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植物紹介|ツルボラン【JOCV Day174】

植物紹介4回目はツルボランを取り上げる。

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アラブ名で"غيصلان"という。カタカナにすると「ガイソラーン」となるだろうか。学術名は"Asphodelus ramosus"と言い、ツルボラン属の一種である。地中海沿岸、北アフリカ、中東に広く生息する。

形態学的に非常に良く似た"Asphodelus aestivus"という種がある。こちらは地中海沿岸の西側、ポルトガルなどに生息しているが、ヨルダンやイスラエルにも生息域が広がっていると言う人もいる。

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冬から春にかけて抽台して花が咲く。高さは60~80 cmくらいに達する。白い花弁が6枚あり、各花弁の中央に紫色の線が入っている。

古くから医療用として使われていたようで、イヌサフランの種子や球根に含まれているコルヒチンという有機化合物に類似した構造を持つ物質が含まれていると言われている。

コルヒチンは抗炎症作用があり痛風の治療薬として流通している一方、下痢や嘔吐などの毒性も示す。誤飲によって死亡した例も報告されている。

植物園にはしばしばネコが訪れてツルボランの匂いを嗅いでいるのだが、大丈夫だろうか。

コルヒチンは植物の染色体の倍化を誘発する作用があり、種無しスイカや新品種の開発に使われるほか、細胞生物学分野での実験でも使われている。実験用試薬を販売しているSigma-Aldrichナカライテスクでも販売されていた。

古くから医療用として使われていた植物については多くの歴史書に記載があるが、実際の有効成分が同定されはじめたのは1800年頃に入ってからである。東洋医学を代表する漢方薬の薬効成分に関して西洋医学のアプローチでの研究も盛んになっている。

中東地域で医療用として使われていた植物についても研究は進んでいる。コーランにも植物についての記載がいくつかあるが、どの種かについては議論が分かれていたり、判っていないものもある。予算やマンパワーなどの理由から現時点で研究対象として扱われていない植物ももちろんあるため、それらの種を保全・継代していくことは大事な機能なのだろう。

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