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人の心を変えるには自分が変わるしかない

(モブサイコ100・3期6話までのネタバレ含みます)

 
人気アニメ「モブサイコ100」の3期が放送中。
「チェンソーマン」や「うる星やつら」など人気作品が多い今期は、話題に上がることが少ない印象だが、安定の面白さ。
 
ちなみにチェンソーマンの脚本を書いている瀬古浩司氏は、モブサイコでも1期から脚本・シリーズ構成に関わっており、3期でもシリーズ構成にクレジットされている。


 
3期は、OPから少し仄暗い雰囲気が感じられ、モブの心に大きな影が現れる予感がしていた。それが6話までで描かれたカルト教団「サイコヘルメット教」との対立である。
 
もとは宗教団体「笑」の教祖にエクボが取り憑いていたのをモブが祓ったことで、心の拠り所を無くした信者たちが作ったのが「サイコヘルメット教」だった。教祖不在ながら活動的で、モブのことを探す動きもあったが、モブ自身は「みんなで集まって何かをしたい人達」程度の認識で、関わろうとはしていなかった。
 
しかし弟の律や街の人々が少しずつおかしくなっていくのに気づいたモブと霊幻は、それが洗脳だと気づき、打開策を探す。だがやがて、遂には霊幻も洗脳されてしまうのだった。
 
人の心を奪うこと。
そのことがモブの逆鱗に触れ、少しずつ怒りのパーセンテージは上がっていく。
 
そして、それを行っていたのがエクボだとわかった時のモブは、怒りと悲しみが混ざったような声だった。
 
 
もともとモブは、幼いころは自分に超能力があることを「特別なこと」と感じていた。
しかし、幼馴染で憧れのツボミちゃんに犬を浮かせて見せても、彼女の心を掴むことは出来なかった。そのことから、超能力という「権威」を持っていても人の心は動かないのだと実感しながら生きてきた。
 
力だけで集めた人たちに囲まれていても、虚しいだけであることをモブは知っているのだ。
 
 
小学5年生の時、後に師匠となる霊幻を訪れると、「超能力もただの個性。いい奴になれ」と教えられる。その言葉を信じ、肉体改造部で筋トレをしたりマラソン大会で諦めなかったことで、誰かの心を動かしたり、誰かに助けてもらったりしてきた。
 
 
変わろうと努力したから出会えた部活の仲間や友達は、モブの毎日を豊かにしてくれている。
だからモブは、人の心を操ろうとする人を、憐れんでしまうのだろう。
 
自分が変わることで周りが変わることを、1期から2期までのモブの努力を見ていた私たちは知っている。エクボを許せない気持ちも痛いほどわかる。

 
モブは、エクボを止められるのは自分しかいないとわかっていた。洗脳だと認識しながらも、霊幻や花沢くんが敵対する形になって、モブが間違っているかのような言い方で止めてくるのは、どれほど孤独だっただろう。

街でただ一人になってしまっても立ち向かおうとするモブの勇気に、涙せずにはいられなかった。
 
エクボとの闘いは、モブの力を奪い強力になったエクボに苦戦したものの、最終的にはモブの勝利とも言える展開になる。モブの誠実さに、エクボは負けたのだ。
 
エクボの最大の敗因は「洗脳」で人の心を動かしていしまったことだ。
モブは、エクボが目立ったり、教祖になったり、神になったりするのが夢だと知っていた。
モブを巻き込まず、人の心を奪わないやり方をしていれば、きっとモブはエクボを心から応援して、尊敬していたのではないだろうか。
 

モブを「茂夫」と本名で呼ぶ数少ない友人は、モブの人生、そして私たちにとっても忘れられない存在になるだろう。

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