湘南電車の残り香
昼下がりの大船駅上りホームで、こんな案内を目にした。“湘南”の名を冠する「湘南新宿ライン」はともかく、北関東の群馬や栃木方面の駅名を行先に掲げて東海道線を走る「上野東京ライン」の電車が全盛の世にあって、“湘南電車”というフレーズには、遠くなりつつあるはずの昭和を、すぐ目の前にあるかのように錯覚させてくれる効用がある。
思えば、隣の藤沢駅には初代“湘南電車”の80系を模した店舗(Newdays)がホーム上に鎮座しているが、それもまたなかなかの存在感だ。歴史を感じさせるわかりやすいピースが、日常の風景の中にきちんとあるのは実に素晴らしいことである。
大正生まれの祖父母は日常会話に使っていた“湘南電車”。そのアイデンティティは、緑とオレンジの湘南色とともに、沿線の暮らしと深いところで結びついた文化遺産なのだと、改めてその価値に敬服する。
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