居飛車クリニック~秋月もみじ様①急戦対32金型四間飛車編~

さっそく結論

今回のテーマは「急戦で32金型四間飛車を攻略する」
この形の急戦は長らく採用していませんが、今見ると若かりし日を思い出して熱いものを感じます。良い。

本譜はこちら

さて、どこから説明したものでしょうか。

結論からお話ししましょう。
①32金型四間飛車は一定の優秀さを持つ戦法です。簡単に攻め潰せる、というわけではないでしょう。
②ただ、本譜のような45歩は若干悪い手です。

①については説明が難しいので最後に簡単に。まずは本譜順から。

基本図について

基本図について

今回の基本図について説明します。

今回の基本図。ここから解説をしていきますね!

基本図は本譜と若干違います。
ごく僅かの違いです。少し気になってしまうかもしれません。
ただ、個人的な持論として、「局面を簡単に良くするためには準備段階で可能な限り最善を尽くすべき」というものを持っています。
(最善は個人の意見です)
無論、最善を尽くすことで秋月さんの棋力帯においてデメリットも生じると考えられます。そのため、ここで出てきたパターンを自分なりにアレンジして使ってください。

基本図への手順について

手順は以下

▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4四歩
▲4八銀 △4二飛 ▲6八玉 △3二銀 ▲5六歩 △4三銀
▲9六歩 △9四歩 ▲5八金右 △6二玉 ▲7八玉 △7二玉
▲3六歩 △8二玉 ▲6八銀 △3二金 ▲5七銀左

基本図までの手順です

本譜との3つの変更点について

・端歩のお突き合い
⇒端歩の突き合いは居飛車有利(過激派)、あと時々▲97角の活用がありますね。

・急戦狙いがバレる前に36歩を突く
⇒「急戦? でも持久戦もありそうだなあ」と思わせて駒組を制約
(本譜も急戦を見て32金を指してるので、32金が一手遅くなる効果あり)

・▲68金の保留
⇒隙があれば▲68金の前に動く。後述する▲79角の活用など

②の△45歩にどう対応するか

△45歩。どの対応でも居飛車+200~+300ほど良いはず

方針分析について

ある戦法に序盤で有利を取りたいとき、重要になることが一つあります。
それは、「ロジックで将棋を指すこと

相手の戦法の特徴・弱点を見抜き、弱点を突くようにして駒を動かすこと。
そして自分の得意な形にしていくこと。
序盤で有利を取るためには常にこの考え方を持ってください。
そうすれば、これから出会う様々な局面に臨機応変に対応できるようになっていくでしょう。

過激な例え話をすると、特定の戦法に対して、
「〇〇はクソ! 何かしら対策があるはず!」という意見には同意しますが、「じゃあなんで、その戦法弱いと思うんですか?」への回答できるかが重要となります。

戦法・局面の良し悪しが分かっても、なぜそうなっているかが分からないと攻め方、方針が立たないからです。

32金型四間飛車+45歩の弱点

・△32金としているため、飛車先に強いが中央や玉の守りが薄くなっています
・攻めには銀を繰り出すしかなく、△44銀では歩交換できずとても重い(理想形は△33角△44銀状態での△55歩からの攻め)
・△45の歩

弱点を挙げようとすると、この三つになるのではないでしょうか。
ではその弱点を、攻略にどう利用していきますか?
(少し考えてみてください)

例えば、

〇△32金としているため、飛車先に強いが中央や玉の守りが薄くなっています
⇒「中央、玉頭などへの集中攻撃」「持久戦により玉の堅さ勝ち」「角交換してバランスの悪さを主張」

〇攻めには銀を繰り出すしかなく、とても重い。
⇒「こちらも持久戦でじっくり堅く組める」「銀の進出を防いで攻めを封じる」

〇△45の歩
⇒「▲37桂や▲46歩などで、銀や桂馬で圧力をかけながら45歩を攻撃の目標にする」「角交換してバランスの悪さを主張」

今回は自分が急戦志向なので、
「持久戦により玉の堅さ勝ち」「中央、玉頭などへの集中攻撃」といったことはできません。

したがって、メインとなる対策は以下の3通り、その組み合わせとなるでしょう。

Ⅰ 角交換してバランスの悪さを主張
Ⅱ 銀の進出を防いで攻めを封じる
Ⅲ ▲37桂や▲46歩などで、銀や桂馬で圧力をかけながら45歩を攻撃の目標にする

Ⅰ 角交換策「▲33角成」

▲33角成が本命でしょうか。

もし△同桂だとすると、
ひとまず▲37桂△44銀▲24歩と一歩交換します。
これで△35歩には▲同歩△同銀に▲34歩が用意でき、相手の仕掛けが封印できます。以後▲66銀と上がりつつ▲24歩△同歩▲34飛車から暴れる順を狙って良いでしょう。(図)
また、△21飛車とゆっくり来るタイプには▲77桂▲68金からKKS対策の地下鉄飛車を狙っていきましょう

この形は弱点の39をカバーして意外とバランスが良いので覚えておきましょう。
△33同桂の時点で34が傷になるのもポイントです

もし△同金だとすると、
▲37桂△44銀▲46歩と先述した45の弱点を攻めます。

相手の△45歩の伸びすぎを利用します
「Ⅲ ▲37桂や▲46歩などで、銀や桂馬で圧力をかけながら45歩を攻撃の目標にする」

△同歩▲同銀△45歩▲55銀△同銀▲同歩
と交換した時に、自分の弱点である39の地点を銀でカバーしているバランスの良さに比べて、相手の形がバランスが悪いという主張が出来ます。
仮に、△72銀と自然に指したとしても、▲24歩△同歩▲31角から攻め倒すことが可能です。

▲31角が激痛。後手はどう応じても悪い
角と銀を持ったらまずこの攻め筋から考えたい

Ⅱ 防御策「▲66銀」
▲66銀は角交換を拒否しながら△の44銀から△55歩を封じる一着です。

この一手で意外に振り飛車側の仕掛けがなくなる

ここから▲37桂や▲37銀から攻めを組みなおしてもいいですし、
▲66銀に△72銀▲37桂△44銀▲79角から、▲24歩と角交換を狙うのもいいかもしれませんね。

①45歩と突かないタイプについてはどう対抗するか

△45歩突きにはデメリットが多くあり、攻略もある程度の方針を示すことが出来ました。しかし、△45歩と突かないタイプの32金型四間飛車にどう対抗していけばよいでしょうか。

32金型四間飛車の方針・弱点分析をすると

〇△32金としているため、飛車先に強いが中央や玉の守りが薄くなっています
⇒「中央、玉頭などへの集中攻撃」「持久戦により玉の堅さ勝ち」「角交換してバランスの悪さを主張」

〇攻めがとても重い。
⇒「こちらも持久戦でじっくり堅く組める」「45歩もしくは銀の進出を防いで攻めを封じる」

といったものがあります。

対策例について

これらの弱点を分析したうえで、実戦の進行や自分の棋風に合わせて対策を洗練させていってください。
秋月さんのような銀を繰り出す棋風なら、5筋の攻めを57銀で止めつつ、48の銀を棒銀に繰り出してもいいですね。

形は違いますが、対策の決定版としてSugarさんの▲34歩打は非常に優秀と感じます。(雁木対策でもよく見られる歩打)

また、自身の棋譜で恐縮ですが(非研究)対策が上手くいった例がこちらです。お役に立てば幸いです。


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