見出し画像

『シャングリラ・フロンティア』とクソゲーマニア

TVerにアニメの『シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜』の最新回が出ていましたので、ふと観てしまいました。クソゲーマニアが神ゲー(「シャングリラ・フロンティア」)に挑むが、そのときクソゲーで鍛えた技が役に立つという話で、冒頭部分だけで気になり、視聴を中止し、第1回目から続けて観ました。

もとになったのは、硬梨菜(かたりな)が2017年から「なろう小説」に現在も900話以上連載している作品で、小説の単行本化はされずに、「コミカライズ→アニメ」という流れになったものです。オンラインゲームやクソゲーをやったことがある人にとって、考えさせてくれたり、憤懣を解消してくれる面もあり、設定厨らしい作者がゲーム設定の土台をしっかりと固めていて、その上で展開されるストーリーがシンプルでわかりやすいのも特徴です。

しかも、選択において、Aという能力を獲得してもBという能力は欠けるという「ギブ・アンド・テイク」が守られています。ゲームの開始時に、主人公のサンラクが、鳥頭の仮面に半裸状態という装備を選択したのにも、装備の売却といった理由づけがされているのも納得できます。また、クソゲーという言葉をそのまま使ったとおぼしい「便秘」と省略される格闘ゲーの「ベルセルク・オンライン・パッション」のバグを利用した話もなるほどと思いました。

サンラクがクソゲーマニアを極めていたからこそ、神ゲーでの戦い方を習得していたという設定は、主人公の能力を自然に見せています。そこでハンデとして、チュートリアルの街を無視してゲームを進行させ、後になって色々と学ぶ形をとったのでしょう。

ラビッツと呼ばれる「兎の国」のボスであるヴァッシュの声を大塚明夫が務めていて、なかなかの迫力です。感動したのは、ヴァッシュはじつは刀鍛冶で、歌に合わせて、サンラクのために武器を「真化」させるところでしょうか。オリジナルの刀鍛冶の歌を作ったところに制作側の余裕さえ感じられました。戦うために刀を鍛えるのは、たとえば、高畑勲の『太陽の王子 ホルスの冒険』において刀を鍛える場面と比べるとその違いについてを考えさせられます。しかもその刀を扱うためにはサンラクのレベルがまだ低いというのも、こうしたゲームにあることなのでちょっと笑いました。

そもそも推奨レベルや人数を無視してソロで戦うところにサンラクのスタイルがあり、そうしたワンマンアーミー的な変わり者が集まって徒党を組むという物語は昔からあるパターンです。そうした系譜としてもよくできていると思います。課題はリクルートパートをどのように切り抜けて、その後の展開にもっていくのかですが、どうやら期待をもてそうです。原作のなろう小説も『少年マガジン』に連載中のコミカライズも未読ですが、楽しみです。

ただし、気になることも。どうやらこのオンラインゲームでは、ゲーム内の課金(により有利になれる)という設定がないようなので、安心して戦えますが、そのあたりは現実のゲームからすると物足りない、つまり理想的な気がします。それからガチャが前面に出ていないのも興味深いところです。「幸運」はあり、サンラクはそれに振っているのですが。こうした配慮によって、小説内ゲームとしてうまく成立しているのでしょう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?