先入観と雑談力と多様性
先入観は、相手に対して「きっとこの人は、こうに違いない」と決めつけて、相手への態度を決めることだと私は思います。そしてそれは、時に相手を傷つけたり、傷つけられたりするのです。
派遣先での出来事
以前の派遣先での出来事です。その会社では、私を含め数人の派遣社員が働いていました。
ある時、部署のリーダーがみんなをランチに誘ってくれたのです。
リーダーは、他の女性社員や派遣スタッフとなごやかに話す中、まだ入って間もない一人の中年の派遣社員(既婚)に声をかけました。
リーダー「◯◯さんのお子さんは何歳ですか?」
派遣社員「すみません…うち、子どもはいないんです…」
その後、ランチのカフェは一瞬、水を打ったように静まり返りました。
そして、みんなで発言をうやむやにしつつ、雑談をはじめたのでした…。
雑談力と先入観
そのリーダーは仕事もできるし、コミュ力もあり、みんなから慕われていました。ただ一つだけ、彼女に欠けていたのは「いろいろな立場の人がいる」という気遣いだったのです。
彼女は自分も子育て中ということもあり、「30~40代の既婚女性なら、子供がいるに違いない」という先入観に囚われ、こともあろうに最初の質問で「子供は何歳?」と声をかけてしまったのです。
私も「いや、さすがに開口一番でその質問はないだろ…」と、サラダを突きながら思ったものです。
彼女は自分が非難されたかのように頭を下げ、食事中ずっと黙っていました。
リーダーも決して思いやりのない人ではないのですが、ご自身が子育て真っ最中ということもあり、いつもママ友とするような雑談を、会社でも通用すると思ってしまったのでしょう。
社内にも子育て中の社員が多かったですし。
先入観と多様性
結婚も子育ても、人それぞれの立場や事情があります。家庭の話は雑談としてとても良いツールですが、それが通用しない場合あることを忘れてしまうと、こういうことになるのですね。
中年で新婚の人もいれば、シングルマザーの人もいるし、同性婚の人もいます。家族と仲が悪い人もいる、
あの事件に遭遇してから、私は極力、相手に家庭の話は振らないし、もし話しかけるとしても「相手は自分と同じ立場ではない」という思いで質問をするようにしています。