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ラーメンの麺の硬さについて

麺のかたさはいかがなさいますか?
ラーメン屋で聞かれたとき、あなたは困ったことありませんか? 「かため」がいいのか?「普通」なのか?「やわらかめ」なのか?博多ラーメンにいたっては「ハリガネ」「バリカタ」なんてのもある。なんとなくで選んでませんか? ちょっと長いですが、最後まで読んでいただくと麺の硬さ問題が解決できます。
では、一度深く考えてみましょう。
・麺を茹でるとは? みなさん麺を茹でるとき、乾麺や生麺を茹でますよね?なんで茹でてるんですか? それは、主に二つの理由があります。
①麺に、水を入り込ませるため 水分子の動きを活発にすると、短時間で行うことが出来ます。水分子が活発=水温が高いということなので、通常は水を沸騰させながら茹でます。常温の水でも出来なくはないですが、時間がかかります。
②でんぷん分子の相転移をさせるため。 でんぷんには消化の良いαでんぷんと、保存性の高いβでんぷんがあります。茹でる前の麺はβでんぷんの状態です。この状態で食べると消化に悪いのでお腹を壊す可能性があります。高温の水で茹でることにより、αでんぷんに相転移させることが出来ます。 この二つの理由のために麺を茹でているのです。 ・麺のコシって何? この麺、コシがあるね。って言ったことありませんか?果たして、コシって何ですか? いろんな考え方があるのですが、私が考えるコシとは、 麺の外側と内側の食感が違うとき、それをコシと感じている。です。 例えば、噛んだときに麺の表面が柔らかく、そのままの食感で嚙み切れて、咀嚼しても食感が変わらない。この場合、ぐにゃぐにゃな麺だな…と感じます。 一方、噛んだときに麺の表面が柔らかくても、内側が弾力がある、もっちり感があるなど、食感の違いが起こった時に、コシがあるね!と感じます。 表面の食感、歯の入り方は同じなのに、内側の食感の違いでコシがあるかどうかを感じるというのがポイントですね。
さて、弾力性とかもっちり感とか、麺の練り方や伸ばし方など製法による効果ももちろんありますが、基本は小麦の力です。
では、小麦が本来持つ力を存分に発揮させるにはどうするればいいか? それは、麺をしっかり茹でることです。 小麦のでんぷんには「アミロース」と「アミロペクチン」という2種類の成分が含まれています。水が50℃になるとアミロースが水に溶け出し始めます。その抜けた隙間に水が入り込みます。そして水が入ったおかげでアミロペクチンが膨らみます。65℃くらいまで温度が上がると溶け出したアミロースが糊状になる。これがβでんぷんがαでんぷんに変化する糊化という現象になります。そうして小麦の本来の力を引き出すことが出来ます。
・麺がのびるとは何か。 茹でた麺というのは、通常「表面が水分を含み、中心部は水分が少ない状態」です。 外側と内側の食感が違う状態です。ただ、物理的現象として、なるべく平均化された状態に移行しますので、時間の経過とともに麺の中の水分は平均化されます。つまり表面も中心部も同じ水分量になります。食感も均一化されて、コシがないような、ふにゃっとした食感になります。これが麺がのびるということです。 では、麺を硬めに茹でておけば、だんだん柔らかくなってちょうど良くなるんじゃないか?という考えに至りますね。
・茹でるとのびるの違いとは ここまで読まれた方は両者の現象の違いがわかりますよね? 茹でるとは高温の水で茹でて、小麦でんぷんを変化させることです。のびるとは、麺の中で水分の転移が起こり、平均化されることです。 硬めに茹でるとは、表面に水分が入りきっていない状態のままにするということです。αでんぷんが残っているので消化に悪く、人によってはお腹を壊す可能性もあります。
また、アミロースが抜けたあと、表面に水分が入り切っていない状態にあるので、麺の表面はなめらかではなく、ザラッとした状態になりがちです。スープに入れると、麺の表面に水分が入る隙間がまだ残っているので、すぐ表面の食感が変わります。
つまり、麺を硬めに茹でるとは、しっかり茹でる場合と違い、表面の食感も違うし、すぐ食感も変わるし、消化に悪いかもしれないということです。
・麺の硬さの正解は? 麺を美味しくたべる=小麦本来の力を引き出す ということから、麺はしっかり茹でる必要があります。つまり、麺の硬さは「ふつう」もしくは「やわらかめ」にした方が、美味しく食べられることがわかりましたね。
好みと美味しさは違う しかし、ハリガネやバリカタの、あのゴワゴワした食感がたまらないんだよ!そんな声が聞こえてきそうです。人の好みは千差万別。最終的には好きな食べ方で食べるのが一番。
でも麺の美味しさを理解した上で、自分の好みを探すということが大切なのかなと個人的には思ってます。 いつも硬めを頼んでいる方は、たまには柔らかめを頼んでみるのも面白いと思いますよ。

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