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ChatGPTはなぜ仕事現場で使えないのか?
このご時世に、このようなトピックを投稿するのは少々、時代錯誤感もありますが、業務において生成AI活用の普及を進める中で個人的に感じている課題が実はこのタイトルです。
巷にあふれるChatGPT活用書籍、noteも活用方法の投稿で一杯(私もその投稿者の一人笑)、また日々新しいモデルや技術が公開され、未だにお祭り騒ぎです。
しかし、”実態”はお祭りムードからすると、10分の1以下の活用度合いであると思います。いくつか(私のような推進者にとって)”不都合な”調査結果がありますし、私自身、周りの人を見ていてその程度だろうなという実感があります。
一度頭を冷静に落ち着かせて、思いっきりネガキャンした後で、「じゃあどうすれば使えるようになるの?」を考えていきたいと思います。
※「ChatGPT」を標的にしますが、GPTベース(もしくは他のLLMベース)の各種サービスも含まれます。
各社の利用率アンケート
「chatgpt 利用率」でGoogle検索をかけると、色々な調査結果が出てきます。調査方法の明確さや、対象の広さ、時期感からいくつか選定してみました。
■野村総合研究所の調査:2023/6時点で利用率15.4%
1年弱前と、調査としては古いのですが、4月時点の調査と比較した分析がなされており、当時は継続的に10数%で推移していたことが分かります。
「1回使ったことがある」レベルでも利用率にカウントされているようですが、推移しているなら継続性もあるかと思います。
また、「情報通信業の利用率が最も高く、飲食店・宿泊業は低い」というように業種別の示唆まで出されています。
■Web担当者Forumの調査:2023年11月時点で社会人利用率15.6%
こちらはより最近のデータです。
ただし、「利用したことがある」が15.6%な点には注意です。
■ダイヤモンド・オンライン記事:導入企業での社員利用率1割程度
こちらはアンケート調査ではなく、記事著者による現場でのヒアリングです。母数は不明ですが、社内用のChatGPT導入企業、というターゲットは「最低限のセキュリティの問題をクリアしている」わけですから、情報流出の懸念が低いにも関わらず使われていない、という実態をよく示していると感じます。
それでは定量データを見たところで、定性的なネガキャンに入ります。
ダイヤモンド記事のコメントで触れたように、情報漏洩や著作権などの法律違反の懸念は除外した「使い勝手」ベースで書きます。
なお、ここから挙げる理由は私が業務の中で実際に聞いたり、言われたり、感じたりしたことです。
使えない理由①そもそも適していない
先程のNRIの調査では情報通信業の利用率が32.8%で、最も低い飲食店・宿泊業は1.4%です。そして次に低いのは運輸の9.5%。
![](https://assets.st-note.com/img/1713964389935-dO58UeMhNM.png?width=800)
想像してみると、接客・レジ打ち、品出し、倉庫整理、トラック運転…そりゃChagGPTは使えないです。
ただ、ここに関しては、相性が悪いだけかなと思います。
もちろん、こういった業界でもマネジメント・企画職は使えるチャンスが多くあると思いますが、物理的な作業や人的コミュニケーションなどを自動化するのはChatGPTというより、作業ロボット・アバターなどの領域だと思います。
企画職であっても、対面コミュニケーション、会議室のセッティング、備品の整理などはしばらく「奪ってもらえない仕事」として残るでしょう。
使えない理由②アウトプットがイマイチ
「一度使ったことあるけど使わなくなった」人の理由のほとんどがこれじゃないでしょうか?
というか、日々使っている人でも「イマイチだな…」と感じる瞬間って多いと思います(そっと、手を挙げてください)。
特に業務だと社内情報の活用がほぼ必須で、RAGの技術開発が盛んですが、正直まだまだ「現場の勘と経験と度胸」の方が上だと思います。
このあたりはGithub copilotのようなサービスをフル活用されているエンジニアの方だと異論がありそうですが、「コーディングしない一般人」にとっては、おもちゃレベルにしかならないことが多いです。
プロンプトの工夫で精度が上がると言われても、「プロンプトの勉強する暇あったら、自分でメール書くよ!」って感じです。
※ちょっと番外編ですが、ネットワーク環境などによって「レスポンスが遅い」ことがあるのもイマイチな理由ですよね。
![](https://assets.st-note.com/img/1713963536384-m3CmaKKWeK.jpg?width=800)
使えない理由③指示が面倒くさい
では、プロンプト勉強の壁を乗り越えたとして、次に待っているのは「毎回プロンプト書くの面倒くさい」です。
こちらはAIsmileyの「ビジネス活用10選」です。
社内啓蒙の際に大変お世話になっているのに恩知らずなことを申しますが、「毎回こんなプロンプト書いてられない」ですよね。
本当にこれ毎回書いている人いるんでしょうか?
テンプレートをメモ帳に保存して、ケースに応じて調整しながら使い分けている人っているんでしょうか?
もし一人いたとして、それを社内や顧客に浸透させられるんでしょうか?
(できている人がいたら、自分の能力の無さをお詫びします)
ブルーカラーにせよ、ホワイトカラーにせよ、現場は常に目の前の生産性を追いかけ続けます。
改善活動などで社内のプロンプト事例集を作ることはよくあるでしょうが、大体は「どのプロンプトを使うかを考える」より手を動かした方が早いです。
使えない理由④チャット形式に限界がある
最後にもう一つ、「チャットではできないこと」が多すぎて、そもそも使わないのです。
私も活用事例集を自分で作っているのでわかるのですが、こういう活用事例集って、「多くある業務の中から、何とか使えそうなものをひねり出す」ことによって作られます。
逆に言えば、使う人は忙しい仕事中に、「ChatGPTに任せる業務をわざわざ切り取って渡してあげないといけない」のです。
先程の記事からいくつか例を出してみましょう。
依頼メールの作成…メールは送ってくれないの?
業務マニュアルの作成…ワードやパワポは作ってくれないの?
文章の要約…自分で議事録取って要約して関係者に送ってくれないの?
「ああ…それしてくれないなら、最初から全部自分でやるよ/部下にやってもらうよ」ってなりませんか?
解決方法
さて、それでは再度落ち着いて、「じゃあどうしたらいいのか?」を考えていきたいと思います。
今更ですが、私は「AIが人間のすべての仕事を代替する」と思っている狂信者です。むしろ「早く全部代替してほしい」と思っています。
だから課題感が強いのかもしれません。
先に挙げた使えない理由①~④のうち、①は生成AI以外の技術にも期待するとして②~④の対策を考えてみます。
②アウトプットがイマイチ→プロンプトの工夫、RAG
③指示が面倒くさい→特定業務のツール化
④チャット形式に限界がある→業務フロー見直し及び生成AIを組み込んだシステム化
こういうのを一言で言えば「DX」だと思いますが、不信感の強い言葉だと思うので、できるだけ平易に語ってみたいと思います。
難易度が④>③>②もしくは④>②>③だと思うので、④について。
「業務フロー見直し及び生成AIを組み込んだシステム化」とは、例えば「文章の要約」(議事録の要約)で考えてみると以下のようなイメージです。
社内会議のリモート化
リモート会議の音声レコーディングの必須化
録画が自動的に文字起こしされるプログラムの構築
社内要件に沿った要約プログラムの構築
カレンダー連携し、自動展開するプログラムの構築
知っている人はわかると思いますが、こういうツールって既にあります(精度は低いがZOOMとか)。
そして、議事録とか、メール作成とか汎用的なものは大手プラットフォーマー(主にGoogle、Microsoft、Apple)によってどんどん機能追加・精度改善されていくと思います。
なので、活用推進者の仕事は「その会社・部門に固有の業務を生成AIによって自動化する」ことです。
その結果、「そもそもやらない」判断もあると思います。
やらなくていい仕事は、AIにもやらせない方が環境に優しいです。
そしてやる必要がある業務は、上記の「勘と経験と度胸」で塗れていると思うので、まず大切なのはそれらの言語化です。
そして言語化したものを仕様としてまとめ、情報システム部門やシステム外注に依頼していくことです。
自身に技術があるなら、もしくは勉強しながらChatGPTコーディングをする時間と気概があるなら、内製化しても良いと思います。
世の中に沢山あるノーコード・ローコードツールも使えると思います。
このような業務と、システムプロジェクトマネジメントによって、ようやく"ChatGPT"が現場で使えるものになっていくと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1713963884873-DekwmKjLM5.jpg?width=800)
まとめ
こうしてみると、NRIの調査で「情報通信業の利用率が一番高い」(それもダントツ)であることがよく分かると思います。
自分たちで業務を変えて、開発することができるからです。
しかし、それだけではいつまで経っても社会実装は難しいです。開発者の方々には(情報通信業以外の)業務理解を深めてAI活用の支援をすることが求められますが、開発者以外の人たちには今の何倍もAI・ITを理解し活用する努力をすることが求められます。
今のお祭り騒ぎをお祭りのままにせずに、自分たちの、現場の仕事を良くする方向に活用できるのは、現場自身ではないかと思います。
※ご参考までに、近しいタイトルで、よりスマートに、より本質的な指摘をされているnote投稿があったのでご紹介させていただきます。
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