『仮面ライダーガッチャード』第19話と井上亜樹子

なるほど、こういう手があったのか、と思わされたのが、『仮面ライダーガッチャード』の第19話「りんねの夜明け!変身・マジェード!」でした。話の展開としては、九堂りんねという裏切り者とされた錬金術師の父の教え(掟とルールの違い)に葛藤する、まじめなヒロインが、仮面ライダーマジェードとして本格的に覚醒変身する大事なエピソードです(映画で一度お披露目してその後封印という商業的理由もあったわけですが)。

ここに井上亜樹子脚本をもってきました。仮面ライダーものに脚本を書くというのは、父の井上敏樹(『アギト』や『555』が代表作でしょうが、アニメも特撮もこなせます)、さらには祖父の伊上勝(初代の『仮面ライダー』や宣弘社の忍者ものや『仮面の忍者赤影』)から続く一種のお家芸ともいえるものです。それだけに、父と娘での錬金術の継承という問題を抱えるストーリーと、脚本術の伝承という二重写しになる趣向なので、これは制作陣が狙って仕込んだものだとわかります。

ポイントは、父親の裏切りが偽の記憶だったこと、敵の三姉妹のなかでアトロポスがピンチになったときに、りんねが彼女を助けたこと。それにより、「掟」と「ルール」がぶつかり、ルールは自分で作るというりんねの確信が仮面ライダーマジェードを成立させます。これにより、高校生Wライダーという展開が生まれたわけです。後半には井上脚本が入るようなので、また別の形での仮面ライダーの物語が誕生しそうで、そのあたりが、父や祖父をどう継承し超えるかというりんねと重なってくるので興味深いところです。

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