1/25 御神酒徳利

よう…………っやく聴き終わった。
3日くらいかかったし、初天神よりよっぽど長い。

ということで今日はその「御神酒徳利」を書き起こしながら寝ます。「初天神」と同じく柳家小三治師匠です。


八百屋さんがいつものように大店に野菜を売りに行きます。「どうだい、今日は!」しかし最近入った女中は一切取り合ってくれず、ここしばらく野菜を買ってくれません。腹を立てた八百屋はほんのいたずら心で、女中が洗って干しておいた御神酒徳利を水瓶の中にこっそり隠しました。ブクブクブクブク……。店を出て中の様子を窺っていると、案の定女中が旦那に怒られています。それを見た八百屋ははたと思い付いて、再び店に入りました。
「よぉ八百屋、今日は何を売ってくれるんだい?」「あんたんとこはしばらく売ってませんよ、この女中が買ってくれないからね!……そんなことより何かあったんですかい?」「いやこの女中がね、大事な御神酒徳利をなくしちまったんですよ」
それを聞いた八百屋は「実は私、八百屋をやる前は易者をやっておりましてね、特に紛失物(ふんじつもの)にはめっぽう強くて」と言い、「なんだか土と水と木に関係するところにありそうですね~その水瓶とか、土でできてるし中に水が入ってるし木の蓋がついてる」そう言われて旦那と女中が覗いてみると、たしかにそこに御神酒徳利がある。これはすごい、と感嘆した旦那は、八百屋に「実はね、うちの弟が預かり物を失くしたってんで文を寄越してきたんですよ。なので三島まで一緒に探しに行ってくれませんか」
さすがの八百屋も二度目はないので嫌がりましたが、嫁にも背中を押され、渋々三島まで行くことにしました。
その道中の小田原の宿で休んでいると、夜に宿の主人がやってきて、「夜分遅くにすみません。実はうちの金庫から50両が盗まれまして。うちの者に聞いてもみんな知らないと言うので、こうやってお客様の荷物を見させてもらうことにしたんです」と言いました。それを聞いた旦那は「おや紛失物ですか。それなら今横で寝てるこの御方が紛失物に関しては江戸で一番の腕前の易者だから、占ってもらいましょう。そうすれば他のお客を起こす必要もなくなる」そう言って八百屋を起こしました。顛末を聞いた八百屋がしどろもどろになりながら、「やってもいいけどね、やるなら静かなところじゃないと駄目だよ」と言うと、「うちの離れの2階をお使いください」と宿の主人は言う。「そこって……窓ある?窓の外どんな感じ?ふむ、降りたら垣根でそのあとは田んぼと畑……そこから街道出られる?」と逃げ道を探る八百屋。「ふむふむ、そしたらあと占いの神様のお供え物として、わらじと提灯とおにぎりを用意して。何日か分ね!あと縄ばしごも……」と旅支度と2階から降りる道具も用意させました。
そしていざ占い本番。すぐに逃げるとバレると思い、ある程度時間を置いてさぁ窓からはしごを投げて降りようかとしたその時。なんと下から誰か登ってくるじゃありませんか。
慌てて旅支度をほどいた八百屋が「そこにいるのは誰だ」と聞くと、「ここの女中のお梅です……。私が50両を盗みました」となんと犯人の方から現れたのです。命拾いをした八百屋。聞くと、母親の治療費と帰省費用として必要だったとのこと。また50両は敷地内のお稲荷さんの縁の下に置いてあるとのこと。
それを聞いた八百屋は「わかった、全て良いようにしてやるから、ここに来たことは言ってはいけないよ!」と釘を刺してお梅を帰しました。
そして八百屋はパンパン!と手を叩き宿の主人や旦那たちを集めました。
「紛失物の在りかがわかりました。これはお稲荷さんの怒りです。女中のお梅ってのがいるだろ、その子の母親が病気で帰りたいって言ってるのに金を出してやらなかったことに腹を立てている。あとここ3年間お稲荷さんを祭る祭をやってないらしいな。これにも怒っている。お梅に優しくして、祭も再開すれば金を返すとのことだ。」
それを聞いた宿の主人はすっかり信じてしまい、「わかりました、言うことを聞くので金を返してください!」と言い、八百屋に在りかを教えてもらいました。
翌朝。この話が宿やその周り中で話題になり、たくさんの人たちが紛失物を見つけてほしくて八百屋の部屋の前に並びました。この行列を見た旦那は嬉々として「おい、占いの先生!起きてみんなの紛失物を占ってやりなよ!」と隣の部屋で寝ている八百屋を起こそうとしました。宿の主人もやってきて、八百屋の部屋のふすまを開けると……。「旦那!先生の部屋がもぬけの殻です!」それを聞いた旦那は「なんだと?てことは今度は先生が紛失物ってことだな」


お後がよろしいようで。
長いもんだから端折りながら書きましたがそれでも長い。どうせ長いなら弟がいる三島まで行ってみてほしかったな。

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