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連載小説 星のクラフト 13章 #2

 全員が食堂に集まった。インディチエムはローモンドになついたのか、肩に乗って現れ、さきほど穀類を突っついていた台に移動した。
「自分でも似てるなあと思うだろう?」
 クラビスはランとローランの顔を見比べた。
「ほんとだ、そっくり」
 ローモンドは目を見開いて二人の顔を見比べ、何度もうなずいた。
「そうかしら」
 ローランは首を傾げた。
「自分ではよくわからないね」
 ランも浮かない表情をしている。
「きっと、二人とも自分の顔にそれほど興味がないのよ」
「私、ローモンドとそっくりだと思っていたのに」
 ローランはランにひとつの遠慮もせずに不満を言う。
「確かにローモンドとも似ているけど、ローモンドとランはそれほど似ていない」
 クラビスは三人の顔を順番に見て、「でも、みんな同じタイプの顔つきともいえるのかもしれない」最後に着地点を見出した。
 実際、ローランとランは背格好もほとんど同じで、声もそっくりだった。もしも双子だと言っても誰も反論しないだろう。
「ラン、ところで、どうしてここへ?」
 クラビスはようやく大事な質問をした。
「全ての部品製作員をこの次元に戻すことにした。家族も」
「それはまた大それたことを思い付いたね
「今日の朝、ホテルの集会室に全員が集められて、いよいよ新しい星を建設する時が来たと司令長官が言ってね。家族たちは別便で次の場所へと送り届けられることになったものだから、ナツが嫌だと言い始めた。0次元から別便で21次元に来た家族のことを聞いただろう? 違和感があると言っている。情報だけ持ち込んでセカンドタイプを作ったんじゃないかと。ナツの家族もいよいよそんなことになるんじゃないかと考え、ナツが戻りたいと言い始めたのさ」
「どうしてそれが全員に?」
「ナツがそうしたいと。そもそも契約の段階では聞かされていなかったことが多いし、全員がこちらに戻るのでなければ、僕は責任を取って次の場所へ同行するしかない。それで、ナツとしては全員戻すと考えたのだろう。僕も集会室に集められた時の司令長官の様子からすると、ここから先は司令長官に相談しても話が通じそうにない気がした。人が変わったみたいにカリスマ的だった。だから、上部には黙って全員を戻そうかと」
「それはまた大所帯になりますよ」
 クラビスはここに戻った後、その人々をどうするかまでを考えると、かなり困難だろうと考えた。
「僕も無理だと考えたが、ナツはどうしてもやると言うし、もう決断したからには、迷わずに遂行努力を続けようと思う」
「期限は?」
「一週間」
 ランが言うと、三人は驚きの声を上げた。
「それは短すぎる」
 クラビスは首を横に振った。
「この辺りには地球人がいないの。私たちは食料などはリンクしている星から受け取っているのよ。他の地域がどうなっているかはまだ調査していない。今21次元とやらに居る人たちのリンクしている星を捨てて、ここに戻ってきても、生きていけるかわからないわよ」
 ローランも冷静だった。
「でも、少なくとも、ナツだけは家族を連れて戻るだろう」
「ラン、その場合、君は?」
「他の隊員が次へと進むのなら、僕は次へと向かう。そうするしかない」
 ランはナツと別れるのは寂しいが、自身としては連れている家族がいないから、何も違和感などない。常に、任務のあるところへ向かうしかない。
「それより、21次元に別便で渡ったセカンドタイプかもしれない人たちの、原型はどこにいるのかしら」
 ローモンドが腕組みをしてインディチエムを見た。インディチエムは小さく鳴き声を上げ、羽根を羽ばたかせて低い位置で浮かぶように飛び、またすぐに台の上に止まった。
「ちなみに、クラビス、君は21次元ではお尋ね者扱いになっている」
 ランは率直に言った。
「どうして?」
「ダウンサイジングし箱詰めにしていたものが開封されたんだよ。リオの鍵が作り直された。そして、三つのオブジェがないことに司令部が気付いた。それを作ったのがクラビスだとわかり、さらに、クラビスの姿が見当たらないから怪しまれている」
「じゃあ、クラビスはここに居て、セカンドタイプにされた人の原型探しでもしたらどう?」
 ローモンドが腕組みをしたままで言うと、再び、インディチエムが小さく鳴き声を上げた。賛同したように聞こえる。
「ランが21次元に戻り、違和感を感じている人たちがこちらで住んでいた場所を調べて、そしてこちらに戻ってきて、直接行ってみたらどうかしら。本当に原型はいなくなっているかどうかを調べる」
 ローランが提案した。
「なるほどね」
 ランはいい案だと思った。「何はともあれ、すぐにそれをしよう。時間がない。すぐに戻る」
 すぐさまランは三人に軽く手を振って食堂を出て、船体室の階段に例の電灯の光を当てて視覚化し、一歩ずつ上っていった。振り返ると、船体室に三人も入ってきて、ランの方に向かって手を振っていた。

つづく。

#星のクラフト
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