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【毎週ショートショート】題:助手席の異世界転生
歩道を歩いているQを見つけた時、時計は4時10分を示していた。
――マジ?
もっと目を凝らして確かめたかったが、無情にも信号は赤から青に変わった。ぐずぐずしていると、後続車がクラクションを鳴らす。ここは交差点のど真ん中。深夜でも車は連なっている。
仕方なくアクセルを踏んだ。
Qなのか? ミラーには映らないけど。
――それにしても、同じ時刻だ。
時計を見て、ぞわりと鳥肌が立つ。
あの日、Qはここで突然助手席から消えたのだ。バッグだけを残して、跡形もなく。
「どうかしたの」
助手席にいるZが私を覗き込んだ。
「いや」
Zとのデート中に元恋人の話をするわけにはいかない。それもあの日、同じ時刻に、その助手席に座っていた元恋人が消えただなんて。
「よかったよね、映画」
Zは話の続きを始めた。「最後の台詞。『ただいま』が特に」
「そんなラストだった?」
私はちらりと助手席に目をやり、思わずアッと声を上げた。『お、おかえり』
了。
410字
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