ向かった。

受付を済ますと、犬を預け、支度を行う。その間、待合室で待機する。 準備ができると声をかけられ、待合室から別室へ移動する。そこでは、犬が天国に行ける準備を行った。まず、お顔などをきれいにして、棺の役割をするカゴへ移動させる。その後、三途の川を渡る為のお金、護身刀、お弁当とメッセージを渡して、最後にお花も入れた。

以前、参列した親族のお葬式とほぼ一緒だな、と思った。

その間、スタッフは思い出話を振ってくれたり、葬儀場のスタッフというよりペットを愛する者同士として接してくれたのが温かく、嬉しかった。
流石に、火葬の扉が閉められた時は「待って」と止めたくなったが、その時を遅らせただけでも、愛犬が戻ってくる訳でない。
お焼香をして、待ち時間は再び待合室に戻った。待合室では葬儀場の看板猫が自由に動き回っていた。

待っている間に、展示されていた仏壇や位牌などのサンプルを確認した。
数種類ある遺骨カプセルを確認し、位牌も決めた。人間の位牌を模したタイプもあったが、クリスタルタイプの可愛いものにした。

しばらくして、スタッフに声に声をかけられ、次に見た愛犬はもう骨だけになっていた。ただ、高齢という事もあり骨もほとんど残らないのでは? と思っていたが、思っていたより骨が残っていた。偉いぞ。丈夫だったんだね。

その後、スタッフが骨を別の台に移してくれた。頭から足までどこの骨なのかわかるように並べてあった。骨壷に骨を移す前に、まず遺骨カプセルに入れる骨を選ばせてもらった。先に選べば、どこの骨かわかるから、とスタッフが教えてくれた。

私は、尻尾の先の骨と前歯、足の爪、指を選んだ。

骨は小さく、掴みにくいので箸は使わず、素手で行う事が多いと言われたので、1つずつ骨壷に移した。足元から入れて、最後に頭を入れた。

骨壷を袋に入れて、ずっと使っていた首輪を掛ける。

これで、愛犬のお見送りが終わった。

家に戻って、まだ犬のスペースをどうするか決めていないで、一先ず仏壇の中に一緒にいれもらう事にした。

さて、先にお見送りを済ましたが、まだやる事がある。役所へ連絡と、保険の申請と解約の相談。通院している病院が休みの日に体調を崩したので、通院している病院とは別の救急病院に連れて行ったので、お世話になった病院に連絡しなければ。

まだやる事は全部済んでないけど、 でも、もう犬のいない生活が始まってしまった。

正直、めちゃくちゃ寂しい、朝や夜の挨拶ができないのも、カチャカチャと爪の音がしないのも、ぬくもりが無いのも。

それでも、わかって飼ったはずだ。自分より犬の方が先に亡くなる可能性が遥かに高い事を。

今ペットを飼っている人は生きているうちに、亡くなった時の準備はしないだろうけど、自分の住んでいる地域でペット用の火葬場があるかどうか、それくらいは確認しておいても良いのかもしれない。ペットが亡くなると、自分が覚悟していた以上に頭が働かなかった。

寂しいけど、ちゃんとお見送りができた事は良かった。

しばらくはロスが続きそうだが、笑ってる私と悲しんでる私、愛犬がどっちが好きだったか考えると。笑っている私だと思う。だって、その方が寄って来たから。

いっぱい笑って、犬が向こうで「あの人が私の家族だったんだよ!」そんな自慢できるような人間になるよ。


※私がお世話になったのは「ペット葬儀・火葬 しおん」さんです。
ありがとうございました。
https://www.p-shion.jp/

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