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文学研究から料理研究へ進んだ男

料理評論家は、アメリカでも日本でも個性派が多いが、なかでも異色なのが、Harold McGee(ハロルド・マギー)だろう。イェール大学で有名なハロルド・ブルームのもとでキーツに関する博論を書いてから、food scienceを扱う著書の執筆者となった。玉村豊男が、フランスに言語学を研究しに行ったが、帰ってきたら料理評論家になったようなものか。

もともと物理学の教科書で有名なファインマンのいたカルテクで天文学(と言っても理論物理学のほう)に興味をもっていたらしい。ところが卒業は副専攻だったはずのEnglishだったという。

主著には翻訳もある。『マギーキッチンサイエンス―食材から食卓まで―』として共立出版から出ている。百科事典的な使われ方をしているようだ。

コロナ禍で出した"Nose Dive"もプルーストやサルトルの言及で始まるように、なかなかである。

「匂い/臭い」をめぐるセンシティヴな議論は、同時に"taste"をめぐる議論ともなる。マギーはキーツの文学的な"taste"で博論を書いたわけだが、それが料理に変転したのもおもしろい。母親がインドで生まれて、イギリス人とインド人の血を引いているために、幼い頃からカレーに親しんでいたという。このあたりも、独特の視点をもつことができるようになった理由なのかもしれない。


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