記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

『ウルトラマントリガー』全体を通しての感想

はじめに

この記事はトリガー全話感想記事の一部を抜粋したものです。

感想

前作が超高評価だった『ウルトラマンZ』であり、加えて歴代でも評価の高い『ウルトラマンティガ』と比べられてしまうという点で、今作のハードルがとても高いものになってしまったのは事実だ。(後者に関しては自ら背負った枷だが)

今作の抱える問題点がなんだったか? それは何度も言っているが「ドラマパートの描写のあまりの薄さ、雑さ」である。個々の回、個々の場面でパーツとしては光るものはあるのだが、それを貫く縦軸が全く無かった。その筆頭が「スマイルスマイル」であるのは最早言うまでもない。
最終話に、ナースデッセイ内で隊員達が各々の「スマイルスマイル」を披露する場面があった。あれも本来は相当な感動シーンだと思うのだが、大前提の「スマイル」というワードがハリボテなのでもうその時点でアウトなのだ。

それはキャラ描写でもそうで、結局しっかりと人となりが描かれたのはケンゴ、イグニス、アキト(、ユナ)くらいなものだろう。
最終話でのアキトとケンゴの会話が一番の名シーンと言ったが、それはやはり彼らの関係が綿密に描かれてきたからだ。(結構一足飛びな感じもあったけど)
最初はケンゴを目の敵にしていたのに、彼の言葉を信じ彼を信頼し、一番の相棒となったアキトの様子がこの作品ではずっと描かれてきていた。
そんな下地があるからこそ、彼らの気持ちに共感できるのである。

テッシンもヒマリもキャラあるじゃん! という声があるかもしれないが、キャラ付けされているのと魅力があるのは全く別の問題だ

この問題がどこに起因するものかは分からない。メインライターの力量なのか、スケジュールの都合なのか、感染症による都合なのか、はたまた25話という話数に限界があるのか。この点は次作でしっかりと改善して欲しい。マジで。

逆に特撮パートで言えば、細かい不満はあれど全体を通して高い水準の物を見せてもらえたなと感じる。というか仮に特撮の出来も悪かったら、本当にこの作品自体がゴミカスと化していた。それこそ人形爆破をこの令和時代に観ることが出来たというのは本当に嬉しい。
トリガーは全体的に戦闘パートの尺が長かったという印象もある。それでいてその特撮の質が高かったのだから大したものだ。(その尺の長さのせいでドラマパートが割りを食ったという説もあるのだが)

だからこそ、その描写の薄さが原因で作品に感情移入し切れなかったというのが悔やまれる。

イグニスというキャラは本当に偉大だった。彼に関しては22話の時に褒めちぎったからここでは多くを語らないが、トリガーという作品を支えた功労者である事は間違いない。

各話の中で順位をつけるとしたら
1位:6話『一時間の悪魔』
2位:22話『ラストゲーム』
3位:16話『嗤う滅亡』
4位:9話『あの日の翼』
5位:7話『インター・ユニバース』
特別賞:19話『救世主の資格』
という感じだろうか。あくまでざっくり。

NEW GENERATION TIGAとはなんだったのか

新時代のティガとはなんだったのか。これは「僕は光であり人である。そして闇でもあるんだ」というケンゴの言葉に集約されるのだと思う。「光VS闇」の構図だったティガに対して、「闇も拒絶したりせずに世界中のみんなを笑顔にしたい」という言葉にはまさに新時代を感じさせられる。
もしかすると彼は、春野ムサシや大空大地に近い思想の持ち主なのかもしれない。善も悪も関係なしに、皆が笑顔になれる世界をケンゴは目指したのだろうか。

そう考えると「笑顔」というゴールはとても素敵なものなのだなと考えさせられる。善人でも悪人でも、大人も子供もおねーさんも、宇宙人だって誰だって笑っていいのだ。そしてその笑顔は誰かの力になる。その笑顔の連鎖が世界中を、ひいては宇宙中を幸せにするのではないだろうか。そんな事をふと思った。(だからこそ「笑顔」という言葉を劇中でもっと掘り下げてほしかったのだが)

とはいえこれが作品全体を貫くテーマだったかと言えばそうでもなく、最終話でようやっと描かれただけというのが少し勿体なく感じる。(基本的に害なす怪獣は問答無用で倒すというスタンスだし)

どうしても個人的な評価は高くなりきらないが、その挑戦には敬意を表したいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?