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Puke



「ギターの弦が切れちまった」


「もう、今夜はやめにしよう」

「あの子はどこ行った?」


「さぁ、どうでもいいじゃない」



「さぁ、今夜も錠剤を飲み込もう」



当たり、外れ、今夜は飛べた、今夜は眠れた

飲み干す、飲み干す、トリスとヒゲのオジサン

吐き出す、吐き出す、また俺は便所に吐き出す

意味もなく吐き出す

必要ないから吐き出す

10月とたそがれの国

ラムはバスタブで溺死

アパートにいる君になんて言えば良いだろう

早送りで枯れ逝くひまわり畑

巻き戻しできないアイ・ラブ・ユー


吐き出す、欲したものを手放す


スライスされた食事時間

クスリをナイフとフォークで丁寧に

痩せ細って痩せ細って通り抜けられない檻から脱獄

世界一簡単な脱獄映画

廃村の隅からグミ1つで

僕は君の鏡になりたい

サランラップ、空室の冷蔵庫、鉛筆とアルミホイル

スプーンが好きな彼氏はもう人間じゃないよ

ケモノになる

ケモノにやる

ケモノとやる

紛れさす、隠す、刺す、メス、ゴダールと女神

それが唯一バスタブまでの一直線の恐怖を紛らわす


とろけ出した12:30 昼か夜か分からない

嘘つきの夜にする?
それとも水溜まりの朝?

砂糖はいくつ入れる?
このティーパックは捨てる?

EからAm、隙だらけの好きだから

クリスマスイブよりクリスタルメス

希望船など空に無い
口を揃えて子供達

遥か遠くのアルペジオ
ホロウボディの中のボーイング

ジキルとハイドの夏、蝉を食べた白痴

用水路の奥には秘密の祠があるらしい

作り上げられた存在しない心霊スポット

ポストの中に届けられるLSD

時々幸せに思うんだ、時々そう思う

時々、不幸に思うんだ、時々、時々

吐き出す、吐き出す、俺は吐き出す

乗り換えの不便な駅のホームで

なるべく綺麗な舞子の膝で

アテンド好きのメガネ男に

膝を立てているニンフォマニアに

混んでいるレジに

サルのフリが出来ないジャンキー達に

ギャンブル依存症の長蛇の列に

燃えている君の髪に

ジヒドロコデインに
デキストロメトルファンに

ビューティフルドリーマーに
怒っている高橋留美子に

最先端のセクサロイドに

それは君、売春婦の幼稚園児

それらとこれからを纏めて
俺は仮止めしたまま吐き出す

喉に引っかかって取れない
骨ごと全て無くなるように

傷ついてしまって
チクチクする喉ごと取れるように

めぐり続ける血の中を

俺の血の中には17の頃からお前の血が混じってる

小便と血が入り交じってる?

ヘロインがあったら君は打つ?

GからC7

水に似た透明な感情

夢の王国、子供の頃に寝ていた部屋

小さくなっていく僕の体

愛は殺人、大きくなっていく君の結晶

竹だけで作られた音楽

壊す、壊さない、壊し出す。

白色が充満したパケを

粉塵爆発寸前の部屋を

色盲の君の世界を

マネキン達の秘密の集会を

ゾンビ達が吊革を溶かす満員電車を

線路に落ちていったのは人間?

それともケモノ?

今夜吐き出す、今夜全ての聖なる鎖を

今夜吐き出す、全ての聖夜の鎖を

俺の墓から盗み出してくれ。

今夜、これを俺の遺書として残す。

俺の墓から盗み出してくれ。

狭いところは生きてるうちだけにしたいから。

鳥葬、風葬、埋葬、火葬に土葬

俺が鳥になっても愛してくれよ

バスタブの中でくたばっても見つけ出してくれよ

見つけ出してくれよ

下水道から

モンゴルの空から、

砂漠の砂の城から

高架下のダンボールから

独裁者達の作った牢屋から

バイト先の本棚の隙間から

数え切れない音の色の合間から

一拍と一拍の間から

見つけ出してくれよ

新しいシステムの先に

古臭い絵画の裏に

アンフェタミン
メタンフェタミンの腹の探り合い

苦し紛れについた嘘と罵るアイツに

頼むから頼むから

盗み出してくれよ俺の遺書を

誰にも見つからないように

燃やしてくれよ俺の遺書を。

吐き出す、黄緑色の物体を

聖骸布と罵りあう新宿を

船出と割れなかった瓶を

ジャジューカとバタフライエフェクト

夜のエンパイア、不吉な影絵

禁断症状のアベマリア

骨と骨の間のジャンヌ・ダルク

闊歩しているウラジオストク

敵対意識のないマントヒヒの群れが
自慰行為を辞められなくなっているらしい

紺碧の霊柩車、壁を越えられない
リアム・ギャラガー

歪みをもっと強くして
リバーブを掛けて
ゲインをフルテンにしてくれ

甘い香水の匂いのするギターに合わせて
俺は流れる

手術台の植え込まれた田園風景

シュールと言い張る将棋士とクイーン

隣に座って
膝の上に置いて
シャンパンを飛ばして

口付けを今夜、無限に続く時間に
垂直に経つ丘の上で

腕の中に君を抱きしめる

あっち側へ突き抜けろ

吹き抜けの天井を掌でなぞりながら

俺は吐き出す。

俺は吐き出す

語るべき千の言葉と捨てるべき全ての言葉を

歌声は憂鬱の中に

歌声は快楽の中に

言葉は存在の中に

言葉は憂鬱の中に

僕の、夢は、シンクロニシティ

吐き出す

吐き出す

吐き出す

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