温泉からサメが出て人を襲う映画を見た。つまり『温泉シャーク』の感想
映画鑑賞前の駄文
きっかけはTwitterで見かけたとある呟きだった。
なんだか「シャーク」という鳴き声のサメが出る映画があるという。
それどころか「シャーッシャッシャッシャ」と笑うと聞いて、ディープではないけれどサメ映画というジャンルを好きな私は「これは見に行きたいやつだ」と思った。
え、サメって笑うん?
とか、そんなことを考えてはいけない。そう、だってくだんの映画は要するにまあいわゆる『サメ映画』に属するものだから。
サメ映画に出てくるサメに、常識的なサメの生態を求めてはいけない。
サメ映画のサメは、とにかく獰猛だし、桁外れにでかいのはいるし、とんでもなく賢いし、幽霊にもなるし、トルネードにだってなる。
ついこの間に見た映画では、セーヌ川で古代のサメが人間を襲っていたし。あれもサメ映画として良かったという話は置いておいて、要するに「あ、これは期待のサメ映画が出てきたな」という興味から始まった。
興味を持って検索してみると、出るわ出るわ、『温泉シャーク』の謎のワード。なんだよマッチョって。犬は死なないらしいが人間は死ぬそうだ。
タイトルからして温泉に出るサメというのは確定だろうけど、よくよく調べていくと、何やら舞台が熱海だと書かれている。
熱海には毎年家族で旅行をしているため、なんだか浅からぬ縁のようなものを感じた。知っている場所が映画に出て来るのって、ちょっと親近感が湧いたりするものだ。予告見たら思いっきり熱海のビーチだったし。
そんなこんなで機会があれば見てみようと思いつつ、一週間ほどが過ぎていった。
最近、諸事情により、自分のために週末の時間をがっつり使うことがなかった。自分の中での心の余裕がなかったというか。
だから、見たいという気持ちはあっても、もしかするとこのままやり過ごしてしまうかもしれないという予感もうっすらとあった。
でも、きっかけって些細なことだったり、自分の僅かな気持ちの変化で訪れるものなんだなというか。
先々週、たまたま朝から映画を観に行く機会を得て、その勢いで午後も家に帰らずに遊んじゃおうかなという気持ちが湧いた。
心が決まると行動は早い。さっそく最寄りで『温泉シャーク』を上映している映画館を探してみる。
上映館数はそんなに多くないし、1日に1回上映の映画館もある。そんな中でここなら! 時間的にも行ける! という映画館を見つけたことでチケットの予約をし、さくさくと電車を乗り継いだ。
一つ驚いたのはチケットの売れ方。休日の日中とはいえ、どちらかといえばローカルな映画館の1日1回の上映で、そこまで混み合うとは思っていなかった。しかし予想に反してサイトを開いた段階で6割が埋まっていた。
そして、あれよあれよと7割が埋まり、8割、9割と埋まっていく。なかなかに見ない光景だった。
SNS効果というのは凄まじいもんだなぁと思いながら、炎天下の電車を乗り継ぎお目当ての映画館へ。時間は上映の15分前ぐらいだったかと思う。
私は面白い映画・気に入った映画を見た時はパンフレットを必ず買うことにしている。
だから、見終わってから面白かったらパンフは買おうと思ってまずは劇場へ入ることを優先した。
これだけは、この日の唯一の判断ミスだった。これは後から分かること。
本編の感想
ダラダラと書いてしまったが、ここからが本編です。この映画で「ネタバレ」の概念をどこまで持って良いのかと思いつつ、それなりに内容に触れていくので、ネタバレせずに見たいと思っている方は何も読まずに公式さんのSNSすら見ずに、映画館へ行ってください。
まずは予告が流れるのだけど、これは映画館によるのかと思いますが、「サメ映画」というジャンルを見ている人はホラーもいけるやろ、というがっつりホラー映画の予告が流れる。
他の映画館で見た時は(実は今の段階で3回見た)ホラーの予告はなかったけれど、『温泉シャーク』を見たいだけでホラーが苦手な人は「ホラー映画の予告が流れる場合もある」を認識しておくと、予告だけ目を閉じてるとかできるかも。
そしていよいよ映画の開幕。
いやね、最初の字幕から面白いんですよ。「東洋のモナコ 暑海市」。
字幕の書体とかさ、特撮好きからするとそれだけで面白すぎるし、「東洋のモナコ」で出てくるあの馴染みのある熱海市のビーチ。あ、これたぶん全力で振りかぶってくるぞっていうのが分かる初手。
からの、女性が海へ落ちてからの、サメ。
そしてクズの男がひゃあひゃあしている中で、出てくるマッチョ。
何の説明もなく出てくる、マッチョ。
もうこの時点で面白い。
私の両隣はどちらも単独で映画を見にこられた観客の方だったのですが、右隣の方がかなり笑い上戸の方だったようで、初っ端から我慢できずに声出して笑っていました。
映画の種類によっては、あまり声を出されるのって心地の良いものではない時がある。しかしこの『温泉シャーク』に関しては、面白いと思ったところで笑うのは正解の見方だと私は思う。
映画館の観客の一体感というか。みんなが面白そうに笑っているのが、さらに笑いを誘う。それがまた面白い。
これは経験した人じゃないとわからないかもしれない。
そして不穏な温泉パイプ。
温泉に浸かる美女。
月が黒い雲に覆われ、温泉から飛び出るサメからの、タイトルコール。
温泉からサメが出てくる以外の説明がないまま進む進む。
振り落とされないようにしがみつきながらも「なんで?」のツッコミと笑いが波状攻撃で降り注ぐ。
いやもうね。テンポ最高ですかよ。
そして粒揃いの登場人物たち。マッチョ含めキャラクターの立ちっぷりよ。
不要な説明は一切ないけれど、どんな性格で、この映画で何をすべき人なのか。それが自然と入ってくる。これは監督さんが非常にお上手な方だというのと、役者さんたちの素晴らしいところだと感じた。
最初は主人公かと思ったらヒロインポジだった署長。定年後に小説家とか漫画家とかYouTuberとか、小学生かよっていう将来の夢を持つ署長よ。
個人的に「ノックくらいしろ! 俺が思春期だったらどうするんだ」っていうセリフがとても好き。
温泉シャークが市長を襲うところで助けに入る署長よ。『温泉シャーク』っていうタイトルなのにメインキャラの中で唯一入浴シーンがある署長よ。
どこか一つ一つの動作が大ぶりな感じがするのに不自然じゃなく、この映画のケレン味を良い意味で一層際立たせてくれた。
万巻市長も最高でしたね。最初はきっと初っ端からサメに食われる被害者になるんだろうなぁと思っていたら、まさかの最後は温泉シャークを退治した功労者にまでなる最終ヒーロー市長。
どこか特撮のヒーローに出てきそうな雰囲気だなぁと思っていたら、本当にヒーローになったのは面白かった。
ヘタレ市長のままで終わらんかったのは、パッパの帝王学のおかげか、巨勢さんの助言のおかげか、署長夫人のビンタか、はたまたマッチョのチョップのおかげなのか。
上記の全部なのかなぁとも。
この映画、キャラの設定に無駄がないんですよね。とんでもB級サメ映画ということは否定しないんですけれど、「なんでやねん!」がたくさんあるのだけれど、それでも無駄と説明不足が極力省かれていた。
そして巨勢さんも良かった。滑舌と発声が小気味良い。
どんな時でも研究対象に夢中で、明るいキャラクター。温泉シャークに対する一番の理解者であり、暑海市民を助ける手段を講じた立役者。
しかし彼女も開幕から、自分の上司である教授の死体の歯形を見て大興奮するとか、キャラクターが立ちすぎている。ヒロインポジかと思っていたら、彼女はまさかのオタクポジ。いやぁいいですね。
個人的に好きなシーンは、温泉シャークが市民を襲い始めた時に署長たちと一緒に警察署を出ていくシーン。走り方にウキウキが出ているというか。ドリフみたいな走り方。
こういうシーン一つ一つで笑わせてくる。本当に良い映画です。
一人一人感想を言っていくといつまでも終わらなくなってしまうので、あとは彼だけは!
そう、マッチョ。
いやもう、これさあ。卑怯だってっていうくらいにマッチョ持っていくんですよ。
マッチョについてはもうね、語るよりも「見てくれ!」っていうのが一番なんですよ。
サメ映画を見に来たはずなのに、終わった後の印象が「マッチョ」になるくらいにはマッチョ。なんでなんだよ!っていうくらいマッチョ。
マッチョのターンになると語彙力がなくなるのは圧倒的筋肉のせいだと思いたい。サメ映画にマッチョはつきもの。多くのサメ映画の相手はたしかにマッチョが務めてきた。
しかしね、ああいうマッチョの使い方をする映画、私は初めて見ましたよ。
映画が終わった後に、出口に向かう誰かが「結局、最後は筋肉が解決するんだな」って言っていたのでまた笑った。
映画としてとても面白く、映画館で2000円近く出して見て損はなかったな。てかもう3回見ちゃったし。
どんなに面白い映画でも、開幕から笑いが堪えられず、最初から最後までひいひい笑が止まらず、笑いすぎて涙が出て、なぜかエンドロールのテロップでも爆笑できるような映画ってなかなかない。
それを体験できる映画だった。
映画が終わった時に、笑いすぎて涙が止まらないって人生初のことかもしれん。いやあ人生、どんな体験するかわからないものです。
セリフ一つとっても上手いなぁと思っちゃうし、たぶん特撮や「シン・ゴジラ」とか好きな人ならニヤリとする演出もあった。
こういう若い意欲的な才能は、どんどん世に出てきて評価されてほしい。
予算のたくさんつくビックタイトル映画も好きですが、それだけじゃないのが映画の良いところ。
あと、前述したパンフですが、初回に見た後に絶対に入手しようと売店へ行ったところ、私の3人ほど前の方を最後に完売となって涙を飲んだので、もしこれから見に行かれる方でパンフ販売していたら、映画は始まる前に買っておいたほうが良いです。
見終わった後にみんなしてパンフに並ぶことになる。これは本当に。
私は2回目に池袋で見た際に購入できたので、まだ販売している映画館もあるかと思います。ちょっとお高めなパンフではあるけれど、温泉シャークの温泉マークが箔押しになっていたり、ギミック凝っていたり、読み応えのあるパンフなので買っても損はないかと。
近々、『温泉シャーク』の聖地となった熱海へ海水浴へ行ってくるので、かの映画に想いを馳せながら、温泉と海を楽しんできたいと思います。
最後に、本当にサメが「シャーク」って鳴くし、「シャーッシャッシャッシャ」って笑ってた。
すごい映画を見てしまったな。
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