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中国の新型ウイルスに関して研究者が取り組む5つの疑問|Nature Newsより【JOCV Day191】

中国の武漢(Wuhan)で発生した新型ウイルスに関する今日までの研究成果と今後の展開について、英国科学誌Natureが1月22日付けのニュースとしてまとめていた。

New China virus: Five questions scientists are asking
中国新型ウイルス:研究者が取り組む5つの疑問(私の意訳です)
Nature NEWS 22 January 2020

新型ウイルスに関するニュースが錯綜する中、この記事に関して簡単にまとめようと思う。

※以下読まれて直ぐにお気付きになるかと思いますが、翻訳に関してはど素人です。正確かつ詳細に読みたい場合はぜひ原文(オープアクセスです)にアクセスしていただけると嬉しいです。

中国の武漢で発生した新型のコロナウイルスだが、既に確認された感染者の数は500以上、死者数は17にのぼっている。

このウイルスの詳細について、とりわけ世界37カ国で774名の犠牲者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)のように大流行する潜在的な危険性があるのか、研究が急ピッチで進められている。

以下、研究者が取り組んでいることを5つの項目で解説している。

1.ウイルスはどのように感染するのか

中国当局は「人と人の間で感染したケースがいくつかある」と発表している。しかしながら、人から人への感染がどれだけ頻繁に生じているかは未だ明らかになっていない。新規感染が確認されていくペースと、それぞれのケースでいつ症状が出始めるのかを調べることで、どれくらい容易に人から人への感染するのか、流行がどれくらい持続しうるのか考察できると、数理疫学者であるFerguson氏がコメントしている。

2.ウイルスの致死性はどの程度か

現時点ではこの新型コロナウイルスの感染者数は500以上、うち死者数は17となっている。2002年から2003年にかけて大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の致死率(感染者に対する死亡者の比率)は11%と見積もられているので、現時点ではSARSほどの致死性は無い。しかしながら現時点で致死性を楽観視するのは尚早過ぎるとFerguson氏は言う。

3.ウイルスはどこから来たのか

中国当局は、この新型ウイルスは未同定の動物由来で、動物や海鮮を売買する武漢の市場で人へ感染したという見解だ。遺伝子配列のデータは、この新型ウイルスがコウモリの間で感染するコロナウイルスに関連し、SARSウイルスやSARSウイルスに近いウイルスとも関連することを示唆している。しかしながら、別の哺乳類がウイルスを仲介している可能性もある。SARSの場合はチベットネコを介して人間に感染した可能性が高い。

4.ウイルスのゲノム配列から何が分かるのか

新型ウイルスの感染者から見つかった19株の新型ウイルスに関して、中国とタイの研究機関がゲノム配列を取得し公開した。この新型ウイルスの研究が始まってわずか2週間でゲノム配列が公開されたのは注目に値すると、進化遺伝学者のBedford氏はコメントしている。またゲノム配列に関する情報が蓄積されていことで、このウイルスが動物から人間に感染しやすいのか、それとも動物から人間への感染はしにくく、大多数は人間から人間への二次感染なのか、などといった感染経路の特定に繋がるとBedford氏はコメントしている。

5.このコロナウイルスの治療薬は開発できるのか

現時点ではSARSや他のコロナウイルスに対して有効な治療薬は無く、感染を防ぐためのワクチンも登録されているものは無い。中国の北京にある国立創薬開発研究所(National Engineering Research Center for the Emergence Drugs)は、ウイルスが細胞を認識して感染するために必要なヒト細胞上の受容体を標的とした治療法を見つけようと研究を進めている。SARSウイルスと今回の新型ウイルスのゲノム配列を比較したところ、いずれのウイルスもヒト細胞上の同じ受容体と結合し得ることを見い出し、1月16日に論文を投稿している。研究チームはSARS流行時に治療法の開発を試みており、新型ウイルスの治療法開発に向けて過去の知見を活用する時が来ている。

以上。


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