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IPS実践研修会 第3回「コンポステラの場合」

9月26日からはじまった、NPO法人コミュネット楽創の就労支援委員会によるIPS実践研修会は、今回で第3回(全5回)となりました。3回目ともなると参加者も講義が始まる前から和やかな雰囲気で、共に学ぶ仲間のような一体感も感じられました。今回は4名の方が参加されています。

 いつものように講義のはじめは、前回(「どうしたら就活に踏み出せるか(支援者も含む)」)の振り返りからです。支援するひとり一人の顔を思い浮かべ、その人が最高に輝けることを考えることや、講義を受けて、これから挑戦したいと思っていること等、受講者からも話されていました。

 今回はこれまでの形式とは異なり、講師の本多氏を中心に講義を進めていくのではなく、コンポステラの元利用者と元スタッフが対談形式でコンポステラについて語っていくスタイルです。
 対談の前には、本多氏から参加者に配られたコンポステラのパンフレットに込められた哲学の話しや、法人の中でIPSがどのような経過で本格実践に至ったかの説明がありました。パンフレットの最初のページには「Zero Exclusion(誰も排除しない)」があること、法人の中ですぐにIPSが実践できたわけではないことが語られました。

 その後、元利用者と元スタッフの対談が行われました。元利用者からは、利用当初は除外基準がない話を聞き、「他の所では逆に除外があるのか?」と思ったこと、就労経験があり、福祉サービスを利用したことがなかったため、就職後のトレーニングは当たり前と感じたこと、「職場開拓は本当にできるのか?」と懐疑的に思っていたことなどが話されました。また、元スタッフからは、2018年からの本格実施に直面し、それまで当たり前と思っていたプログラム・作業が急になくなることに衝撃を受けた話などがあり、最初のころの職場開拓は緊張したなど、当時の様子を思い浮かべながら話されていました。

 休憩を挟んだあと、受講者を交えてのディスカッションに入りました。対談の話を受け、受講者からは元利用者へ現職に至るまでの質問がありました。現職までには、様々な職歴があることや職探しの時に、以前の就労経験からの選択と本当はしたいと思っていた仕事が混在して、何を選択したらいいか分からなくなっていた話がありました。当時の状況を知る本多氏からは、その方のストレングスは面白いことに集中することと思い、ユニークな求人を紹介し、楽しさがやりがいにつながると考えていたことなどが話されています。
 また、能力はあるが自信がない人に対するアプローチについてもディスカッションされていました。元スタッフからは、過去の経験から一緒にいる時間多く持つことを大切にし、キャッチボールや求人散策をした例をあげ、わずかなきっかけから動き出したことが紹介されました。本多氏からも、総じて自信をもっている人は少なく、動機も自分に向けられたものなのか、目の前に現れる人のためにと向けられるものかで変わっていくことと、支援を受ける人の顔を思い浮かべ、その人が最も輝けることを考えていくことが大切ではないかと投げかけがありました。
 最後に、働くために重要なことは希望であると本多氏より話がありました。そして、そのために支援者は、どんなことがしたいか、やりがい・楽しかったことは何かについて一緒に考えていく中で、その人自身が主導権をもっており、あなたが決めていいこと伝えていく必要性が伝えられました。
 元利用者の方がご自身の経験をおもしろく語ってくれたおかげで、笑いも多く楽しい雰囲気で進められました。IPSによる支援を体験された方の話を交えることで、ディスカッションでは受講生の方が支援対象となる方を思い浮かべながら質問されているような場面も見受けられました。講師、受講者の双方で熱が入り、今回は予定時間を越えての講義になっていました。

 IPSを実践するひとりの支援者の立場をもちながら運営者として今回の研修会に関わりましたが、あらためてIPSの実践の根源は本人の希望であると感じました。その希望は身近な専門家である我々によって、あきらめにつながるようなことになっていないかと常に自問自答する必要があると思います。その人のために考えた良かれの思いが、逆にその人の希望や挑戦の機会を奪うことのないように、何度でもこの哲学に立ち返ることが大切だと感じました。このような積み重ねが、社会を世界を変えていくのだと思います。

 次回(11/7)IPS実践研修会は「クライエントの可能性(キャリア、願望等)」です。

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