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トンと過ごした短い夏

大学の夏休み、1ヶ月くらい親父の働いていた
志賀高原のホテルで働いたことがあった
もう20年も前のこと
周りにコンビニなどはなくジャンプを買いに
町まで行くにも原付で30分くらいと不便

朝早くバイキングの準備をして片付けたり
和室の布団を畳んだり
夕食時にビールや日本酒をテーブルに届けたり
親父と一緒にバーをあけてみたり

そんな生活の中での楽しみは、昼間の散歩
付き合ってくれるのはボストンテリアの雌犬
名前は『トン』とにかくパワフルで元気
冬はゲレンデとして利用される
緑のゲレンデを一緒に登って
草の上で一緒に昼寝をしたり
カモシカに遭遇して二人ともビビって
しばらく動けなくなったり
猿のウンチをかじった後に顔を舐められたり

元気なトンは、しばしば脱走することがある
そんな時は、なんとスピーカーで高原内に
迷子犬の放送が流される(さすが田舎だな)
近くのホテルに探しに行くと
繋がれた犬に睨まれて動けなくなっていた
「トン!」と呼び掛けると、走って寄ってきて
必死に原付に乗ってきて甘えてきた
これが今までの人生で唯一の原付二人乗り

トンは親父のことが好きすぎるようで
いつも寝るのは親父の部屋
だから親父の部屋はトンの毛でチクチクする
ブルドッグとボストンテリアって似てるけど
ボストンテリアの方がシュッとしてるのかな?

のちにトンはお母さんになった
耳の聞こえない一匹の子犬は親父が育てた
二匹とも志賀高原で過ごし人生を終えた

大自然の中でトンと過ごした時間を
ときどき思い出す
都会と違った冷たい風が吹いた夏
道路に寝ころんで流れ星を数えた夏
おてんば犬と過ごした短い夏

またトンに会いたいな

おしまい

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