書きたくないけど『大怪獣のあとしまつ』の感想書く
あらすじ
はじめのはじめに
ネタバレはマジで気にせず思いのまま書く。ネタバレすんなやボケカスが、みたいな批判は一切受け付けない。自己責任で読んで。
はじめに
感想を一言にするなら「ヤバい」である。勿論悪い方向に。
先に言っておくと、この映画は「何を期待して観るか」によって評価が大きく分かれる作品だと思う。三木聡ファンなら、彼の独特の世界観が最大限に描かれたこの作品に大満足するのだろう(ホントか?)。
主演を務めた山田涼介のファンなら、彼の好演を十分に堪能することができるだろう。彼は間違いなくイケメンだった。
では怪獣映画のファンだったら? その答は是非SNSで探してみてほしい。
シン・ゴジラという作品
ではかくいう自分は何を期待して映画館に足を運んだのか。正直に言うと、「特に何も期待せず」視聴した。敢えて言うなら、面白いものが観れたら嬉しいな、くらいの感覚だ。
この映画を観るにあたって、『シン・ゴジラ』という作品を思い浮かべる人は相当多いのではないだろうか。それは何故か。『大怪獣のあとしまつ』の予告がどう考えても明らかにシン・ゴジラへのミスリードを意図したとしか思えないような作りになっているからだ。それが大きな悲しみの連鎖を生み出してしまっていることは言うまでもない。
この作品、テーマ設定だけは面白い。「怪獣の死体をどう処理するか」という自称誰も考えたことのない題材を、シン・ゴジラのようなテイストで描かれたらそれはもう傑作間違いない! そう思ってしまった方も多いだろう。
だが実際蓋を開けてでてきたのは、全ての面においてシン・ゴジラの逆を行く、まさにウンコのようなゲロのような、銀杏のような作品だった。
恐らく多くの人の逆鱗に触れているのはその点だと思う。
幸いな事に自分は、そういった事を一切期待していなかったので、特段怒りなどを抱えている訳ではない。(寧ろこの世間の状況が面白くなってきた)
機械仕掛けの神
この『大怪獣のあとしまつ』のジャンルはなんだろうか? それは「シュールコメディ」である。決してそれ以上でも以下でもない。間違っても「本格特撮モノ」だったりはしない。天地がひっくり返ろうともだ。
コメディが先、怪獣が後。怪獣はただの舞台装置でしか無い。(の割に推されてるのは怪獣なんだけど)
そもそもこの作品、開始5分程度で「デウス・エクス・マキナ」という言葉が劇中で登場してしまう。ある種禁忌であるこのワードを、初っ端から登場させている時点でこの作品は
真面目に物語を成立させることを放棄している
のである。それはあの衝撃()のラストシーンを見ても分かるだろう。
ちなみに自分はこの言葉を聞いた時点で色々と察したし、その後はある種達観した気持ちで作品を観ることができた。
一番の問題点
劇中のギャグが全部信じられんくらいつまらないだとか、特に意味もない下ネタが乱発されるだとか、恋愛模様いる? だとかそんな事は最早どうでもいい。(いやどうでもよくは無いけどね)
脚本が明らかにB級作品のそれなのに、それ以外の全てに対して信じられんくらいの予算が注ぎ込まれているのが最大の問題だと思う。
例えば予算を半分どころか1/10くらいにして、CG周りはもっとちゃっちく、俳優もジャニーズなんか使わずに売れかけの若手を採用、限られた劇場数でひっそりと公開されていたとしたら、この作品はもっと好意的に受け入れられていた事だと思う。なんなら意外と評価されていたかもしれない。(いや流石にそれは無いか)
なのに実際は訳分からんくらいの予算が注ぎ込まれ、無駄に見栄えのいいVFXが披露されるし、著名過ぎる俳優陣が大勢登場。挙句の果てにはテレビやSNSで信じられんくらい宣伝をされながら全国の劇場で大々的に公開される始末である。
しかも松竹と東映の共同配給だ。
ここまでハードルを全力で上げておいてあのウンコを見せつけられたら、そりゃあ怒る人がいるのも無理はないと思う。
どう考えても売り出し方、もしくはそもそもの製作意図がおかしい。どこかで絶望的な齟齬がないとこんな作品は生まれないはず。
初日時点で相当話題になっているので、そういう意味では正解と言えるのかもしれないが。
どうすればよかったのか
先程も言ったように、完全にB級映画に徹してしまうのが丸かったのではと思う。
それかもしくは、その潤沢な資金を活かしてちゃんとした特撮怪獣映画を作るべきだったと思う。それこそ全力で『シン・ゴジラ』のような何かを目指しても良かったのではないだろうか。
せっかく切り口自体は良いのだから、丁寧に考証して真面目に作品を作っていれば、結構良いものが出来上がったと思うのだが。(恐らく皆それを期待していたはず)
総評
正直ストーリー辺りに関しても色々と突っ込みたい所はあるのだが、そういうのはもっとガチなオタクの人々に任せておく。先程も言ったように、デウス・エクス・マキナとか言ってる時点で真面目に突っ込むのは野暮なのだから。
恐らくだが、深夜に酒を入れながら友人とギャーギャー言いながら観る分にはそこそこある程度なんとなくは楽しい作品だと思う。恐らく深夜テンション+酒パワーがあればあのクソしょうもなくて意味のわからなかったキノコの下りも笑えるはず。
ただ個人的な話でいうと、ギャグシーンが全体的に受け付けなかったのが辛い。作中でぶっ込まれたギャグのうち、95%くらいはつまらないし滑ってんなーと思った。
ただそういうギャグに対する受け取り方は本当に人それぞれだと思うので、これはあくまでも自分の場合の話。
単純なコメディで言うなら、昨日感想を書いた『決戦は日曜日』の方が遥かに上質だったと思う。まあ人それぞれなんだけど。
ラストシーン
一応これでもウルトラシリーズが好きな人間なので、あのラストについては何か言っておかないといけないだろうか。
作中で露骨に何度もフリがなされていたので、恐らく出るんだろうなとは思っていた。しかしそれと同時に「いや出ないでくれ、流石に出ないよな? な? 壮大なフリからのズッコケであってくれ! 頼む!」と祈っていたのも事実。
これも先程と同様の意見になるが、あんだけ匂わせといて実は河童でした! 川に帰るね! くらいの雑オチか、もしくはそれこそ光の巨人をくっきりはっきり出してしまうかのどちらかが良かったのだと思う。ウノレトラマン! とかさ。
どこぞに配慮した結果のアレが、一番しょーもない。どちらかに振り切ってほしかった。
そもそも「あとしまつ」をするのがデウス・エクス・マキナだったとかいうオチ自体どうなんだとは思う。しかもあの描写、分かる人には一発で分かるけど、分からん人にはさっぱりだろうし。
オチが崩壊してしまっている時点でやっぱり作品としては相当キツいのかなと思う。観客が一番期待していたであろう部分がぶん投げられてしまった訳だから。だからこそ裏切られたという感想を抱く人も多いのだろう。
製作側がここまでハードルを上げておいたくせに、結局ぶん投げるんかい! という憤りは自分も理解できる。『シン・ゴジラ』辺りを想起してるなら尚更だろう。
まとめ
「怪獣映画を期待するからつまらないんだよw」みたいな意見もある程度見たが、何も期待していなくても面白くないものは面白くない。
強いて言うなら、実際に作戦が開始されてからの後半部は割と見れると思う。映像の質は全体的にかなり高めなので。ただクソつまんねぇギャグだけで構成されている前半はマジでしんどかった。地獄だった。自分には全く合わなかった。
あ、あと山田涼介はカッコいいと思った。土屋太鳳は美人だった。
余談
この映画が始まる前に『シン・ウルトラマン』の宣伝が劇場のスクリーンで流れた。映像は既に観たことがあるものだったものの、それでも大画面でのスペシウム光線には正直興奮した。今日イチの興奮だったかもしれない。
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