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「愛色」を集めた幸せの花

今回は以前(6月)に私が書いたものを書き改めたエッセイを載せたいと思います。
花に意味を持たせる「花言葉」というものは、知っているとさらに花を楽しむことができます。そんな「花言葉」について書いたエッセイです。


梅雨の風物詩でもあるアジサイ。そのアジサイの表面を、しとしとと降る雨が濡らす様は神秘的で、心が休まります。そんなアジサイに関して、明治時代を代表する俳人・歌人である正岡子規はこんな句を詠んでいます。

「紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘」 正岡子規

出典:正岡子規

花が薄紫色から濃い紫へと日々変化していく様子から、「人の心も花の色のように移ろいやすいもの」という意味が込められています。たしかにアジサイは日に日に綺麗になっていきますよね。


そんなアジサイの花の名前の由来は、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」から来ているとされています。そして、アジサイの花言葉は様々あり、ポジティブなものだと「辛抱強い愛情」「家族の結びつき」。ネガティブなものだと「移り気」「浮気」と言うものがあります。
アジサイが咲く6月は、世間ではジューンブライドと呼ばれ「6月に結婚した花嫁は幸せになれる」と言われています。このことや花言葉からアジサイは「愛」と強いつながりのある花だと私は思いました。

 「人の心は移ろいやすい」と正岡子規が詠んだように、人の心を真に理解できるのは自分のみです。いくら自分が相手のことを好きだと思っていたとしても、相手の心は「移り気」しているかもしれません。私は過去に付き合っていた彼女に浮気をされていたことがありました。その事実を知ったのは別れてから1年後だったので、その時には怒ることもできませんでした。
ショックでしたし、何よりそのことに気づいていなかった自分に失望しました。浮気されたことがある人は、自分は気づけるはずだと思っていたはずです。私もそうでした。今はもうそのことを引きずっていませんが、信頼とは難しいものだなと考えるようになりました。


「好き」や「愛している」といったささやきは人間の声帯が作り出した音の波長でしかありません。なぜ人はその中に意味を見出そうとしたり、一喜一憂したりするのか。私は前述した経験から、他人に言われた言葉に裏があるのではないかという考えがチラつくようになりました。これがいいことではないのはわかっています。「なぜ素直に受け取れないんだ」と思うことも多々ありますが、信頼していた相手に裏切られるという経験はなかなか払拭できるものではないのです。

しかし、アジサイのもう一方の花言葉のように「辛抱強い愛情」を持って接してくれて、いつかは「家族の結びつき」を得られるような人が私の人生にも現れてくれることを願っています。

アジサイの花は、装飾花と呼ばれ小柄な花が複数集まって形成されています。まるで、結婚式のブーケのようだと私は思います。さまざまな「愛」が集まって作られたブーケのように、アジサイの花も周りの「愛」や「幸せ」を感じ取って咲く天然のブーケなのかもしれません。そんなアジサイは「藍色」だけでなく、周りの愛の色「愛色」を集めた幸せの花であって欲しいと私は願います。

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