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支援センターより「ソーシャルワーカー論」

 同志社大学の空閑浩人(クガ ヒロト)先生の編著「ソーシャルワーカー論」という本があります。支援センターらくなんには空閑先生を恩師とする、相談員がおり、その相談員に勧められ、本書を購入し読んでみました。とても素敵な学 びとなったので、私が気になった点をご紹介させて頂きます。

 この本では、大きく3部の構成となっています。
 ①ケースメソッドの活用および実習教育を中心とした大学におけるソーシャルワーク教育に関する考察。
 ②ソーシャルワーカーへの現任研修の意義や役割の再考および、ケ ースメソッドを活用した現役ソーシャルワーカーへの支援の取り組みの実践と考察。
 ③ソーシャルワーカーに求められる専門性や実践力および実践の中でソーシャルワーカーが直面する葛藤やジレンマとその解決の手立て関する考察。

 難しい表題となっていますが、この中の「ケースメソッド」って知っていますでしょうか。
 本書の中では「ケース討議によって、洞察力や意思決定力などの統合力を育成しようと開発された事例教育法の一つである。ハーバード大学法律大学院の中で用いられた授業方法が、経営大学院で応用され、1900 年初頭に開発された教育法である」と説明があります。
 いわゆる講義形式ではなく討論授業。私達の身近なところであればグループワーク、グループディスカッ ションがそれに当たります。そのケースメソッドを活用した研修を同志社大学では 2010 年度から卒業生を対象に「定例カンファレンス」という形で実施してきました。

 ・ソーシャルワーカーという仕事と、自分自身の位置関係をマッピングできるよう「私と仕事」をテーマ にケース作成を共通課題とした。
 ・討議では、①なぜ自分は援助の仕事を選んだのか、②その仕事を今も続ける理由は何か、③その仕事を 続けてくるなかでどんなセルフケアをしてきたか、④自分はどんな援助者を目指していけるか、に触れる。

 本書では討議の方法(狙いや設問、想定される参加者の討議内容等)や実際のケース、参加者のコメント が紹介されているのですが、この方法がとても素敵だなと感じています。  
 素敵だな!と感じたポイントは…
 ・援助者の立場に立った視点での討議でケース検討ではない事。「私は」という視点。
 ・自分自身の考え方や価値観と向き合う事。思考や感情を言語化し、共有できる事。
 ・「自分がその立場だったら何を感じ、何を考え、どのように行動するのか。」という視点は、能動的に 「他者」の視点に立つ事につながる事。
 ・「他者」の視点を持つことで、他者を通じ、客観的・俯瞰的に自分を見つめる事につながる事。自分の現在の位置を確認する事につながる事。
 普段の業務で「私」を語る事は中々少ないのではないかな、と感じています。日々やるべき事に追われ、 「私」と「仕事」の関係性や位置、またその中での価値を見失う。私自身「辞めたいな」と考えた時期もありました。そういった事を考える人も多いのではないかなと考える時、ケースメソッドを活用した研修は、 自分を見直す事につながり、ひいてはやりがいや専門性への視点につながっていくのではないか、と本書を 読みながら漠然と考えてみました。

 本書では、上記以外にもソーシャルワーカーに求められる内容が盛りだくさん書かれてあります。
 最終章では、「利用者との関係から『降りず』に『かかわり続ける』ことを支える言葉や思考が必要」で、「ソーシャルワークの様々な方法や技術を個々の実践場面に応じて柔軟に駆使できるための、いわば『姿勢』 や『構え』となるような『知』」、それは「思考や行動などを言葉にする事、あるいはそれを表現する言葉 を生み出し、使いこなす作業を重ねる必要がある」という所が印象的であったりします。
 その他、第 7 章「ソーシャルワーカーとジレンマ」、第 8 章「ジレンマとの共存」は個人的に必読箇所 だ!と思っていますので、興味がある方はご一読ください。

 そもそも「ソーシャルワーカーである」という事を認識することは日々の業務の中では少ないことですが、 この仕事の価値を「私」という視点で見つめ直す事が再発見につながる。すなわち、専門職として、ソーシ ャルワーカーとしてのやりがいにつながっていくのではと考えています。
 このような視点の研修会をしたいなとも考えていますので、ご興味持たれた方は、一緒にやりませんか?


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