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IPS実践研修会第5回「トライ&エラー」

9月26日からはじまった、NPO法人コミュネット楽創の就労支援委員会によるIPS実践研修会は、今回が最終回(全5回)となりました。受講者からは「あっという間だった」などの声があり、始まる前から就労支援の話が尽きませんでした。

 いつものように講義のはじめは、前回(「クライエントの可能性(キャリア、願望等))」)の振り返りからです。前回の講義を受けて感じたことを参加者と話し合う中で、講師の本多氏から、「弱い部分にストレングスはある」ことに触れ、「できない」ことばかりの中で、信じることはできるのか?について話がありました。この言葉の中にあるものは、「我々(支援者)」があきらめるのは、彼ら(クライアント)があきらめた時よりもずっと後かもしれない、彼らが顔をあげられなくても我々支援者は顔をあげ、彼らの希望を持ち続けることが大切であると受講者に向けて話されていました。

最終回のテーマは「トライ&エラー」


まず「トライ&エラー」という不思議な言葉についてのディスカッションから始まりました。「失敗してもいいから挑戦する」「失敗は経過」「挑戦は成功のためにするのか」「成功しなければ意味がないのだろうか」など様々な意見がでました。さらにトライには目的があることに話が及び、その人の目的を忘れず、目指す成果に焦点を当てることが大切だが、上手くいかないことに目がいきがちだなど、受講者の経験や日頃実践で感じていることが話され前半が終了しました。

クライエントのトライ&エラーと我々のトライ&エラーは違うのか


後半ですが、休憩に入る前に、本多氏から「クライエントのトライ&エラーと我々のトライ&エラーは違うのか」について、休憩中に考えておいて欲しいと受講者へ宿題が出されていました。そこでまず、受講者自身が挑戦していることはあるかと、本多氏から問いかけがありました。「会社をつくる」「転職」「おしゃれ」「流行りの音楽を聴く」「仕事」など出てきましたが、その経過について聞くと「エラーばっかり」とほとんどの参加者が口にしていました。でもそれは「終わりを意味していたか?」と受講者の挑戦を振り返りました。一方、クライエントのトライ&エラーがなぜ難しいか、なぜ難しくなるのかについても話し合いました。「失敗したくない」「失敗すると否定され、それが辛く、あきらめにつながる」「(挑戦を)否定される」などがあがりました。また、挑戦を否定する背景には、「経営を守るため」「職員自身がトライすることを恐れている」「エラーやトライすることを取り上げている」など、本人自身の問題ではなく、支援する側の要因も大きいとの話がでていました。
 失敗は無駄ではなく、終わりを意味していないこと、彼らがあきらめそうな時、我々はあきらめないでクライエントの希望を持ち続けることが大切であるといえるでしょう。

現場は最先端、そして・・・


そして本多氏から、現場は最先端であると話がありました。過去のことをするのがIPSではないこと。ノウハウは過去の実践でありIPSは過去の良いとこ取り。だから明日やることが最先端。クライエントは一人ひとり違い、それぞれに働くことによる充実した人生がある。その人のためにどうすればいいのか、成功に向けた挑戦をし続けことが大切であり、その一つに職場開拓がある。希望をどうとらえるか。それはノウハウではなく哲学であり、テクニックとは違うこと。常にその次の実践を考えることが大切。だから我々もトライし挑戦者でなければならない、と伝えられました。
最後にIPSの実践で重要なこととして、本多氏から3つ話がありました。まず一つは、当事者自身のこうありたいと思う希望を中心に据え、支援体制、支援方法を計画するパーソンセンターであること。次に、その人の未来を、うまくいくことを信じ、つねに励まし続ける(過去や現在は参考程度にしかならない)こと、そして「成功」の反対は「失敗」ではない。成功への道は「ふみだす」こと。失敗は成功への道の途中であることが語られ、講義は終わりました。 

約2ヶ月に及んだIPS実践研修会。最後までやり遂げた受講者からは「受講してよかった」「実践に応用できた」「どうやってIPSを伝え、仲間を増やしていくか」など感想がありました。その話す姿、言葉の中に、希望や熱意を感じました。

未来に向けて


就労移行支援事業所は全国に約3000カ所ありますが、IPSを実践しているのは20カ所ほど(0.6%)しかありません。働きたい気持ちはあるが一歩をふみだせずにいる方、様々な理由からあきらめている方がたくさんいると思います。だからこそ「どんな病気や障がいを抱えていても働きたい思いがあれば誰でも働ける」ことを伝えていき、その人の希望を応援し、信じる支援が必要なのだと思います。その支援が少しずつ増えていったとき、その地域はどうなっていくでしょうか。地域だけでなく、その国や世界が・・・。そう考えるだけでも、ワクワクしてくるのは運営者として関わる私だけではなく、今回受講されたみなさんもきっと同じだと思います。この先にある、本当の意味でのノーマライゼーション、インクルーシブな社会に向け、我々も希望に向かって挑戦していきたいと思います。

講師の本多さん、受講されたみなさん、運営された就労支援委員会のみなさん、大変お疲れ様でした。
 

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