ルオランとルーメイ

双子の姉妹の気持ちは分からないけれど、普通の姉妹としての感情ならば少し理解出来る。

３歳年下の妹が居る。３人兄妹の真ん中のわたしは姉の気持ちと妹の気持ちを持ち合わせている。わたしにとって妹は何でも手に入れる事の出来る愛情を独り占めに出来る末っ子。一番小さな末っ子は何処に行っても可愛がられていると感じていた。そして一番上の兄は長男で唯一の男の子だから大事にされている。どんな時でも兄が一番だった。そしてわたしは真ん中のスレっからし(笑)兄でさえ可愛がるのは末っ子の妹だから…多分幼い頃からわたしは兄妹の中でもチョッと変わっている扱いされて素直に甘えることが苦手な子どもだった。
ところが妹にしてみれば、最初の女の子だから何でもお姉ちゃんは買って貰える。なんでもお姉ちゃんのお下がりばかり…だと思っていたらしい。(笑)確かにそれに付いては否定はしない。飽きっぽいわたしの陰で妹は習いモノを出来なかった！と言われた事があるが母は兄妹差別無く習い事をしたいと言った事を習わせてくれたと感謝している。

一卵性双生児のルオランとルーメイであれば年齢差のある姉妹以上にそんな感情を持て余していたのでは無いだろうか？何でも共有したがる妹のルーメイに対して自分のモノだと自覚して持ちたがる、個人を主張するルオラン。それはそのまま姉妹の性格だと思います。わたしは女の子１人の時期があって妹に対してお姉ちゃん風を吹かしていたかも知れません。双子のルオランがお姉ちゃんだから…と言われて育たなかったのでしょうか？それともそういう比較は日本独自のモノでしようか？同い年なのにお姉ちゃん…不思議な感情ではないでしょうか？甘え上手な妹に要領の良さを見ていたのでは無いかと思います。そんな感情が嫉妬心となり比較する必要もない事を比較してしまう。そんな姉妹間の感情が原点では無 いのかと思います。
最初は大人を騙して喜んでいるイタズラだった。それが入 れ替わる中でお互いに成りすまし合ううちに、知らず知らずに姉妹のボーダーラインを超えてしまっていたのではないのでしょうか？そのどちらか片方からの過剰な浸食が心に影を落としていく…

いつの間にか距離の離れてしまったままに育っていきその溝はますます深まるばかりだった。表面上はなんら変わらない姉妹のままだったから。姉の興味を持つものには妹も興味を持ち、欲しがるものと同じものが欲しかった。常に同じで在りたかったのでは無いのだろうか？その容姿と同じ様に全てが同じことが平穏だった。姉にとっては苦痛であったものが、妹にとっては悦びであったのだろう。同じ事で満たされていた想いが姉妹の距離を離していたとは思ってもいなかった。

お互いのことは何でも話して知っている…そんなつもりだったのかもしれない。だから同じ様に経験したように勘違いが生まれていく。姉が話してくれていない事があるとは思いもしていなかったのだろう。そんな背景が事故で片割れを失いバランスを取れなくなってしまった。おそらく事故の衝撃で心理的に記憶の混同が起こり自分の記憶と相手の記憶の違いが明確にならなくなってしまった。自分が誰なのか？と常に抱えていた疑問に囚われて安定を失ってしまった。自分だけが助かったという罪悪感に苛まれながら生きて行かなければならない。

あの事故で生き残ったのは間違いなく『ルーメイ』であったのではないだろうか？人一倍思い込みの激しい彼女であるから日常的に不安な心理がどちらでも無いかのような言動を招いていたのでは…
そして良と過ごすうちに、この想いが自分のものでは無いことに気付いたのでは？だからあのモーリシャスへ戻ってあそこからやり直そうとしたのかもしれない。あのクルーズ船に乗る前からやり直そうと。姉の時計を良に返す事で姉を連れて帰って来たつもりなのかもしれない。あの事故の日の蝶は『ルオラン』で彼に別れを告げに来ていた。「ごめんなさい、帰って来れなくて。」と訪れていたのでは…

同じ時間を過ごすうちに愛するルオランでは無いと気付いていた良も、姿形のそっくりであんなに違うように見えた二人が一緒になっていったのだろう。いつしか同情が恋心に変化していたのかもしれない。あの最後からまた始まるのかもしれないし…そのまま消えていくのかもしれない…どちらにとっても過去から現在へたち戻る通過点として必要なことではないだろうか？

原作を読んでいない今は全て仮定で想像です。
かもしれない…なのだろう…ばかりで要望タップリですが(笑)二人の姉妹の心理を想像してみました。お望みの結論ではないと思いますが…数日後には変わっているかもしれません。昨夜また見直した感想文です。

あの日、モーリシャスへ旅に行くことを告げに現れていたのは本当にルオランだったのだろうか？
クローゼットに残されたドレスの謎。ルオランのクローゼットで見掛けたルーメイが同じ服を手に入れていたのか？婚約者が選んだ服なのに同じなのは…同じ服を買ったからなのでは？…そんな疑問が残っている。もしも、ルオランの良に興味を持ってしまっていたら…そんな事を思ってしまった。