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RNIB(イギリス王立盲人協会)に行ってきた その4

社会福祉士であり視覚障害リハビリテーションワーカーでもある筆者がイギリスの視覚障害者支援について2018年に視察研修したことを書いています。4回目も前回に引き続きRNIBロンドン本部、今回はリソースセンター(Resource Centre)を紹介します。なお"Centre"と綴っているのは間違いではなく、イギリス英語ではアメリカ英語の"Center"を"Centre"と綴ります。

リソースセンターとは「資料館、資料センター、情報センター、特定の分野に関する情報を収集・提供している組織」のことで、RNIBのリソースセンターでは視覚障害に関する商品の展示・販売や情報提供をしています。どんな商品がイギリスで使われているのか、わくわくします。

ヘッダー画像はリソースセンターの入口でRNIBの1F右奥にあります。スタッフのモハメドさんが案内してくれました。

展示されている用具

左上の方から点字タイプライター、ハイコントラストの配色でボタンも操作しやすいオーディオ機器、DAISY(※視覚障害などで活字を読むことが困難な人のために製作されるデジタル図書の国際標準規格)CDを再生するプレイヤー、大活字のクロスワードパズル本、右手前にちらっと見えているルービックキューブなどなど。盲人用時計も展示しており、自治体によって違うそうですが多くの視覚障害者は用具を自費購入するようです。

日本の(一部の)みなさんにはおなじみ?のシナノケンシ製のプレクストークPTN2も展示されていました。モハメドさんに「わー!これ日本の製品です」と言ったら「ベルギー製だと思ってた」と。がんばってシナノケンシ!

白杖ラインナップ

販売されていた白杖です。展示の仕方がイギリスっぽい(笑)
イギリスでは白杖ではなく長杖(long cane)と呼びます。カナダのAmbutech製の長杖がほとんどで、チップ(石突)はローラーチップが人気です。

以前日本でロービジョンのイギリス人留学生がローラーチップよりももっと大きいボールチップ付きの白杖を使っているのを見たことがあります。その人に日本ではボールチップを使う人をほとんど見かけないことを伝えると、「イギリスは歩道がでこぼこしているからコロコロ転がるチップの方が引っ掛かりにくくていいんですよ」と教えてくれました。なるほど。ヨーロッパでよくある一見素敵な石畳の歩道も白杖使用者には歩きにくいかもしれませんね。

写真の中に棒の部分(シャフト)全体の色が赤や黒の長杖があるのが分かりますか?これも視覚障害者用の杖です。このような用具があるということは今回初めて知りました。色付きの長杖については、Sight Village South-Eastという展示会の紹介の際に改めて説明します。

盲ろう者用白杖2

この写真の長杖のように白色と赤色が交互になっていると盲ろう者であることを表すそうです。ただし法律で決められたことではないようですが。赤色のテープが貼られている部分が多いほうが周囲に注目されやすいのは確かですね。日本でもこのアイデアは使えそうです。

イギリスでの視覚障害者用の杖の種類と使い分けについてはRNIBのサイトのThe Cane Explained(PDF)に分かりやすくまとめられています。
そのPDFから少しご紹介します。
1 シンボルケーン
  目は見えにくいけれど見ながら歩けることを周囲に示す
2 ガイドケーン
  身体の前で対角線状にして構えながら歩き、前方の障害物を発見する
3 ロングケーン
  かなり見えにくい人や全盲の人が障害物を避けて歩くために使う
4 赤と白のしま模様の杖
  聴力と視力が低下していることを周囲に示す

ちなみに、日本では補装具として給付される白杖もイギリスでは自費購入になるのだとか。ただでさえ白杖を持ちたくない人は多いのに、全額自己負担となるとちょっとハードルが上がる気がしますね。モハメドさん曰く「CVI登録していると交通費の補助は出たりするけど、税金が高いわりに用具はくれない」と。ただ、ロンドン市民の視覚障害者で就労していない人は交通機関の利用は無料だそうです。

リソースセンターではもう一人のスタッフ、ロービジョンのスージーさんにも話を聞きました。スージーさんにはご自身が持っている目の見えにくさを補うための用具について質問したところ・・・

 ・病院でもらったルーペ
 ・iPhone
 ・音声体重計
 ・友人がくれたトーキングラジオ
 ・スマートスピーカー(アレクサがしゃべるやつ)
 ・コンピューターソフト
 ・音声時計
 ・中古のトーキングスキャナー

と、さすがRNIBのスタッフだけあっていろいろ活用されています。

スージーさんが好きなことはコメディやコンサート、劇を見に行くことや友人と食事に行くこと。余談ですが、各種エンターテイメントも充実したロンドンでは Society of London Theatre というNPOが主に観劇の際のアクセシビリティ情報をAccess London TheatreというWebサイトや冊子で提供しており、様々な人がエンターテイメントを一緒に楽しめるよう配慮されています。

外出が大好きなスージーさん。
街中にある点字ブロックについてイギリスの人はみんな知っているの?と尋ねると「地域にもよるけど、一般的にロンドン市内で点字ブロックの認知度は低いです」と。

日本発祥の点字ブロック、日本国内は至る所に敷設されていますが、その点字ブロックが導いた先での配慮はどうなんだろう・・・と、スージーさんのことを思い出しながらふと考えてしまいました。



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