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山の眺めと、211系電車と

 高尾駅にたたずむ、長野の211系。この電車に乗って、ゴトゴトと「青春18きっぷ」で旅がしたい。

 長野へ。信濃大町へ。中津川へ。飯田へ。幾多の山も川も、そして時には、辰野や塩尻のJR会社境も越えてゆく頼もしい存在。特急列車でなくていい。彼らに身を委ねて、中部山岳地域ならではのダイナミックな車窓を、ゆっくりと眺めるのが小さな夢だ。ちなみにこの電車、東は立川まで顔を出す。さらに河口湖まで走ってゆく日もあるというから、令和の世にあって、その行動範囲の広さには恐れ入る。

 山のことを記すわりに、登山の経験はほとんどない。だが、学生時代は『日本百名山』の文庫本をリュックに忍ばせ、列車に乗って旅に出ていた。深田久弥は、車窓から見た山容もその魅力として語っているのが印象的だったからだ。

 そんな気ままな旅に時間を作れた時代は過ぎ、今はこの高尾駅にすら、足を運ぶ機会はめったにない。久しぶりに訪れたこの日、留置線に停まる電車の姿を目にして、かつての旅先の風景が思い浮かんだ。30年あまり前、宇都宮線でお世話になったこの車両たちが、今やそんな憧れの彼方にある。

宇都宮線時代が懐かしい

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